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    Works 3,356
  • 雲をつかむ

    2016/08/24

    愉快な話

    なんとなくできそうな気がしたので 

    空に手を伸ばしてみる。

     

    すると、不思議なことに  

    ちゃんと雲をつかむことができた。

     

    「おいおい、なにすんだ。やめろよ」

    つかまれた雲が文句まで言いだす。

     

    つかみどころのない感触ながら 

    もぞもぞ動くのがわかる。

     

    「まったく、冗談じゃないぞ。 

     人間の分際で勝手なことするな」

     

    やけに偉そうな雲である。

    なんだか心配になってきた。

     

    でも、せっかくなので 

    この雲と記念撮影することにした。

     

    コンデジで、パチリ。

     

    すると、それっきり雲は黙ってしまい 

    もう僕の手の届かない空へ帰ってしまった。

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  • ロケット打ち上げ

    2016/08/23

    明るい詩

    慣れ親しんだ大地を離れ 

    大空へ 見上げるばかりの大空へ 

    ロケットを打ち上げよう 

     

    地球との重力を振り切り 

    しがらみや因縁や定めを捨て去り 

    ロケットを打ち上げよう 

     

    誰も手の届かないところ 

    夢見るしかなかった遥かな宇宙へ 

    ロケットを打ち上げよう

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  • 一輪車に乗って

    2016/08/22

    空しい詩

    一輪車に乗れる子は 

    そんなにいないけど 

     

    一輪車に乗って 

    君は どこへ行くつもり? 

     

    歩くスピードと大差ないし 

    二輪車ほど遠くへもいけない。

     

    乗れない子に比べたら そりゃあ 

    可能性は秘めているけど 

     

    下手に能力を自慢したって 

    反感を持たれないとも限らない。

     

    肝心なことは それで何をするか 

    何をしたいか だよね。

     

    一等賞で いいのかな。

    お金儲けで いいのかな。

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  • ほっといて

    みんな、どうしたの? 

     

    仕事で忙しかったり 

    日帰り旅行に出かけたり 

     

    たまには顔だって見たいのに 

    なかなか会えない。

     

    「悪い。また今度」

     

    スケジュールぎっしり 

    連絡すら ままならない。

     

     

    そんなのやめて 

    そんなのほっといて 

     

    やらなくてもいいことなら 

    やらなきゃいいのに。

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  • もどかしい音頭

    2016/08/20

    愉快な話

    ミシン目でつながった1枚の書類には
    2件の請求額が記されてある。

    それを役所の窓口に提出して手続きをしているところ。

    「片方の分しか支払ってませんね」
    パソコンのモニター画面を見ながら受付けの女性職員。

    「ああ。それはですね・・・・」
    過去のやり取りを思い出しながら説明する私。

    両方やる予定だったが、実際には片方しかやらなかったのだ。
    だから支払いも半分だけ。

    けれども、なかなか込み入った事情があり 
    うまく内容を伝えることができない。

    もどかしい。
    どうやらボケてきたらしい。

    それで、もどかしい音頭を踊りたくなったが 
    あいにく、そんな変な踊りは知らない。

    まったくもって、もどかしい。
    もどかしいったら、ありゃしない。

    ああ、こりゃこりゃ。

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  • おぞまむし

    2016/08/19

    怖い話

    なにやら土壁の傷のようなものが 

    あちらこちらに散在している。

     

    だが、よく見ると、それらが動いている。

    しかも徐々に大きくなる。

     

    どうやら虫の巣に遭遇したらしい。

    節足動物の無数の脚がもぞもぞ蠢うごめいている。

     

    絶望的な予感と悪寒がする。

     

    片手ほどの大きさの虫の群が足もとに落ちる。

    そのままこちらに這い寄る。

     

    クモかもしれない。

    ゴキブリのような気がしないこともない。

     

    手の甲になにやら触れた。

    必死に腕を振る。

     

    うなじに冷たいものが落ちてきた。

    あるいは、この生臭い雨はヒルであろうか。

     

    イカの塩辛のような水たまりができる。

    裸足なので踏んではいけない。

     

