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  • 回覧板

    2015/11/30

    論 説

    外国には回覧板のようなものはなく、日本だけのようだ。
    そもそも町内会みたいな自治会もないらしい。

    調べてみると、どちらも日中戦争の頃から始まった、とある。
    上意下達じょういかたつの有効な手段なのだろう。

    しかし、はっきり言って、回覧するまでもない内容が多い。
    まるで、回覧板があるから回覧物があるみたいに。

    マンション自主管理組合の理事長をさせられているので 
    自動的に町会の班長もさせられている。

    それで町会から定期的に回覧物が届けられ 
    それをいくつかの回覧板に振り分けることになる。

    各棟の掲示板に貼って済ますこともあるが 
    問題になりそうもない連絡事項なら、あえてまわさない。

    それが問題にならないとも限らないが、そもそも 
    どうでもよさそうな情報をまわすことが、すでに問題なのだ。

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  • 夢カメラ

    2015/11/29

    愉快な話

    夢カメラ 
    というのがあって 

    そのカメラを持って 
    夢の中でシャッターを押すと 

    ちゃんと夢の中の場面を 
    画像として録画することができて 

    なかなか夢があって 
    素敵なんだけど 

    さて 

    夢の中で人物を 
    いざ撮ろうとすると 

    たとえ夢の中だとしても 
    本人にカメラを向けるのは

    ちょっと失礼 
    というか 

    勇気が出なくて 
    ためらわれてしまうんだけど 

    ほれ 
    それはそれ 

    なにせ夢だから 

    そこは百貨店の 
    婦人服売り場みたいなところなんだけど

    まったく見知らぬ女の子が
    すり寄ってきて 

    あまつさえ 
    ぎゅっと抱きついてくるので 

    なんだか嬉しいような 
    ちょっと不安な気持ちになっていると 

    その女の子が 
    僕の手から夢カメラを取り上げて 

    彼女の友だちの女の子たちを 
    パチパチ撮り始めたり 

    友だちでもない 
    通りがかりの異国の女の子まで 

    平気でパチパチ撮るものだから 
    いくら夢の中とはいえ 

    それはないだろう 
    という気持ちになってしまって

    さらには 
    その異国の女の子が 

    ほほえんだり 
    ポーズまでとってくれて 

    まるで本当の夢みたいで 

    調子に乗って 
    スカートの中まで撮ろうとするので 

    いくらなんでも 
    それはやり過ぎではないか 

    などと思ってしまったため

    とうとう 
    夢から覚めてしまった 

    わけだけれども 

    その夢の中の夢カメラは 
    現実の枕もとにはなくて 

    もしかすると 
    もしかするかもしれないので 

    この寝室とは別の部屋にある 
    愛用のデジカメを 

    念のため 
    念写ということもあるかもしれないから 

    確認のため 
    スイッチを入れてみたら 

    表示はやはり 
    じつに現実的で 

    「画像がありません」

     

     

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  • 霊気点検の日

    2015/11/28

    怖い話

    「電気設備の安全性については問題ないのですが」
    帽子をかぶった担当調査員の男が言う。

    「わずかですが、霊気が漏れているようです」


     電気設備安全点検の調査は 
     電気事業法の定めにより実施される。 

     法令に基づき国に登録された電気設備調査機関が 
     電力会社からの委託を受け、一般住宅や商店を調査する。


    (こいつ、なんだ?
     副業で仏壇でも売るつもりか?)

    不信感あふれる私の表情を見て、男は笑う。
    「この仕事を長年やっておりますと、霊感が強くなるのですよ」

    胸に写真入り調査員証のあるユニホーム姿の男の説明によると 
    電気と霊気は性質が似ているのだそうだ。

    霊気が漏れる漏霊現象の痕跡は 
    室内にある分電盤の漏電遮断器にも表れる、と言う。 

    「具体的にはどのような・・・・」
    「いや。はっきりしてなくて、なんとなくの感じなんですけどね」

    ここは、なんとなく納得したフリをするしかあるまい。

    「それで、その漏霊があると、なにか問題でもあるのですか?」
    「いや。普通の状態の普通の人には問題ありません」

    「・・・・普通でない状態だったり、普通でない人には?」

    そこで男は青ざめた。
    「し、失礼しました!」

    男は脚立やら道具一式を抱え、あわてて立ち去った。


    (すると、どこか普通でないところがあったのかな)

    私は首をひねった。
    あるいは、ちょっとひねり過ぎたかもしれない。

     

     

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  • 言葉の浄水器

    2015/11/27

    楽しい詩

    天然水なるものを 
    ペットボトルで買っているのだけれど 

    飲み水はともかく 
    言葉にまでカネを出したくないので 

    浄水器のようなものがあれば 
    いいな、と思う。


    余計な単語を取り除き 
    耳障りな言いまわしを避け 

    くだらないイメージや雰囲気を 
    さらりと消してくれる。



    そんな言葉の浄水器が 
    もしあるとすれば 

    塩素が除去されるため 
    雑菌が繁殖しやすくなったり 

    フィルターの交換が 
    定期的に必要だったり 

    なかなか手入れが大変であろう。


    それに やっぱり 
    本体だって 

    あんまり安くはなさそうだ。

     

     

