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2011/06/05
おれは偽りのクリスチャン。
ここはパイプオルガン鳴り響く教会。
おれは深く頭を垂れ、
神に祈りを捧げるふりをしていた。
やがて沈黙が訪れ、
続いて声がした。
「不信心者よ。わたしを見よ」
見ると、それは神であった。
その姿の他はすべて闇であった。
「時の流れを止めた。ここには音も光も届かぬ」
「はあ」
「わたしはこれより最後の審判を下す」
「さようですか」
「しかし、おまえたちに最後のチャンスも与えよう」
「それは結構なことです」
「おまえ、最後の審判を下しなさい」
「意味がわからないのですが」
「おまえたちのひとりであるおまえに
おまえたちをまかせたのだ」
「なぜまたそんなことを」
「わたしが審判を下せばおまえたちは消える。
だから、せめてもの最後のチャンスなのだ」
「そういうことでしたら・・・・・・」
おれはつぶやいた。
「神はいない」
すると、世界はステンドグラスの光と
パイプオルガンの音で満たされた。
おれは深く頭を垂れ、
神に祈りを捧げるふりを
いつまでも続けた。
2011/06/04
もしも夏に
雪が降ったなら
それはきっと
涼しかろ
だけど雪は
夏に降っても
きっとすぐに
消えるだろ
夏に降る雪
きのふれた雪
2011/06/02
降る雨に
あわてて逃げ込む
軒下あれど
ふられる恋に
あたたかく迎える
胸はなし
2011/05/31
ようこそ。
いらっしゃいませ。
おひさしぶりです。
おかわりありませんか。
お元気そうでなによりです。
ええ、そうです。
あいかわらずの毎日です。
えっ、なんですか?
なにをおっしゃってるんですか?
まさか、ご冗談を。
嘘ですよ、そんなこと。
えっ、そうなんですか?
本当ですか?
まあ、信じられない。
だって、そんなこと。
でも、そうかしら。
ああ、そうか。
そういえば。
そうだ。
そうなんだ。
私、死んだんだ。
亡くなっちゃったんだ。
やっと思い出した。
ああ。
なんてこと。
そうそう。
そうでした。
まったく失礼しました。
すっかり忘れておりました。
私、それはもう、ひどい死に方でしたものね。
あれはないですよね。
許せないですよね。
その節はホント、すみませんでした。
びっくりなさったでしょ?
そうでしょうとも、そうでしょうとも。
いえいえ、そんなこと。
滅相もない。
とんでもない。
とんでもありません。
とんでもございません。
こちらこそ、許してください。
怖がらせてしまって、すみません。
ホント、恐縮いたします。
どうか、うらまないでくださいね。
以後、気をつけますから。
もう二度と出ませんから。
すみませんでした。
本当に申しわけありません。
それでは、この辺で失礼いたします。
ええ、結構です。
全然かまいません。
では、さようなら。
ごきげんよう。
またあした。
2011/05/29
小さなトトカ湾に巨大な氷山が漂着した。
それはまるで白い帆船のように見えた。
海面下の大きさが想像された。
「かまうな。そのうちとける」
それが村人たちの意見だった。
航行には邪魔だが別に問題なかろう。
「ちょっと待ってください」
若い彫刻家が反論する。
「あそこには氷の女神が埋まっています。
あなたがたには見えないのですか?」
残念ながら村人たちには見えなかった。
それでも若者は諦めない。
「急いで女神を救い出しましょう!」
村人たちは相手にしない。
仕方ないので若者は
たったひとりで氷山を彫り始めた。
「まあいいか。それほど迷惑でもないし」
村人たちは傍観することにした。
朝から槌の音が絶えなかった。
かなり深い部分に埋まっているのだろう。
なかなか氷の女神は現れなかった。
いく日もいく日もいく日も
槌音が休みなくトトカ湾に響いた。
氷山はだんだん小さくなっていった。
ある朝、
ついに氷の女神が現れた。
それはそれは美しい姿であった。
神々しいまなざし。
豊かなほほえみ。
若い彫刻家は正しかったのだ。
嬉しさのあまり
若者は泣いてしまった。
だが、それは一瞬なのだった。
暖かな朝の光を浴び、
美しい氷の女神はとけてしまった。
やがて村人たちが家々から出てきた。
あくびをしながら苦笑する。
「結局、みんなとけちゃったな」
村人たちの意見も正しかったのだ。
若者はすっかり疲れ果て
いまにも溺れそうだ。
2011/05/28
びっくり箱
フタが開かずに
底が抜け
びっくりしたのは
びっくり箱の作り人
恥ずかしくって
死んじゃった
これには
みんな
びっくりだ!
2011/05/27
我が心
君が眼に射抜かれて
我が心
君が想いに囚われし
我が心
君が嘆きに跪き
我が心
君が願いに捧げなむ
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2011/05/21
さびしくなんかない
ちょっとつまんないだけ
さびしくなんかない
ちょっとかなしいだけ
さびしくなんかない
ちょっとやりきれないだけ
2011/05/20
けだるき目覚めのそこもとに
漂う倦怠 朽ちたる流木
Son of a bitch !
いずくんぞ知らん
凪たる海原 そよの風もなく
茫漠の砂に埋もれし 貝の殻
割れても嘆く ヤドカリも見えず
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2011/05/18
アタシ
お花畑で死にたいな
ダッテ
生きてるうちに
マルデ
天国にいるみたいに
キット
感じられるはずだから