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2016/08/02
山奥の廃村は草木に埋もれていた。
どこまでも明るく
どこまでも静か。
ああ、楽しい。
ここは誰もいないから。
汗に濡れた服は脱ぎ捨てよう。
裸踊りしたってかまわない。
のどかな風景、クルクルまわる。
山も川も雲も、なにもかも。
おや、あれはなんだろう?
視線が合った。
麦わら帽子かぶった美しき蝶。
今、朽ちかけた廃屋の陰に隠れた。
よし、追いかけよう。
捕まえてやる。
逃すもんか。
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2016/08/01
戦場へ赴かねばならない。
兵士として軍隊に組み込まれ
敵軍の兵士を殺すことを強いられる。
殺さなければ逆に殺される。
厭わしいことだ。
銃で撃たれたり、爆弾に吹き飛ばされたら
それこそ死ぬほど痛いはず。
正気ではいられない。
正気の沙汰とも思えない。
戦争を始めねばならない状況にしたのは誰だ。
回避できなかったのか。
いつまでも続けさせているのは誰だ。
正義は両方にあろうが、こちらに勝算あるのか。
捨て石ならともかく
犬死にだけは御免だぞ。
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2016/07/31
抱きしめたい
ただし 彼女ではなく
または 彼でもない
抱きしめたい
あいにく あなたではなく
ましてや 私自身でもない
抱きしめたい
たまらなく 愛しい気持ち
ひたすら 慈しみたいという欲望
抱きしめたい
けれど 誰でもなく
やはり どれでもない
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2016/07/30
えーと、もしもし。
あの、私、会員登録したばかりの者なんですが
そちら、さびしがり屋さんですよね。
話し相手になってくださる、と聞いたのですが・・・・
ああ、そうですか。
良かった。助かりました。
私、ひとりでいると、さびしくてさびしくて
もう死にそうになるんですよ。
ええ、そうなんです。
ひとりでテレビとか観てても、ダメなんです。
読書していても、パソコンいじっていても
孤独を感じるばかりで、やり切れなくなるんですよ。
こういうシステムができて、ありがたいですね。
ああ、そうなんですか。
正式には、確か「気の向くまま商店街」でしたっけ。
お天気屋とか恥ずかしがり屋とか
その日の気分屋なんてのも・・・・
ああ、だから会員ではなくて、お客さんなんだ。
なるほど、納得しました。
通話にはポイントが必要なんですよね。
へー、お店の商品を買ってもいいんですか。
では、さびしがり屋さんとこの商品、なんですか?
ははー、お喋りロボットですか。
ほほー、ペットのハムスターもね。
えっ? 異星人の幼女?
まさか、それはないでしょう。
えっ? そうなんですか?
ホントですか。
なんだ。それなら、もう
さびしがってる場合ではありませんね。
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2016/07/29
いくつものブランコが並んでゆっくり流れてくる。
スキー場にあるリフトの列を連想させる。
ただし、ここはスキー場ではない。
山の斜面はないし、雪もない。
ゆっくり移動するブランコの列を除けば
ありふれた駅前広場である。
どうも状況が呑み込めないものの
他の人たちの作法を見習ってリフトに乗る。
駅前通り商店街の中空を並んでゆっくり運ばれてゆく。
見飽きた風景がいくらか新鮮に感じられる。
なんとなく遊園地へ向かっているような気がする。
そんな洒落た施設が近所にあったためしはないのだが
遊園地がないなら、こんなリフトだってないはず。
そんな屁理屈が通用しそうな気配。
なにしろ、こうして皆とリフトに乗っているだけで
もう気分は遊園地なのだから。
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2016/07/28
美しき 孔雀の尾羽 颯爽と
なびかせ 開き 悩ましく
踊るは Sambaの
Carnaval
腰をくねらせ
胸ゆすり
あふれんばかり
笑顔の下で
サソリも毒蛇も 喰らうとか
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2016/07/27
それは あいまいなまま
不意に 生まれ
そのわけは
あとから 考える
願いが叶った時
叶わない時
苦労が報われた時
報われない時
一緒にいたい相手と会えた時
その相手と別れなければならない時
こみあげてくるもの
にじむもの
その粒の数で その想いを
量れはしないけれど
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2016/07/26
竜は どこにいるのでしょう?
快晴の空に 竜はいません。
普段、竜は 小さくなって 雲の中に隠れています。
隠れている雲が 大きくなって 黒くなると
竜の子も 大きくなって 大人の竜になります。
風が強くなったら それは竜が吐く息です。
雨が降ったら それは竜の汗です。
竜のオシッコが少々 混ざっているかもしれません。
雷鳴が聞こえたら それは竜の咆哮ほうこうです。
時々、竜だって オナラくらいしますけどね。
稲妻が走ったら それは竜が 駆け抜けたのです。
ええ、そうです。
カミナリ様が 竜の正体なのでした。
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2016/07/25
昔、トラの毛は 真っ黒でした。
カラスの羽の色と いい勝負でした。
「もっと明るい色に してください」
トラは 神さまに お願いしました。
すると 神さまは 断りました。
「そんな願い、いちいち叶えていたら きりがない」
けれども トラは 諦めません。
いつまでも しつこく お願いするのでした。
「やれやれ、仕方ないな。ただし 全部は無理だぞ」
神さまは トラの願いを 半分だけ 叶えてやりました。
そういうわけで、その時から トラの毛は
黄色と黒の あのシマシマに なったのです。
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2016/07/24
君の指先が僕の胸に突き刺さり
そのまま背中に突き抜ける。
ここからでは見えない血のマニキュア。
爬虫類を連想させる長い舌が傷口を這い
未熟な鳥肌に一枚ずつウロコを移植する。
泡に包まれ、粘液を分泌しながら
足を絡ませるカタツムリ。
君の無表情な複眼と無神経な外骨格。
僕のカラダは麻痺して動けない。
刺し込まれる産卵管に根毛まで痙攣が走る。
柱頭から花粉管が伸びる。
裂けた染色体、泳ぐミトコンドリア、
せわしなく渦巻く原形質。
どこか違和感を感じながらも
惰性のように増殖が始まろうとしている。
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