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  • 軽い娘

    2016/07/12

    楽しい詩

    昔々あるところに 

    とても軽い娘がおりました。

     

    どれくらい軽いのか、と申しますと 

    もうお話にならないくらい軽いのでした。

     

    地に足がついてなくて 

    ただフワフワ浮かんでいるばかりです。

     

    なので、まことに残念ながら 

    軽い娘のお話を続けることができません。

     

    まったく困った娘です。

     

    ひょっとしたら今でも 

    どこかに浮かんでいるかもしれませんよ。

     

     

    あっ、いた!

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  • いらない我々

    2016/07/11

    論 説

    卑下でもなんでもなく 

    冷静に考えて 

     

    どうも我々は

    いらないような気がするのだ。

     

     

    世界人口が爆発中らしいのに 

    いまさらiPS細胞なんかいるの? 

     

    「若い人材が必要だ」とか言うけど 

    老人が減れば済む問題でないの? 

     

    家電製品も情報関連のハードもソフトも 

    現状機能で十分じゃないの? 

     

     

    文字は読み切れず、曲は聴き切れず 

    映像も観切れないほどあり余っている。

     

    温故知新の暇を与えないようにしているだけ。

     

    やり繰りさえしっかりすれば 

    現状に不足があるとは思えない。

     

     

    いらない我々が 

    やらなくてもいいことをやっている 

     

    という自覚、

     

    いやいやながらも 

    共有せねばならない気がする。

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  • 方針として

    2016/07/10

    論 説

    無闇やたら 
    甘えず 頼らず 

    虚飾を退け 
    実質を磨き 

    志高く 
    妥協せず 

    一歩でも半歩でも 
    倦まず弛まず前進し 

    注ぐなら底穴塞ぎ 
    削るなら根元掘る 


    できることは 
    できるだけやり 

    やりたいことは 
    やりたいだけやり 

    できもしない 
    やりたくもないことはやらず 

    わからぬことは保留し 
    つまらぬことは相手せぬ 


    要するに

    偉いとか 賢いとか 
    カッコイイとか

    褒められ 囃され 
    自惚れたいがためでなく 

    そうすることが 
    本当に 

    面白いかどうかが 
    肝心だ​

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  • 勝たねばならん

    2016/07/09

    論 説

    なんだかんだ 

    言うたかて 

     

    しょせん勝たねば 

    話にならん 

     

     

    結果がすべてで 

    ないにせよ 

     

    最後に残るは 

    ただ結果ばかりなり 

     

     

    問題は 

     

    どこに勝負を 

    求めるか 

     

    どこに勝機を 

    見い出すか 

     

     

    なんにせよ 

     

    座して待つでは 

    始まらぬ

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  • こけし母子

    2016/07/08

    暗い詩

    こけし 

    ここけし 

    こここけし 

     

    こけしに似てるね 

    こけし母子 

     

    きでこ 

    でころこ 

    でくのぼう 

     

    こぼこ 

    こげす 

    きでほうこ 

     

    けしにんぎょう 

    とか申します 

     

    こけし 

    けし

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  • 爪切り

    2016/07/07

    ひどい話

    腹が減った。

    じっと手を見る。

     

    爪が伸びてきたな。

    そろそろ切るか。

     

    ニッパ式の爪切りがある。

     

    まずは小指。

    パチン。

     

    おっと、深爪してしまった。

    いけない、いけない。

     

    気をつけなきゃ。

     

    次は薬指。

    パチン。

     

    痛っ。

    あっ、また深爪だ。

     

    ああ、血がにじんでる。

    バカだな、おれって。

     

    知ってるけどさ。

    まあ、いいや。

     

    次は中指。

    今度こそ慎重に、パチン。

     

    痛い! 

     

    わあ、肉まで切っちゃった。

    なにやってんだ。

     

    血が垂れてる。

    ああ、ひどいな。

     

    傷テープ、あったっけ。

    セロハンテープはどうだ。

     

    めんどう臭いな。

    まあ、いいや。

     

    どうせ、そのうち止まるだろ。

     

    しかし、まいった。

    注意してたんだけどな。

     

    夜に爪切ると親の死に目に会えない、か。

    なるほどね。

     

    まったく、昔の人は偉い。

    暗けりゃ、あぶないもんな。

     

    もっとも、まだ昼なんだけどさ。

    ふん、まあいいや。

     

    さて、次は人差し指だ。

    パチン。

     

    痛たたたた! 

