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  • 雪だるま

    雪が降った。

     

    妹が小さな雪だるまを作った。

     

    それを僕が壊した。

     

    妹は泣いた。

     

    僕は困った。

     

    僕は企んだ。

     

    僕は大きな雪だるまを作った。

     

    それを妹が壊した。

     

    僕は泣くふりをした。

     

    妹は笑った。

     

    僕も内心で笑った。

     

    雪だるまは怒っていた。

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  • 砂利道の赤ん坊

    これはこの正月、実家に帰省したおり 
    すっかり腰が曲がって小さくなった老母から聞いた話である。

     

     

    昔の田舎は舗装道路ではなく、砂利道がほとんどだった。

    適当な大きさに粉砕した石ころを厚く敷いただけの道。

     

    まだ幼かった私をその砂利道、おそらく農道に置いておくと 

    地面の石ころをもてあそび、いつまでも大人しくしていたそうである。

     

    つまり、手間の掛からない赤ん坊だったわけだ。

     

    おそらく当時、他に適当な遊び道具もなかったはずなので 

    石ころの多様な色や形、それらの配置などを楽しんでいたのだろう。

     

    こうして大人になった今も、ひとり飽きもせず 

    言葉や音声やイメージを組み合わせて遊んでいるように。

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  • 僕たちの情景

    君は自転車に乗って 

    僕は走ったり歩いたりして 

     

    楽しそうに喋ったり笑ったりしながら 

    ふたり共通の目的地を目指して進んでいる。

     

     

    とても微笑ましい情景ではあるけれど 

    じつは、あのふたりは僕たちではないかもしれない。

     

    あの少女は君ではなくて 

    あの少年も僕ではない。

     

    そういう可能性は十分にある。

    というか、そう考えるのが自然だ。

     

     

    けれども、実際のところ 

    過ぎ去った事実なんか気にすることはない。

     

    今、僕たちが思いたいように思えるなら 

    どこにもなんの問題もないはずなのだから。

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  • 姉さんの鍵

    今日は、ぼくの誕生日。

    ねえさんから鍵をもらった。
    きれいな金色の鍵。

    ぼくは、ねえさんの髪が好き。
    やわらかな長い髪。

    許されるなら、いつまでもながめていたい。

    ねえさんの手も好き。
    でも、長い爪はきらい。

    去年の誕生日、そっとねえさんの髪にふれた。
    ねえさんは驚いてふり向き、爪がぼくの耳にささった。

    あの時、ぼくもねえさんも泣いてしまった。
    だから、ぼくの右耳には今でも、小さな穴があいている。

    今夜、この穴に鍵をさしこんでみるんだ。
    痛いだろうけど、ぼくは泣かないよ。

     

     

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  • お菓子の日

    近所の大型スーパーへ行く。

    毎月第2第4土曜日は、お菓子の日。
    お菓子全品1割引きセールの日なのだ。

    糖尿病を心配して糖質は控えているものの 
    どうしてもチョコレートだけはやめられない。

    それで、お菓子売り場へ直行する。
    ブラックチョコ、2週間分まとめ買いである。

    ところがそこで、お菓子に出会った。

    透明袋に人形が入っているだけなのに
    棚のプレートの商品名が「お菓子」なのだ。

    そんなに高くない。
    板チョコ5枚ほどの値段だ。

    商品説明も成分表示も何もない。
    しかし、バーコードのシールが貼ってある。

    おそらく首がキャップにでもなっていて 
    中にスナック菓子でも入っているのだろう。

    人形としてなかなか魅力的だったので 
    思い切って買うことにした。

    チョコその他と一緒にカゴに入れ 
    不安ながらレジに並ぶ。

    レジのおばちゃんも「お菓子」を見て変な顔をした。
     
    しかしながら、ちゃんとバーコードを読み込めたので
    忙しいこともあり、彼女なりに納得したようだ。

    レシートの品目も「お菓子」であった。

    帰宅してすぐ、開封して詳しく調べてみる。
    首にもどこにもキャップらしき接続部分がない。

    あるいは、まったく人形の菓子なのか。

    試しに指を濡らして帽子のあたりをこすって 
    思い切って舐めてみた。

    とっても甘かった。


    一度床に落として割れてしまったけど 
    なんとか接着させ、今でも部屋に飾ってある。

     

     

