1万8000人の登録クリエイターからお気に入りの作家を検索することができます。
2015/12/26
成長促進剤やら添加物の影響で成長異常児や奇形児が増えている
という噂である。
しかし問題は、それらを放任したままにしておく当事者の
精神の異常であり、奇形であろう。
などということを考えていたら
窓の外が騒がしい。
共同ごみ置き場のごみの出し方がひどい
とのこと。
やれやれ。
身近にも徘徊していたか。
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/25
君はオートバイで海を渡る。
船で渡っても、あんまり意味がないから。
同じ理由で、君が乗る船は空を飛び
君が乗る飛行機は地中を潜る。
しかしながら、それらにも深い意味はない。
自転車で虹を渡ろうと、衛星軌道を進もうと
ほんのちょっと奇妙な印象を与えるだけ。
そういう場所に宝は隠されていない。
子どもたちは喜ぶかもしれないが
大人たちは紛らわしさに困惑するばかり。
つまり、乗物とか移動手段なんか
なんだっていいのだ。
スプーンに乗ってスープ皿の上を
渡りたければ渡るがいいさ。
結局、どこにいてどうしていようと
君は君でしかないのだから。
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/24
どうぞ私を捜さないでください。
私はあなたから姿を消します。
あなたの知らない場所へ隠れます。
だから私を捜さないでください。
ふたりが別れてはならない理由も
一緒にいなければならない理由も
少なくとも私には見つけられないのです。
あなたの都合など理由にはなりません。
私の都合が理由にならないのと同じです。
もう会わないことにしましょう。
それが、お互いのためになると思います。
いいえ、私たちのためだけでなく
ありとあらゆるもののためになるでしょう。
そんな予感がするのです。
だから、この手紙を残します。
けっして私を捜さないでください。
もしあなたに見つけられたら
私は生きていけません。
私はあなたを死ぬほど愛そうとしました。
でも、愛がなくては死ねません。
私は最後の女として生きます。
あなたも最後の男として生きてください。
さようなら。
もう名前もいらない 最後の男へ
最後の女より
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/23
彼女は段ボール箱なのだった。
宅配便とかで届いた荷物の梱包材を捨てもせず
部屋の片隅に溜めておいたら、生まれてしまったのだ。
「困るなあ」
僕が呟くと
「そうよね。困るわよね」
波状の断面をゆがめ、彼女は悲しげな顔をした。
途端に心がざわつく。
「いやいや。早く処分しなかった僕が悪いんだけどね」
しかし、このままにしてもおけない。
なんとかしなければ。
とりあえず、彼女の素材の段ボールについて調べてみた。
19世紀イギリスにおいて、当時流行していたシルクハットの
内側の汗を吸い取るために開発されたのだそうだ。
また、腐食性ガスがわずかながら発生するので
電子部品の長期保存には向かないとのこと。
由緒あるのはかまわないが、腐食性はいただけないな。
「あの、私、出ていきます」
僕の心を読んだのか、彼女の方から申し出てくれた。
「そうかい。悪いね。そうしてもらえると助かるな」
彼女のために玄関ドアを開けてやる。
「大丈夫かい?」
「・・・・大丈夫です」
「段ボール箱だもんね」
「ええ。段ボール箱ですから」
そうして段ボール箱の彼女は出ていった。
見送るために庭に出て、僕は曇り空を見上げる。
雨が降っていないのが、せめてもの幸いだ。
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/22
気まぐれに
鶴を折ろうとして
折り方をすっかり忘れていることに
今 気づいた
三角に折ったり
ひし形に折ったり
きれいにたたんで裏返したり
おしまいに 息を入れて膨らませたり
幼い頃
なにが面白くて折り紙をしたのか
と言うと
なんでもない一枚の紙が
ただ折るだけで
舟とか兜とか 人形とか飛行機とか
いろんなものに変わるから
でも たとえそれが
どんな形をしていようと
やはり なんでもない
ただの一枚の紙でしか
あり得ないのに