     

    うわあ、指先を切った。

    第一関節から先がない。

     

    血が止まらん。

    ドクドク流れてる。

     

    指の根元をつまんで止血だ。

    痛い。痛い。

     

    しかし、バカだな。

    というか、不器用だな。

     

    いやいや。

    爪切りで指を切り落とすのは至難の業。

     

    普通、途中で気づくよな。

    やっぱ、バカか。

     

    死ななきゃ治らんな、こりゃ。

     

    やれやれ。

    なんとか血は止まったようだ。

     

    薬ぬって、包帯まいて、と。

    こういうのは器用なんだよな、なぜか。

     

    ううう、ズキズキする。

    ひどい目にあったもんだ。

     

    まったく情けない。

    まったく・・・・ 

     

    あっ、指先が落ちてる。

    拾わなきゃ。

     

    ああ、生々しい。

    新鮮な骨付き肉だ。

     

    これ、どうしようか。

    もう、くっつかないよな。

     

    せっかくだから、食べちゃおか。

     

    もったいないもんな。

    腹減ってるし。

     

    とりあえず、冷蔵庫に入れて、と。

     

    さてさて。

    問題は、次の親指だ。

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  • 蝶の香水

    女の匂いが変わった。

    それは鼻の悪い男にもわかるほどに。

     

    「香水を変えたの」

    微笑む女。「蝶の香水よ」

     

    男は蝶の性フェロモンを連想する。

    「花の蜜でも調合したのかい?」

     

    「さあ、どうかしら」

    女は翅をひろげる。「ねえ、ご存じ?」

     

    困ったように男は首を横に振る。

     

    「蝶のメスは匂わないそうよ。

     蛾と違って、匂うのはオスばかりなんですって」

     

    女が背を向けると 

    男が覆いかぶさってきた。

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  • 苦笑句集

    2016/07/05

    楽しい詩

    無季だの非定型だの 

    そも俳句でなくてよかろ 

     

     

    せっかく捨てたに 

    NHKの訪れぬこと数年 

     

     

    お笑いがなんぼのもんじゃい 

    タレント本借りる 

     

     

    カセットテープ捨て 

    CDやDVDいつまでか 

     

     

    Webで良き人やって面白いか 

     

     

    花粉症は症状か商戦か 

     

     

    チェスに飽きたら囲碁をする 

     

     

    挨拶に返事もせぬ隣人 

     

     

    長いと飽きる 

    短かきゃつまらん

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  • 壁から太もも

    寝室の壁から太ももが生えてきた。

    と言うか、若い女性であろう片脚が突き出てきたのだ。

     

    生モノである証拠のようにクネクネ動いている。

     

    壁に穴があいていて、そこに愚かな女の子が脚を突っ込んだ 

    というわけではなさそうだ。

     

    その壁の向こう側は廊下であり 

    誰かいるべき場所には誰もいないのだから。

     

    そもそも、おれは孤独を愛する独身者である。

    この家に同居者はいない。

     

    最初こそ驚いたものの、おれは冷静に脚を観察した。

     

    いわゆる生脚にハイヒール。

    なかなかの脚線美である。

     

    生えてきた理由は知らないが 

    このままここにあり続けるかどうかも不明。

     

    恐る恐る人差し指で太ももに触れてみた。

    すると、ピクリと動き、壁の向こうへ引っこもうとする。

     

    おれはあわてて足首をつかんだ。

    引き戻そうとすると、脚は暴れ、壁を上下左右に動きまわる。

     

    やはり壁の固有の穴ではなかったわけだ。

     

    しかし、いくら強く引っ張っても 

    どうやら太ももの付け根までが限界のようだ。

     

    おれはズボンのベルトを片手で外すと 

    苦労して足首に巻き、さらにベッドの端に縛り付けた。

     

    さて、どうしようか。

     

    おれは油性ペンで太ももに文字を書いた。

    「あなた 誰?」

     

    それから、ベルトの長さを調節。

    すると、太もも部分が壁の向こうへ隠れた。

     

    しばらくすると、再び太もも部分が現れた。

     

    返事の文字が書かれてあった。

    「てめえこそ 誰だよ?」

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  • 森の扉

    2016/07/03

    変な話

    大きな森の端っこに小さな木の扉があった。

    犯罪者の指紋みたいな美しい木目。

     

    呼び鈴はなかった。

    おれはノックしてみた。

     

    「どちら様でしょうか?」

    かわいらしい声であった。

     

    「狼ですが」

    扉の向こうでなにか倒れたような音がした。

     

    「狼ですって?」

    「はい。狼です」

     

    扉の向こうで悲鳴があがった。

     

    「扉を開けてください。空腹なんです」

    「お願い。入らないで。食べないで」

     

    扉はなかなか丈夫にできていた。

    爪も牙も鼻息も役に立たなかった。

     

    夕暮れが訪れようとしていた。

     

    しかたがない。

    今夜は扉の前で眠ろう。

     

    おれはこれでも礼儀正しい狼なのだ。

     

    わざわざ扉なんか通ろうとさえしなければ 

    森の中に入るのはたやすいことだ。

     

    森の扉の両端には別段 

    高い柵や塀があるわけではないのだから。

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