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    Works 3,356
  • 奇形児たちの徘徊

    2015/12/26

    ひどい話

    成長促進剤やら添加物の影響で成長異常児や奇形児が増えている 

    という噂である。

     

    しかし問題は、それらを放任したままにしておく当事者の 

    精神の異常であり、奇形であろう。

     

    などということを考えていたら 

    窓の外が騒がしい。

     

    共同ごみ置き場のごみの出し方がひどい 

    とのこと。

     

    やれやれ。

    身近にも徘徊していたか。

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  • 海を渡る君

    2015/12/25

    変な詩

    君はオートバイで海を渡る。

    船で渡っても、あんまり意味がないから。

     

    同じ理由で、君が乗る船は空を飛び 

    君が乗る飛行機は地中を潜る。

     

    しかしながら、それらにも深い意味はない。

     

    自転車で虹を渡ろうと、衛星軌道を進もうと 

    ほんのちょっと奇妙な印象を与えるだけ。

     

    そういう場所に宝は隠されていない。

     

    子どもたちは喜ぶかもしれないが 

    大人たちは紛らわしさに困惑するばかり。

     

    つまり、乗物とか移動手段なんか 

    なんだっていいのだ。

     

    スプーンに乗ってスープ皿の上を 

    渡りたければ渡るがいいさ。

     

    結局、どこにいてどうしていようと 

    君は君でしかないのだから。

     

     

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  • 置手紙

    2015/12/24

    ひどい話

    どうぞ私を捜さないでください。

     

    私はあなたから姿を消します。

    あなたの知らない場所へ隠れます。

     

    だから私を捜さないでください。

     

    ふたりが別れてはならない理由も 

    一緒にいなければならない理由も 

     

    少なくとも私には見つけられないのです。

     

    あなたの都合など理由にはなりません。

    私の都合が理由にならないのと同じです。

     

    もう会わないことにしましょう。

    それが、お互いのためになると思います。

     

    いいえ、私たちのためだけでなく 

    ありとあらゆるもののためになるでしょう。

     

    そんな予感がするのです。

     

    だから、この手紙を残します。

    けっして私を捜さないでください。

     

    もしあなたに見つけられたら 

    私は生きていけません。

     

    私はあなたを死ぬほど愛そうとしました。

    でも、愛がなくては死ねません。

     

    私は最後の女として生きます。

    あなたも最後の男として生きてください。

     

    さようなら。

     

     

      もう名前もいらない 最後の男へ

                      最後の女より

     

     

     

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  • 段ボール箱

    2015/12/23

    切ない話

    彼女は段ボール箱なのだった。

     

    宅配便とかで届いた荷物の梱包材を捨てもせず 

    部屋の片隅に溜めておいたら、生まれてしまったのだ。

     

    「困るなあ」

    僕が呟くと 

     

    「そうよね。困るわよね」

    波状の断面をゆがめ、彼女は悲しげな顔をした。

     

    途端に心がざわつく。

    「いやいや。早く処分しなかった僕が悪いんだけどね」

     

    しかし、このままにしてもおけない。

    なんとかしなければ。

     

    とりあえず、彼女の素材の段ボールについて調べてみた。

     

    19世紀イギリスにおいて、当時流行していたシルクハットの

    内側の汗を吸い取るために開発されたのだそうだ。

     

    また、腐食性ガスがわずかながら発生するので 

    電子部品の長期保存には向かないとのこと。

     

    由緒あるのはかまわないが、腐食性はいただけないな。

     

    「あの、私、出ていきます」

    僕の心を読んだのか、彼女の方から申し出てくれた。

     

    「そうかい。悪いね。そうしてもらえると助かるな」

    彼女のために玄関ドアを開けてやる。

     

    「大丈夫かい?」

    「・・・・大丈夫です」

     

    「段ボール箱だもんね」

    「ええ。段ボール箱ですから」

     

    そうして段ボール箱の彼女は出ていった。

     

    見送るために庭に出て、僕は曇り空を見上げる。

    雨が降っていないのが、せめてもの幸いだ。

     

     

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  • 折り紙

    2015/12/22

    空しい詩

    気まぐれに 

    鶴を折ろうとして 

     

    折り方をすっかり忘れていることに 

    今 気づいた 

     

     

    三角に折ったり 

    ひし形に折ったり 

     

    きれいにたたんで裏返したり 

    おしまいに 息を入れて膨らませたり 

     

     

    幼い頃 

    なにが面白くて折り紙をしたのか 

     

    と言うと 

     

    なんでもない一枚の紙が 

    ただ折るだけで 

     

    舟とか兜とか 人形とか飛行機とか

    いろんなものに変わるから 

     

     

    でも たとえそれが 

    どんな形をしていようと 

     

    やはり なんでもない 

     

    ただの一枚の紙でしか

    あり得ないのに

     

     

