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    Works 3,356
  • 求 愛

    2008/10/21

    空しい詩

    たとえば

     鍵があって
     扉がある。


    または

     弓矢があって
     的がある。


    でも

     合わなかったり
     はずれたり。
     

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  • 危険な丘

    異臭漂う危険な丘の上では

    ドラム缶から黄色い液が流れ
    錆びたボルト草にナットの花が咲く


    六本足のネズミが笑っている横では
    病気持ちの浮浪者が眠っている


    潰れた車体から白い足をはみ出して
    いかれた歌を口ずさんでいるのは

    家を出たばかりの家出少女


      なんだか あたし
      猫に蹴られて 死にたいな

      とっても あたし
      猫に蹴られて 死にたいな
     

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    • Tome館長

      2011/09/27 21:38

      「こえ部」で朗読していただきました!

    • Tome館長

      2011/05/27 13:24

      ケロログ「しゃべりたいむ」かおりサンに朗読してもらいました!

  • ガラス瓶

    2008/10/20

    暗い詩

    ガラス瓶に占領された部屋の中で
    男はガラス瓶を眺めて暮らしている。


    ガラス瓶の中には
    様々な美女が入っている。


    好みの美女を街角で見つけると
    男は卑怯な手段で部屋に連れ込み、

    眠らせて無理やりガラス瓶に詰め込むのだ。


    囚われの美女たちにプライバシーはない。
    充血した男の眼から逃れることはできない。

    ときどきガラス瓶の首をつまんで振ったり、

    気が向けば逆さにしたり、
    空中に放り投げたりもする。


    美女たちが泣くと
    男はガラス瓶に耳を押し当てる。

    溜まった涙で溺れそうな幼女もいる。
    死んだふりしてる少女もいる。
    諦めて笑ってる女もいる。


    彼女たちがいつまでも若々しく見えるのは

    おそらくガラス瓶の口にしっかりと
    コルク栓がはまっているからだろう。
     

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  • 亀 沼

    昔、この沼に一匹の亀がいた。


    沼から出たことのない臆病な亀は
    頭さえ滅多に甲羅から出さなかった。

    蛇が首に巻きついたことがあって以来
    首を伸ばすことができなくなったのだ。


    ほとんど動かないため
    亀の甲羅に苔が生えてきた。

    茸が生え、
    やがて草まで生えてきた。


    緑に覆われ、
    甲羅の下から根が伸び、

    ついには水面に浮かぶようになった。


    そして、そのまま
    風に吹かれて漂うのだった。


    ここが亀沼と呼ばれ、
    浮き島があるのは

    つまり
    そういうわけなのだ。
     

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    • Tome館長

      2012/07/03 23:00

      ケロログ「mirai-happiness☆」舞坂うさもさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/06/25 16:36

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • かまきり

    2008/10/19

    愛しい詩

    夢中になって交尾をしていたら
    彼女に頭を切り落とされてしまった。

    うっかりしていた。

    彼女の両腕は鎌になっていたのだ。


    彼女は落ちた頭を拾い上げ、

    わざと僕に見せつけるように
    眉間にシワを寄せて食べ始める。

    途端に僕は悲しくなる。

    もっとうまそうに食べてくれても
    いいじゃないか。


    僕の頭が泣いている。

    だから彼女が喜んでいる。


    それでも僕は、交尾をやめないのだ。

    やめられない、と言うべきか。
     

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  • 風に吹かれて

    2008/10/18

    楽しい詩

    なにしてるの?

     なんにも 風に吹かれているだけ

    それだけ?

     うん それだけ

    どんな感じ?

     なかなかいい感じだよ

    ふうん

     君 どこから来たの?

    あっちから

     どこへいくの?

    こっちかな

     ねえ

    なあに?

     君ってさ

    うん

     まるで風みたいだよ

    ふうん
     

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    • Tome館長

      2013/01/11 00:12

      「しゃべりたいむ・・・」かおりさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2011/09/29 15:07

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 囲い牛

    2008/10/18

    愛しい詩

    いつの間にか僕は牛になっている。


    好かれている僕がなにもしないから
    彼女を泣かせてしまったという理由で

    クラスの女の子たちが僕を取り囲み
    縫い針を手にして僕の体を刺している。


    チクチクするような痒みを感じるけれど
    それらしい痛みはほとんど感じない。

    他人の痛みどころか自分の痛みさえ
    もう僕は感じなくなっているのだ。

    取り囲む有刺鉄線の柵の杭の一本が
    僕が本当に好きな女の子だったから。


    どのように開放されたか記憶にないが
    おそらく囲いを破って逃げたのだろう。

    以上、情けない囲い牛だった僕の話。
     

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  • 鏡の回廊

    貴婦人が鏡の回廊を渡っておられました。


    鏡の回廊の左右の壁には珍しい鏡が
    いくつもいくつも飾ってありました。

    ある鏡には、上品なドレス姿の貴婦人が
    その麗しき横顔とともに映りました。

    別の鏡には、夢見る表情の貴婦人が
    裸で歩いておられる姿が映りました。

    また別の鏡には、床に跪いた貴婦人が
    背徳の儀式に耽る姿が映るのでした。


    じつに色々な鏡があるのでした。

    美しい少女が映る鏡もありました。
    醜い老婆が映る鏡もありました。

    まったくなにも映らない鏡もありました。


    わずかに傾いた合わせ鏡のように
    どこまでも鏡の回廊は続いているのでした。
     

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    • Tome館長

      2012/06/22 16:09

      ケロログ「mirai-happiness☆」舞坂うさもさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/06/21 20:51

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 怪盗ネチネ

    2008/10/17

    楽しい詩

    海よりも深い夜にあなたの寝室に忍び込み

    トカゲのようにあなたのベッドに近づいて

    あなたの無邪気な寝顔を見下ろしながら

    さてどうしてやろうかやるまいか

    このにくたらしい鼻の頭を削ってやろうか

    このいじらしい耳たぶを切ってやろうか

    あれやこれやと随分悩んだ末に

    毛布からはみ出ていたあなたの尻尾を

    いけないことだとは思いながらも

    ハサミで切り落として持ち去ったのは

    じつはわたくし怪盗ネチネです。
     

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    • Tome館長

      2012/06/23 17:51

      ケロログ「Spring♪」武川鈴子さんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/06/20 19:37

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 海 賊

    2008/10/16

    楽しい詩

    ようこそ 船酔いお嬢さん
    錨を上げたら 水兵さん

    両手もあげてもらおうか


    そうとも そうよ ご覧の通り
    恐れ多くも 俺たちゃ海賊

    片目は義眼 片足ゃ義足

    五つの大陸 六人の女
    七つの海に 八つの災い

    殴って泣かせ 奪って殺す
    海に捨てりゃ 鮫の野郎が喜ぶぜ

    髑髏の旗は 血に飢えて
    よだれ垂らして舌なめずり


    俺たちの羅針盤に 天国はねえ

    面舵いっぱい 進路は地獄よ!
     

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