    しかし、それとは別のものを踏んでしまった。

     

    とぐろを巻いたヘビ。

    おそらく冬眠明けのマムシであろう。

     

    悲鳴をあげ、飛びのいて逃げる。

    ところが、逃げ切れない。

     

    ぬらぬらしたタコまで這いずってくる。

    カエルのように跳びはねもする。

     

    おぞましさが頂点に達する。

    なのに、いまだ目覚める気配はない。

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  • 歯医者さんごっこ

    「はい。お口を大きく開けて」

    「あーん」

     

    「おやおや。虫歯が多いね」

    「あああ」

     

    「甘い夢ばっかり見てるからだよ」

    「んあああ?」

     

    「ええと、この奥歯は抜かなきゃいけないな」

    「ああ?」

     

    「痛くないよ。麻酔注射するからね」

    「んあんあ」

     

    「治療中、これを右手でつかんでいてもらおうかな」

    「んあ?」

     

    「もし痛かったら握って教えるんだよ」

    「ああん」

     

    「どれどれ。ちょいちょい、と」

    「んあっ!」

     

    「痛い。つ、強く握り過ぎだって」

    「んああっあ」

     

    「やさしく治療するから、やさしく握り返すんだよ」

    「んああんあ」

     

    「ほら。そっと、なでなで」

    「あああん」

     

    「うううん」

    「あー。もう、やだ。歯医者さんごっこなんか」

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  • 諦観の念

    2016/08/17

    論 説

    不安ゆえに苦心するとしても 

    安心したいがため苦しむは愚かなり。

     

    確証もなく防波堤を築かんとするは 

    気休めになれど、対策にあらじ。

     

    安心できぬなら無理に安心せず 

    上手に諦めるが上策なり。

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  • 野菜の路上販売

    2016/08/16

    変な話

    その町には商用で訪れたはずなのに 

    なぜか故郷の町、いや、村になっている。

     

    T字路のような場所で野菜が売られている。

    スイカやカボチャ、長ネギや白菜など。

     

    舗装された路上だが、クルマが通る気配はない。

     

    一台の一輪車の上に大きなキャベツが載っていた。 

    ところが、よく見るとそれは老婆だった。 

     

    買い物中の近所のおばさんが教えてくれる。

    「あなたのお母さんですよ」

     

    なるほど。

    いかにも私の老母に違いない。

     

    しかも、野菜のように売られているのではなく 

    どうやら野菜を売っているのが老母であるらしい。

     

    このような動けない姿になっても 

    どうにか野菜を栽培して販売することにより 

    その対価として周囲の世話になっているようである。

     

    収穫時期を逃したキャベツのように仰向けに寝そべり

    頭を持ち上げる首の筋肉も残っていないらしい。

     

    なのに私は、居たたまれない気持ちのまま 

    老母に近寄ることも声をかけることもできない。

     

    そうすべきだとは思いながらも 

    泥だらけのゴボウみたく、ただ立ち尽くすばかり。

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  • そら君の冒険

    2016/08/15

    愉快な話

    長く寒かった冬が終わり、ようやく 

    北の大地にも待ちに待った春が訪れました。

     

    ぽかぽか暖かい日差しに心うきうき。

    はるさんちのそら君は冒険の旅に出かけるつもりです。

     

    夜ふかしはるさん、ただいまお昼寝中。

    今が旅立つチャンスです。

     

    苦労してこしらえた秘密の通路をくぐって 

    そら君、はるさんちを抜け出しました。

     

     そらそら 空は よい天気

     そらそら そら君 ごきげんだ 

     

    時計台なんか見上げもせず 

    テレビ塔だって関係なし。

     

    赤レンガがどうしたって? 

    クラーク先生、なに言ってんの? 

     

    ラーメン横丁でチャーシューもらって 

    すすきもないのにすすきのとはこれいかに? 

     

    「これいかに?」と目覚めたら 

    はるさんが写真を撮っていました。

     

     そらそら そら君 夢見てた

     そらそら そら君 変な顔

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