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2008/11/19
ハネなしチョウの墓を
たくさん見つけた
それは鼻なしゾウの
たくさんの足跡
ハネなしチョウの群を
鼻なしゾウが踏んだ
その足跡が
ハネなしチョウの
墓標なのだ
ただそれだけなんだけど
なんとなく笑ってしまう
ハネがないのにチョウだなんて
鼻がないのにゾウだなんて
2008/11/18
僕がどうしようもない缶詰だった頃
君はピッカピカの缶切りだった
僕の汚れたブリキの蓋を開けたから
銀色の君の刃先が汚れてしまったね
その君の刃先の汚れを取ろうとして
拭った僕の手がまた汚れていたっけ
結局のところ 僕は僕を見失い
あれから救いようのない空缶さ
今頃 君はどうしているだろう
僕の腐った中身を食べてしまって
2008/11/17
牛よ 牛
牧場の牛よ
おまえの脇腹の模様は
あの空の雲そっくりだ
遠く厩舎を離れ
その小さな目で
なにを見るのか
おまえが飲み込んだ草は
おまえの胃と口との間を
なん度も往復するだろう
だから 牛よ
牧場の中の牛よ
あの錆びた有刺鉄線の柵は
おまえの地平線なのだ
反芻の日々
繰り返しの日々
そこから日は昇り
そこへと日は沈む
2008/11/16
傷口を舐めてあげる
ほら まだ血がにじんでる
あんた 野鼠みたいに怯えてる
あたしのこと なんにも知らない
傷口を塞いであげる
こんなの 使い捨ての唇
傷は浅い 舌の先が底まで届く
あんたのこと なんにも知らない
傷口を開いてみようか
なんだか苛めてみたくなる
この痛み ずっと忘れないでね
あたしたちのこと 誰も知らない
2008/11/16
あなたがたによくよく言っておく。
どのような窮地に陥ったとしても
あなたがたは神をあてにしてはならない。
なぜなら、あなたがたを救えるのは
あなたがたでしかないからである。
つねに神はあなたがたとともにあり
あなたがたが生きているということが
そのなによりのあかしである。
そのようなあなたがたによって
あなたがたが救えないとすれば
ともにある神によってもまた
あなたがたは救えないのである。
2008/11/15
家の近くの 森の奥に
ピンクのフクロウがいる
奇妙なことに
その肩の上で
ピンクの丸い顔が
ころころ 転がる
普通のフクロウは ともかく
ピンクのフクロウは いつも
「今晩は」
と 静かになく
2008/11/15
芹
なずな、
御形
はこべら
仏の座。
すずな
すずしろ、
春や来い。
2008/11/14
ここに どうして あんたが 夢を
重ねて ゆくわけ ゆかないわけ で
なんだって お好み次第 きゃはは う
手に手を とって 足に足 とって
彼女と 彼は あんたと あたし
カナリヤ 鳴くから 見て 見てってば
意味が ないと 明日も ナイト
一晩中 わかって ないの もう朝か
恋も なくなく あんたもう 眠ってる
2008/11/14
狭い檻の中にたくさんの鼠がいる。
動かないのも動きまわっているのもいる。
動かない鼠は檻の隅に丸まり、
自分自身の前脚を齧っている。
出血はない。
すでに前脚は死んでいる。
この檻の中には、逃げる場所がない。
檻の隅で逃げたつもりになるしかないが
動きまわる鼠に尻を齧られることになる。
それでも隅の鼠は動こうとしない。
動きまわる鼠は暴れるだけ暴れ、
齧る、引っ掻く、引きずりまわす。
わけもなく暴れずにいられないのだ。
狭い檻の中でうごめく無数の鼠の群。
尻尾の千切れてない鼠は一匹もいない。
2008/11/13
そこは不思議なところです。
柔らかな白い絹のような地面が
どこまでも果てしなく広がっていて
しかも その上のいたるところに
うつ伏せになったり 仰向けになったり、
ドレスを着たり ほとんど裸だったり、
いろいろな様子をした女の子たちが
おもいおもいに眠っているのです。
下手に歩いたりしたら
さざ波のように地面が揺れて
彼女たちを起こしてしまいそうな気がして
そこから一歩も動くことができません。
途方に暮れて 私も地面に横たわり、
すぐ目の前の女の子の寝顔を見ながら
一緒に眠ってしまいました。