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2008/10/15
意地悪な砂男は
砂に埋もれて
眠ってしまった
眠れ 眠れ
深く 眠れ
羊たちも眠くって
柵にもたれて
眠ってしまった
眠れ 眠れ
静かに 眠れ
眠り姫も眠くって
夢の中でまた
眠ってしまった
眠れ 眠れ
やすらかに眠れ
2008/10/15
わたしはおもちゃ
遊んでもらうためにつくられた
わたしを使ってたのしんで
なんでもいいの
どうでもいいの
見つめられたらほほえむわ
さわられたら感じちゃう
こわれるくらいはげしくね
よろこんでもらえたらうれしいわ
ねえ 教えて
どんなことするの
あんなことするかしら
こんなこともするかしら
そんなことまでするなんて
でもいいの
なんだっていいの
どうだっていいの
飽きられたら
なんにもできない役立たず
おもちゃ箱の暗い底
ほこりにまみれて泣くばかり
2008/10/14
屁をひらせては並ぶ者のない女がいた。
その音色の妙なること
その香りの芳しきこと
まさに神技とまで称えられた。
全国から挑戦者が跡を絶たなかったが
放つ音の大きさはともかく
調べに趣のないこと甚だしく
香りにおいては比ぶるべくもない。
おなら姫の名で人々に愛でられたが
歌詠みとしても名高く
香るような名歌を数多く残している。
ぺぺぱぽぽ ぱぴぷ ぴぴぱぽ ぷぷぷぷぷ
ぺぽぽぽ ぺぽぽ ぶぴぺぺ ぱほへ
2008/10/14
ほら ここんとこをね
いいかい こうやって
えいって むいちゃうんだ
で こいつをつまんで
ほら みてごらん
どうだい すごいだろ
でも まだまだ
こんなもんじゃないよ
もっと すごいんだから
ううん だいじょうぶ
そんなことないから
しんぱいないって
なんというかな ええと
ちょっと ややこしいんだけど
つまり こつがあってね
ここを こうやって
それから ぐっと こうする
そう おもいっきりね
ほら ここだよ ここ
ここんとこがね
いちばん おいしいとこ
2008/10/13
僕たちは そういうふうにできている
君ときたら あんなだし
僕にしても こんなだし
僕たちは そうなるようになっている
2008/10/13
さりげなく空は晴れていた。
それらしい校舎の前にはグラウンドがあり、
運動着姿の少年少女たちがいる。
運動会であることを疑う理由はない。
「みんな呼んでる。早く行こう」
ひとりの少年が走り出した。
それを同級生たちが追いかけてゆく。
ひとりぼっちになっていた。
ひとり遅れてグラウンドの土を踏む。
グラウンドの両サイドには人垣があった。
こちら側は赤い帽子を全員かぶっている。
おそらく赤組という集団であろう。
向こう側の白っぽい人垣は白組に違いない。
赤組のすぐ近くの芝生に腰をおろす。
ブルマー姿の少女たちが立っている。
見覚えのある少女が話しかけてきた。
「いままでどこにいたの?」
そういえば、どこにいたのだろう。
「さあ、思い出せない」
少女は呆れて、少女らしい呆れ顔をする。
まわりの少女たちも寄ってきた。
「どうしたの?」
「こいつ、おかしいんだよ」
「あら、もともとじゃない」
「ひどい。それって」
少女たちは笑う。
みんなとてもかわいいな、と思う。
でも、一番好きな少女の姿はない。
あの子は白組にいるのかもしれない。
もっとも彼女は話しかけてくれない。
こちらからも話しかけたりしない。
黙って芝生に寝転ぶ。
空を見上げれば、白い雲が浮いている。
そのまま目を閉じる。
まぶたの裏側は、燃えてるみたいに赤い。
子どもたちの声援が、随分と遠くに聞こえる。
このままではいけないような気がする。
こんなに運動しない運動会なんて。
2008/10/13
僕は彼女が好きだったけど
彼女が僕に好意があるとは思えなかった。
彼女に告白する勇気のなかった僕は
僕が彼女を好きだという噂を流したんだ。
火のないところに煙は立たないというけど
煙が立ってから火がつくことだってある。
僕が彼女を好きだという噂を聞いて
彼女が僕を好きになるかもしれないのだ。
ところが、その噂がみんなにひろがった頃、
僕は彼女なんか好きでなくなっていた。
せっかく芽が出てきたというのに
その草に僕は水をやらなかったわけだ。
しっかり根も葉もある噂だったけど
花も実もつけることなく枯れてしまった。
2008/10/12
はるか遠い昔、
海と陸とが戦争をした。
いつか海は断たれ、
陸は割れてしまった。
海の捕虜は湖になり、
陸の捕虜は島になった。
はるか遠い昔、
海と陸とが戦争をした。
いまでも海岸線では
小競り合いがあるという。
2008/10/12
帰ッテオイデ
甘く囁く
潮騒
帰ッテオイデ
悩ましく手招く
白い波
帰ッテオイデ
閉じた瞳の
水平線
2008/10/11
このまま生き続けてゆくと
くだらないことやつまらないこと
いやらしいことやみじめなこと
そのほかどうでもいいような
やりたくもないことをどうしても
やらなければならなくなる。
それはもう
はっきり決まってる。
でも、
まあそういうのは
おいおい慣れてしまえば
なんでもないことなのであって
なかなか楽しいこととや
いいことだってあるわけだから
そんなに気にすることはない。
気にすることはないのだ。
そう思う。
そう。
たしかに
気にすることなんかない。
たしかに
そう思う。
そう思うんだけど
それはまあ
そうなんだけど
うまく言えないんだけど
そういうのは
なんというかな
とにかく
いやだ!