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/21
追われている。そんな気がする。
なんとしても逃げなければならない。
そいつの裂けた口には鋭い牙が並んでいる。
きれいな穴の列を頭蓋骨にこしらえるはず。
そいつの歪んだ手にはおぞましい爪が生えている。
傷口を開いて血まみれの心臓をえぐり出すはず。
なのに動けない。足が重い。
両足に黒く長いものが巻き付いている。
背後から臭い息が忍び寄る。
よだれのようなものがうなじに垂れた。
「さて、どこから喰ってやろうか」
思わず返事をしてしまう。
「私は毒です。おなかを壊します」
「ほほう、そうかい。では、まず毒抜きをせねばな」
「・・・・そうですね」
そうして、それから毒抜きなるものをされた。
すっかり毒を抜かれてしまい、もう何も言えないが
そのまま喰われた方がマシだった気がする。
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/20
「指導教官殿、下半身が自白しそうであります」
何を口走っておるのだ、おれは。
そもそも、目の前で悩ましく美脚を組み替えるミニスカ美女に
心を奪われている場合ではないのだ。
「あら、とても苦しそうね。我慢はカラダに毒よ」
うう、その通り。早く楽になりたい。
敵国からの見えざる侵略の手が政財界の中枢にまで届いている
という話、まんざら噂だけではなさそうだ。
「失礼いたします」
沈黙を破るように人型ロボットの等身大メイドが入室してきた。
「コーヒーもお茶も召し上がらないそうなので
お水をお持ちしました」
どうせ自白剤が入っているに違いない。
いやいや。催淫剤かもしれないぞ。
「今年の夏は雨が多く、日照時間が少ないそうですね」
とりあえず天気の話でもして誤魔化すしかあるまい。
「・・・・そのようね」
データを確認したかのように、美女は再び美脚を組み替える。
案外、この女も人型ロボットかもしれないぞ。
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/19
ウケよくて
親しみやすく
目立っているが
つまらない
挨拶みたいに
どうでもよさそな
噂のように
どこにでもありそな
世の流れに
タダ乗りしてるだけの
ニセモノども
マガイモノども
目障りなだけで
なんの貢献もせぬ
唾棄すべき
インチキ至極な輩を
駆逐せよ!
駆逐せよ!
(逆に駆逐されたりして)
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/18
君は板チョコ
明治のブラック。
近所のスーパーの
第二と第四土曜日の
お菓子全品一割引きの特売日に
まとめて買われ
紙帯のパッケージ はぎ取られ
夏なら冷蔵庫の野菜室の片隅に
重ねて保管されるのさ。
ほぼ一日一枚
筋目に沿って 指でパキパキ折られ
アルミの銀紙 破られて
それから一かけらずつ 指でつままれ
僕の口の中へ放り込まれる
それが君の運命。
齧られ 舐められ 溶かされて
甘く 切なく ほろ苦く
カカオポリフェノール
770mgは伊達じゃない。
ログインするとコメントを投稿できます。
2015/12/17
こちらは、防災噓田です。
光化学スモッグ注意報が発令されました。
不要な外出や屋外での運動はお控えいただきますよう、お願いいたします。
こちらは、防災噓田です。
本日、噓田市法螺台の87歳の女性が行方不明となり、探しています。
女性は身長47m50cmくらい、細身で、頭髪は白髪・短髪です。
上着も下着も着ておらず、つまり裸ですが、ピンクのスリッパを履いています。
お心当りの方は、噓田警察署までご連絡ください。
こちらは、噓田市役所です。
市民のみなさん、外にいる子どもたちの安全を地域の眼で見守りましょう。
安心・安全の街づくりにご協力をお願いします。
こちらは、防災噓田です。
本日発令されました光化学スモッグ注意報は、解除されました。
ご協力ありがとうございました。
こちらは、防災噓田です。
本日、行方不明の捜索依頼をしました女性は、無事保護されました。
ご協力ありがとうございました。
こちらは、嘘田市役所です。
外にいるよい子のみなさん、もう家に帰る時間ですよ。
事故に遭わないよう、みんなで気をつけて帰りましょう。
市民のみなさん、子どもたちの安全を地域の眼で見守りましょう。
ログインするとコメントを投稿できます。