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  • レンタル人間

    2015/12/06

    ひどい話

    ヒューマンレンタル協会、HRAなる組織があり 

    ここに入会することができた。

    今時、色々なレンタルサービスがあり 

    人間の貸し借りだってできる。


    労働力だけでなく 

    仮にせよ恋人や友人や家族でさえ借りられるのだ。

    HRAにおける入会審査はきびしい。

    現会員からの推薦、書類審査、筆記試験、身体検査、身辺調査、

    面接、さらに幹部による協議を経て、ようやく入会が許される。

    借りるだけ、貸すだけの条件を有する会員もいるにはいるが 

    それは例外。


    一般会員であれば相互レンタル交渉は自由に行える。

    口約束にせよ、なされた契約は協会の権力機構を持って厳守させる。
    それゆえ、ある程度のプライバシー侵害は甘受せねばならない。

    なんにせよ、広い意味での人間的魅力が一番の入会条件だ。
    HRA会員であることがそのままステータスとなる所以ゆえんでもある。


    さて、それはともかく、今夜の妻は誰にしようか。
    かわいい娘も欲しいところだ。

     

     

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  • 余計な家具

    2015/12/05

    変な話

    独り暮らしなのだが 
    目が覚めると余計な家具が増えている。

    家の中のどこかに 
    勝手に家具が増えるのである。

    ひどい時など、ちゃんと起きているのに 
    振り向いたら、そこに見知らぬソファーが置いてあった。

    困って警察に連絡したところ 
    「盗難でなければ対応できませんね」

    まあ、そうかもしれない。
    しかし、これは犯罪に近いのだ。

    大型家具を処分する場合、粗大ゴミ扱いとなるので 
    貼って出す処理券を近所のコンビニで買わねばならない。

    出す日を決めるため、電話をする必要もある。
    外に出すのも重くて大変だし、まったく面倒臭い。

    そして今朝、とうとう余計な人まで増えてしまった。

    「あんた、誰?」
    「あんたこそ、誰?」

    まるでお話にならない。

     

     

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  • カタツムリに乗って

    2015/12/04

    楽しい詩

    カタツムリに乗って隣町まで行こう。
    なんなら高圧電線を伝ってもいい。

    印象に残らないかもしれないけれど 
    急いだ方が君のためだと思うな。

    忘れないようにメモしようとして 
    すでにメモすべき事柄を忘れている。

    そんな残念な事態にならないように、ね。

    演歌歌手でもトレジャーハンターでも 
    この際、乗り手は誰だってかまわない。

    職業が夢の最終形態ではなかったはず。

    町境まちざかいの壁には貼り紙があって 
    「捨てられた女の子を拾ってはいけません」

    それは余計なお世話というものだ。

    背負った家の渦は右巻きか? 
    それとも左巻きか? 

    なんとなく尋ねられても困る。
    それは隣町に着けばわかるはずなのだ。

    川を越え、鉄柵を越え、線路を越えて 
    カタツムリの群が隣町をめざす、めざす。

     

     

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  • 仮面の部族

    2015/12/03

    変な詩

    仮面の部族は楽しいな

      歌う時
       踊る時
        戦う時も

      いつも仮面をかぶってる

        色とりどりの
         不思議な仮面

       伝統の模様 

     手作りの
      仮の顔に 
       仮の表情 

     凛々しい
      成人式の仮面 

     幸せそうな
      結婚式の仮面 

     涙にくれる
      葬式の仮面 

        ほらね

          仮面と仮面
         触れ合えば

       おかしな音も聞こえます 

     みんな
      素顔がわからない 

     みんな
      素顔を恐れてる

        なぜならば

      仮面が割れたら 
     死なねばならぬが 

       仮面の部族の掟なり

     

     

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  • とりあえず怖い話

    2015/12/02

    怖い話

    寝ながら 
    とても怖い話を思いついた。

    ただし 
    その話を語ったり書いたりすると 

    まるで怖くなくなってしまう 
    らしいのだ。

    「なんだそれは?」

    不審に思いながらも 
    起きようとすると 

    頭がぼんやりしてきて
    話の中身が消えそうになる。

    「これはいけない」
    と 

    あわてて寝直して 
    なんとか思い出すのだが 

    なんとなく
    どこか違うような気もしてくる。

    「どうやら、このままでもいけないようだ」

    ここはとりあえず 
    思い出せるところまで思い出して 

    とりあえず 
    書き留めておくしかあるまい。

    そう考えて 
    とりあえず起きて 

    とりあえず書いたのが 
    この話。

    やはり 
    怖くもなんともない。

     

     

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  • お菓子の日

    近所の大型スーパーへ行く。

    毎月第2第4土曜日は、お菓子の日。
    お菓子全品1割引きセールの日なのだ。

    糖尿病を心配して糖質は控えているものの 
    どうしてもチョコレートだけはやめられない。

    それで、お菓子売り場へ直行する。
    ブラックチョコ、2週間分まとめ買いである。

    ところがそこで、お菓子に出会った。

    透明袋に人形が入っているだけなのに
    棚のプレートの商品名が「お菓子」なのだ。

    そんなに高くない。
    板チョコ5枚ほどの値段だ。

    商品説明も成分表示も何もない。
    しかし、バーコードのシールが貼ってある。

    おそらく首がキャップにでもなっていて 
    中にスナック菓子でも入っているのだろう。

    人形としてなかなか魅力的だったので 
    思い切って買うことにした。

    チョコその他と一緒にカゴに入れ 
    不安ながらレジに並ぶ。

    レジのおばちゃんも「お菓子」を見て変な顔をした。
     
    しかしながら、ちゃんとバーコードを読み込めたので
    忙しいこともあり、彼女なりに納得したようだ。

    レシートの品目も「お菓子」であった。

    帰宅してすぐ、開封して詳しく調べてみる。
    首にもどこにもキャップらしき接続部分がない。

    あるいは、まったく人形の菓子なのか。

    試しに指を濡らして帽子のあたりをこすって 
    思い切って舐めてみた。

    とっても甘かった。


    一度床に落として割れてしまったけど 
    なんとか接着させ、今でも部屋に飾ってある。

     