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  • ゲレンデ

    いつの間にかスキー靴とスキーを履いて 
    真っ白なゲレンデの上に立っている。 

    さきほどまで資産家の青年と列車に乗っていたはずだが 
    その高校の同級生でもあったらしき彼の姿はない。 

    先に滑り降りていったのかもしれない。
    だとすれば、いかにも彼らしい。

    追いかけるように雪の斜面を滑降し始めたものの 
    しかし、もう彼のことはすっかり忘れている。 

    スキーに乗って風と雪を切るのが 
    こんなに楽しいのは、いったいどういうわけだろう。 

    ゲレンデは快適の現場だな、などと思う。

    「ねえ、一緒に滑らない?」
    故郷の幼なじみの女の子の声。

    彼女がゴーグルを持ち上げる。
    その笑顔がまぶしい。 

    女の子がスキー場でスキーウェアを着るとなぜか 
    いつもの二倍ほどきれいに見える。 

    「もう一緒に滑っているじゃないか」
    「えっ、そうだっけ?」

    ふたり、スキーの板を並べて滑っている。 
    ほほえましいシュプールが雪面に残るだろう。

    このまま下まで降りてゆくつもり。

     

     

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  • 海へ行こう

    ふと思い出した。 

    (そうだ、忘れていた。 
     夏になったら海へ行くのだった) 

    趣味のスライドショー動画制作のため 
    海の風景写真を撮りに行くと 

    もう冬のうちから決めていたのだ。 

    これまで川や池の画像で誤魔化していたが 
    どうにも我慢ならないものがあった。 

    その動画のやがて原作となるであろう話を 
    ブログに投稿してから出かけたかったが 

    ちっとも浮かばないので諦めた。
     
    とにかく海へ行こう。 
    投稿なんぞ帰ってからだ。 

    それで県内の地図帳とデジカメ持って 
    昼になる前に出かけたのだった。 

    サングラスと帽子とデイパック。

    これにニッカポッカとTシャツなら 
    普段の買い物と同じ格好。 

    今回はTシャツの代わりに 
    網目生地の黒いノースリーブで決める。 

    ただし、実際に決まったかどうかは知らない。
    とにかく、蒸し暑いのはきらいだ。 

    スイカで最寄駅の自動改札を通り抜け、
    いくつか電車を乗り換え、約1時間半。

    下車駅から歩いて30分ほどの海岸に到着。 

    九十九里浜の端っこの砂浜。 
    一般の海水浴客は少なく、むしろサーファーの方が多い。  

    夏休みに入ったものの平日なので 
    華やかな水着姿を撮る楽しみは期待できない。

    しかし、海を撮るには好都合。

    太平洋は20年ぶりだろうか。
    実家のある日本海も10年以上見ていない。

    波の迫力、さすが海である。 
    池や川の波が下手な特撮に見える。 

    ここにも例の津波の被害はあったはずだが 
    あまり具体的に感じられなかった。 

    しかし、海岸の浸食により多くの海水浴場が閉鎖になった
    というニュースを帰宅してから、たった今見つけた。

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  • 美人の漬物

    美人はいたみやすい。

    長期保存するため、恋人を漬物にすることにした。
    まずは「漬物」でWeb検索。

    塩、しょう油、みそ、酢、酒かす、からし、ぬか、・・・・ 

    漬け込み材料色々あれど 
    彼女にふさわしいのはなんだろう? 

    しょっぱいのやすっぱいのや 
    ぬか臭いのはいやだな。

    みそ美人というのも、なんだかね。
    からし美人、いかにも性格きつそう。

    ワイン好きだから、ワインかす? 
    鼻持ちならなくならないか? 

    ああ、どうもわからん。
    一夜漬けじゃ無理あるな。

    もう冷凍にするしかないか。
    でも、いくらきれいでも冷たい女じゃ・・・・ 

    ああ、ちくしょう! 
    悩んでるうちに腐っちまった。

    やっぱ無理だったか。


    やれやれ。

    美人の保存はむずかしい。

     

     

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  • ネズミの家

    あるところに ネズミの家がありました。
    古くて大きくて たいそう立派な家でした。

    その昔、ネズミの家は 人の家でした。

    ある日、この家にネズミがやって来て 
    ある日、この家から人が出て行ったのです。

    以来、この家は ネズミの家なのです。


    元旦の朝、この家に ネコがやって来ました。
    「おめでとう、ネズミさん。はい、年賀状ね」

    なんと、ネコの郵便配達夫なのでした。

     

     

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  • 大きな犬小屋

    とても大きな犬小屋がありました。

    小屋とは呼べないくらい 大きくて
    その中に 庭があるほどでした。

    人の住む家も たくさんありました。

    川まで しっかり流れています。
    山だって 立派にそびえています。

    犬は? 
    もちろんいます! 

    ちゃんと 冬の南の夜空に 輝いています。
    それが 大犬座のシリウスです。

     

     

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