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  • 行列式

    2015/11/26

    変な話

    退院したら、町の様子が変わっていた。

    なにやら至るところに行列ができている。
    短いのもあるし、長いのもある。

    短い行列は、それを行列と呼べるかどうかわからないが
    ふたりだけで橋の欄干のところに並んでいたりする。

    長い行列は前も後ろも端が見えない。
    なにかイベントでもあるのだろうか。

    並んでいる老人に尋ねてみた。
    「これはなんの行列でしょう?」

    老人は笑いながら
    「天神様の行列じゃ」

    どうも意味がわからない。

    ある行列の最後尾にいた女子学生にも尋ねてみた。
    「どうして並んでいるの?」

    「並んでなんかいないわ」
    「でも、いかにも列に並んでいるように見えるけど」

    「私の進む方向に勝手に列があるだけよ」
    彼女は怒ってしまった。

    ますますわからない。
     
    とりあえず、この行列の先頭を調べてみることにした。
    自宅に帰る方向でもあったからだ。

    事故の後遺症なのか、入院が長かったせいか 
    ところどころ道路や建物の記憶が抜けている。

    歪んだ形の立体が空中に浮かんでいるのを見たりすると 
    その体積を求めなければいけないような気もしてくる。

    やがて行列は乱れ、あちこち落ちてる糞をよけたり、
    倒れている女をまたいだりするようになった。

    そのうちどこにいるのかわからなくなり、
    つまり、どうやら迷子になってしまったらしい。

    食事をしていないのに空腹は感じない。
    なぜか喉も渇かない。

    しかし、不安がよぎる。

    もうなんでもいいから 
    どこかの行列に並びたくなってきた。

     

     

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  • 中略の多い報告書

    2015/11/24

    論 説

    我が国における低反発性青少年の実態調査の結果を報告いたします。
    (中略) 
    たとえ理不尽な内容であったとしても、さして抵抗する様子もなく目上の指示に従う若者が多い、という声を耳にし、また個人的な実感として意識もいたします。
    (中略) 
    過去の文献を調べましたところ、このような傾向は最近になって始まったわけではなく、近年でもなく、時代背景によって多少の差はあるものの、記録に残っている限り昔から指摘されておるようです。
    (中略) 
    社会的環境に対する依存性が高い状況においては、現状の人間関係を損なうわけにもいかず、唯々諾々と目先の部分的なシステムの強化と維持を担う他ありません。
    (中略) 
    このような状況下において、グローバル化は我が国固有の排他システムを根本から覆す選択であり、許容限度を超えた場合、システムの維持、さらにはその存続すら危ぶまれます。
    (中略) 
    なんらかの痛みを伴うのは当然とは言え、修復や改善の見込みもない改革路線を目上の立場から指示するのは、高反発性青少年の少なからぬ増加が懸念されることもあり、いかがなものかと考えます。
    (中略) 
    まことに簡略ではありますが、報告は以上です。

     

     

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  • 打ち上げ少女

    2015/11/22

    愛しい詩

    花火大会の夜に 
    浴衣なら 

    どうしたって 
    打ち上げてみたくなる。


    キャー! 
    とか 

    イヤー! 
    とか 

    言いながら 

    高く 高く 
    ものすごく高いところまで昇って 

    ダメー! 
    とか 

    ダイスキー! 
    とか 

    無邪気な大声を 

    夏の夜空に 
    響かせるのだ。

     

     

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  • 金の子馬

    2015/11/21

    楽しい詩

     駆ける流星

     燃えるたてがみ


    金の子馬よ 闇を裂け!

     ひづめ割れ
     あし折れるとも

     

     

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  • 悪い子はいらん

    2015/11/20

    怖い話

    悪い子は邪魔だな。
    迷惑だし、役に立たんから、いらん。

     

    そんな悪い子は、学校の校舎になってもらおう。
    うん、それしかあるまいて。

     

    こっそり連絡しておくとな、ある指定された日に 
    政府の役人か、政府の委託会社の怖そうな社員がな
    黒くて丈夫な装甲車に乗ってやって来てくれて 
    悪い子を捕まえて連れ去ってくれるんだ。

     

    そのまま公にされてない秘密の工場に運ばれて 
    服を脱がされ裸にされて 
    妙な液体入り水槽の中に投げ込まれる。

     

    その妙な液体に丸一日も浸かっておれば 
    そのうち骨が柔らかくなる。

     

    適当な頃に水槽から網みたいなのですくい上げられて 
    容器に入れられ、ベルトコンベアで運ばれて 

    ゴーン、ゴーン、と物凄い音のする大型機械の中で 
    引き延ばされたり、平らにされたり、切られたり削られたり 

    とにかく、あれこれ無慈悲な自動制御の加工を受ける。

     

    そうすると、板になったり角材になったりしてな 
    十分に乾燥させれば、立派に建築資材として使えるようになる。

     

    それらを改築や新築をする学校の校舎に用いるわけだ。

     

    木目みたいに悪い子の顔の表情が残る場合もあって 
    そういう素材は校舎の目立つところに使うことになっておる。

     

    踏まれたり蹴られたり、汚されたり傷つけられたりする度に 
    小さく悲鳴をあげる板もまれにあるそうだから 
    生徒たちへの悪い子になる抑止効果はバッチリだ。

     

    さて、そろそろ連絡しようかな。

     

    しかし、まあ、わざわざ連絡せんでも  
    他の誰かが困って、先に連絡しとるかもしれんがの。

     

     

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  • 耳鳴り

    2015/11/18

    変な詩

    セミが鳴く 
    セミが鳴く 

    夏でもないのに 
    セミが鳴く 

    ミン ミン ミン ミン 
    ミミン ミン  

    朝から晩まで 
    ミン ミン ミン ミン 

    鳴く 鳴く 鳴く 鳴く 
    ミン ミン ミン ミン 

    鳴く 鳴く セミが 
    セミが鳴く  

    耳の奥に 
    頭の中に 

    ミン ミン ミン ミン 
    ミミン ミン
     

     

     

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