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  • 毒抜き

    2015/12/21

    怖い話

    追われている。そんな気がする。

    なんとしても逃げなければならない。

     

    そいつの裂けた口には鋭い牙が並んでいる。

    きれいな穴の列を頭蓋骨にこしらえるはず。

     

    そいつの歪んだ手にはおぞましい爪が生えている。

    傷口を開いて血まみれの心臓をえぐり出すはず。

     

    なのに動けない。足が重い。

    両足に黒く長いものが巻き付いている。

     

    背後から臭い息が忍び寄る。

    よだれのようなものがうなじに垂れた。

     

    「さて、どこから喰ってやろうか」

     

    思わず返事をしてしまう。

    「私は毒です。おなかを壊します」

     

    「ほほう、そうかい。では、まず毒抜きをせねばな」

    「・・・・そうですね」

     

    そうして、それから毒抜きなるものをされた。

     

    すっかり毒を抜かれてしまい、もう何も言えないが 

    そのまま喰われた方がマシだった気がする。

     

     

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  • 危機管理室

    2015/12/20

    愉快な話

    「指導教官殿、下半身が自白しそうであります」

    何を口走っておるのだ、おれは。

     

    そもそも、目の前で悩ましく美脚を組み替えるミニスカ美女に 

    心を奪われている場合ではないのだ。

     

    「あら、とても苦しそうね。我慢はカラダに毒よ」

    うう、その通り。早く楽になりたい。

     

    敵国からの見えざる侵略の手が政財界の中枢にまで届いている 

    という話、まんざら噂だけではなさそうだ。

     

    「失礼いたします」

    沈黙を破るように人型ロボットの等身大メイドが入室してきた。

     

    「コーヒーもお茶も召し上がらないそうなので

     お水をお持ちしました」

     

    どうせ自白剤が入っているに違いない。

    いやいや。催淫剤かもしれないぞ。

     

    「今年の夏は雨が多く、日照時間が少ないそうですね」

    とりあえず天気の話でもして誤魔化すしかあるまい。

     

    「・・・・そのようね」

    データを確認したかのように、美女は再び美脚を組み替える。

     

    案外、この女も人型ロボットかもしれないぞ。

     

     

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  • 駆逐せよ

    2015/12/19

    暗い詩

    ウケよくて 
    親しみやすく 

    目立っているが
    つまらない 

    挨拶みたいに 
    どうでもよさそな 

    噂のように 
    どこにでもありそな 

    世の流れに 
    タダ乗りしてるだけの 

    ニセモノども 
    マガイモノども 

    目障りなだけで 
    なんの貢献もせぬ 

    唾棄すべき
    インチキ至極な輩を 

    駆逐せよ! 
    駆逐せよ! 


    (逆に駆逐されたりして)

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  • 板チョコ

    2015/12/18

    愛しい詩

    君は板チョコ 
    明治のブラック。


    近所のスーパーの 
    第二と第四土曜日の 

    お菓子全品一割引きの特売日に 
    まとめて買われ 

    紙帯のパッケージ はぎ取られ 

    夏なら冷蔵庫の野菜室の片隅に 
    重ねて保管されるのさ。


    ほぼ一日一枚

    筋目に沿って 指でパキパキ折られ 
    アルミの銀紙 破られて 

    それから一かけらずつ 指でつままれ 
    僕の口の中へ放り込まれる 

    それが君の運命。


    齧られ 舐められ 溶かされて 
    甘く 切なく ほろ苦く 

    カカオポリフェノール 
    770mgは伊達じゃない。

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  • 防災放送

    2015/12/17

    ひどい話

    こちらは、防災噓田です。
    光化学スモッグ注意報が発令されました。
    不要な外出や屋外での運動はお控えいただきますよう、お願いいたします。


    こちらは、防災噓田です。
    本日、噓田市法螺台の87歳の女性が行方不明となり、探しています。
    女性は身長47m50cmくらい、細身で、頭髪は白髪・短髪です。
    上着も下着も着ておらず、つまり裸ですが、ピンクのスリッパを履いています。
    お心当りの方は、噓田警察署までご連絡ください。


    こちらは、噓田市役所です。
    市民のみなさん、外にいる子どもたちの安全を地域の眼で見守りましょう。
    安心・安全の街づくりにご協力をお願いします。


    こちらは、防災噓田です。
    本日発令されました光化学スモッグ注意報は、解除されました。
    ご協力ありがとうございました。


    こちらは、防災噓田です。
    本日、行方不明の捜索依頼をしました女性は、無事保護されました。
    ご協力ありがとうございました。


    こちらは、嘘田市役所です。
    外にいるよい子のみなさん、もう家に帰る時間ですよ。
    事故に遭わないよう、みんなで気をつけて帰りましょう。
    市民のみなさん、子どもたちの安全を地域の眼で見守りましょう。

     

     

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