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2011/04/15
宝物のように
大切にしていても
壊れてしまったら
もう使えない
たとえ見た目は
修復できても
心の棚には
もう飾れない
2011/04/07
うららかな春の
朝早く、
裏庭の小池に
気づかれないように
そっと近寄り、
さっと水面を
めくってみましたら、
すっと消えてしまいそうに
ささやかな
淡く切ない水の物語が
しっとり濡れて
にじんだ文字で
ひっそり書かれてありました。
それをこっそり
読んでしまった私です。
だから泣いているのです。
2011/04/03
普段おとなしい人が怒ると怖い、という。
怒り慣れてないくせに
我慢の限界を超えて無理に怒るものだから
つい羽目をはずしてしまうのだろう。
うちのお父さんが怒った時は
ひとりで黙って家を出て
かなり遠くにある川原まで行って
大きな石ころをいくつも拾ってきて
それを転がしも放り投げもせず
私の部屋の床にそっと並べるように置いて
裏返った声の変なアクセントで私に言ったのだ。
「おまえ、いい加減にしろよ」
うん。確かに怖いものはあった。
2011/04/02
ある日、学校からの帰り道が大きく曲がって
お花畑の中を通り抜けるみたいになっていた。
「わあ。これじゃ、まるで遠足だね」
タカちゃんが嬉しそうに言った。
「でも、家に帰れるのかな」
トシちゃんは心配そうに言った。
「だって、他に道はないもん」
わたしは普通に言った。
それから、みんなでワイワイおしゃべりしながら歩いた。
途中、変なおじさんが声かけてきたけど
「あっ、変なおじさんだ!」
って、タカちゃんが叫んだら、逃げちゃった。
本当に変なおじさん。
きれいな色違いの花があたり一面いっぱい咲いていて
帰り道がいつもよりずっと楽しかった。
そして、とても不思議なんだけど
みんなでふざけているうちに、気がついたら
わたしの家の前までついていた。
「みなさん、おうちにつくまでが遠足です。
気をつけて帰りましょう」
校長先生がおっしゃっていたのはこのことだったんだな
と私は思った。
なにを気をつけなければいけないのか
まだよくわかんないんだけどね。
2011/03/28
火の鳥
私は不死鳥
いやでも死ねない
生きてゆくしかない
いろんなことがあったけど
いろんなことがあろうけれど
いつまでも終わりがないのなら
いっそ始めなければ良かったのに
そう思うのです
2011/03/26
助けてもらえる
と思わずに
赤子のように
甘えずに
嫌われたら
近寄らず
危ういなら
逃げるのみ
助けられたら
拝むとも
助けられずに
恨むなかれ
2011/03/25
箱の中の姫君は
お外のことがわからない
なにを見ても
箱の中
なにを聞いても
箱の中
箱の中とは
つゆ知らず
お外があるとも
知らないで
歌ってみたり
遊んでみたり
2011/03/23
生きる為に殺すやら
殺す為に生きるやら
戦火の村を逃れても
飢えと乾きは憑いて来る
生きる為に悩むやら
悩む為に生きるやら
戦火の村に戻れども
父も母も戻らない
2011/03/22
痛くても
歩きたいから
歩くだけ
歩きたく
なくなったら
海に帰るだけ
王子様とか
どうでもいいの
忘れちゃえ
2011/03/19
きれいは 汚くて
汚いは きれい
やさしさは きびしくて
きびしさは やさしい
美しいのに 醜くて
醜くても 美しい
そういうふうに
見えるから 見えなくて
見えないから 見えてくる