     

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  • 回覧板

    2015/11/30

    論 説

    外国には回覧板のようなものはなく、日本だけのようだ。
    そもそも町内会みたいな自治会もないらしい。

    調べてみると、どちらも日中戦争の頃から始まった、とある。
    上意下達じょういかたつの有効な手段なのだろう。

    しかし、はっきり言って、回覧するまでもない内容が多い。
    まるで、回覧板があるから回覧物があるみたいに。

    マンション自主管理組合の理事長をさせられているので 
    自動的に町会の班長もさせられている。

    それで町会から定期的に回覧物が届けられ 
    それをいくつかの回覧板に振り分けることになる。

    各棟の掲示板に貼って済ますこともあるが 
    問題になりそうもない連絡事項なら、あえてまわさない。

    それが問題にならないとも限らないが、そもそも 
    どうでもよさそうな情報をまわすことが、すでに問題なのだ。

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  • 夢カメラ

    2015/11/29

    愉快な話

    夢カメラ 
    というのがあって 

    そのカメラを持って 
    夢の中でシャッターを押すと 

    ちゃんと夢の中の場面を 
    画像として録画することができて 

    なかなか夢があって 
    素敵なんだけど 

    さて 

    夢の中で人物を 
    いざ撮ろうとすると 

    たとえ夢の中だとしても 
    本人にカメラを向けるのは

    ちょっと失礼 
    というか 

    勇気が出なくて 
    ためらわれてしまうんだけど 

    ほれ 
    それはそれ 

    なにせ夢だから 

    そこは百貨店の 
    婦人服売り場みたいなところなんだけど

    まったく見知らぬ女の子が
    すり寄ってきて 

    あまつさえ 
    ぎゅっと抱きついてくるので 

    なんだか嬉しいような 
    ちょっと不安な気持ちになっていると 

    その女の子が 
    僕の手から夢カメラを取り上げて 

    彼女の友だちの女の子たちを 
    パチパチ撮り始めたり 

    友だちでもない 
    通りがかりの異国の女の子まで 

    平気でパチパチ撮るものだから 
    いくら夢の中とはいえ 

    それはないだろう 
    という気持ちになってしまって

    さらには 
    その異国の女の子が 

    ほほえんだり 
    ポーズまでとってくれて 

    まるで本当の夢みたいで 

    調子に乗って 
    スカートの中まで撮ろうとするので 

    いくらなんでも 
    それはやり過ぎではないか 

    などと思ってしまったため

    とうとう 
    夢から覚めてしまった 

    わけだけれども 

    その夢の中の夢カメラは 
    現実の枕もとにはなくて 

    もしかすると 
    もしかするかもしれないので 

    この寝室とは別の部屋にある 
    愛用のデジカメを 

    念のため 
    念写ということもあるかもしれないから 

    確認のため 
    スイッチを入れてみたら 

    表示はやはり 
    じつに現実的で 

    「画像がありません」

     

     

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  • 霊気点検の日

    2015/11/28

    怖い話

    「電気設備の安全性については問題ないのですが」
    帽子をかぶった担当調査員の男が言う。

    「わずかですが、霊気が漏れているようです」


     電気設備安全点検の調査は 
     電気事業法の定めにより実施される。 

     法令に基づき国に登録された電気設備調査機関が 
     電力会社からの委託を受け、一般住宅や商店を調査する。


    (こいつ、なんだ?
     副業で仏壇でも売るつもりか?)

    不信感あふれる私の表情を見て、男は笑う。
    「この仕事を長年やっておりますと、霊感が強くなるのですよ」

    胸に写真入り調査員証のあるユニホーム姿の男の説明によると 
    電気と霊気は性質が似ているのだそうだ。

    霊気が漏れる漏霊現象の痕跡は 
    室内にある分電盤の漏電遮断器にも表れる、と言う。 

    「具体的にはどのような・・・・」
    「いや。はっきりしてなくて、なんとなくの感じなんですけどね」

    ここは、なんとなく納得したフリをするしかあるまい。

    「それで、その漏霊があると、なにか問題でもあるのですか?」
    「いや。普通の状態の普通の人には問題ありません」

    「・・・・普通でない状態だったり、普通でない人には?」

    そこで男は青ざめた。
    「し、失礼しました!」

    男は脚立やら道具一式を抱え、あわてて立ち去った。


    (すると、どこか普通でないところがあったのかな)

    私は首をひねった。
    あるいは、ちょっとひねり過ぎたかもしれない。

     

     

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  • 言葉の浄水器

    2015/11/27

    楽しい詩

    天然水なるものを 
    ペットボトルで買っているのだけれど 

    飲み水はともかく 
    言葉にまでカネを出したくないので 

    浄水器のようなものがあれば 
    いいな、と思う。


    余計な単語を取り除き 
    耳障りな言いまわしを避け 

    くだらないイメージや雰囲気を 
    さらりと消してくれる。



    そんな言葉の浄水器が 
    もしあるとすれば 

    塩素が除去されるため 
    雑菌が繁殖しやすくなったり 

    フィルターの交換が 
    定期的に必要だったり 

    なかなか手入れが大変であろう。


    それに やっぱり 
    本体だって 

    あんまり安くはなさそうだ。

     

     

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