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  • 寝物語

    2011/08/10

    怖い話

    うん、一緒に寝ようよ。

    ううん、なんでもないんだ。
    ただ寝ながら話をしたいだけなんだ。

    ひとりで寝るのが怖いわけじゃないよ。

    小さい頃はそういうこともあったけどね。
    もう平気さ。子どもじゃないんだから。

    まあ、あんまり大人でもないけどね。

    返事したくなければ黙ってていいよ。
    眠くなったら眠ってかまわないからね。

    そう、いい子だね。


    昔、ある国にね、王様とお姫様がいたんだ。

    王様は立派な人で、お姫様は美しかった。
    少なくとも国民はそう信じていた。

    でも本当は違っていたんだ。

    王様はじつにくだらない人物で、
    お姫様はじつに醜い女の子だった。

    王様もお姫様も国民を騙していたんだね。

    で、ある日のこと。
    お姫様を見て、王様がしゃっくりをした。

    化粧をしてなかったんだね、お姫様。

    王様のしゃっくりが止まらないので、
    お姫様は笑い出してしまった。

    醜い顔がますます醜くなって、
    そのままいつまでも笑い続けた。

    しゃっくりをしながらも王様は怒ったね。
    そして、お姫様を殺してしまったんだ。

    やっと笑い声もしゃっくりも止まった。

    まったくとんでもないことだよね。
    国民が黙っているはずがない。

    だけど、王様はまたもや国民を騙したんだ。

    お姫様は生きている。
    死んではいない。

    ただ眠っているだけなんだ、と。

    なるほど、お姫様は眠っているみたいだ。
    王様と一緒に眠っている。

    まるで死んだように・・・・・・


    おや、もう眠ってしまったのかい。

    ねえ、お姫様。
     

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  • 恋の痛み

    2011/08/09

    ひどい話

    ニッコリ笑って
    彼女が僕の胸を刺した。

    まさに悩殺的。
    切っ先が心臓まで届いた。


    「な、なぜ?」
    「何故って聞くの?」

    僕は必死にうなずく。


    「恋はね」
    彼女、ナイフをねじりながら

    「殺すか、殺されるかよ」


    ・・・・し、知らなかった。
     

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  • ネズミ少女

    2011/08/08

    愉快な話

     
    とても信じてもらえないだろうけど、
    僕の妹はネズミに育てられたネズミ少女だ。


    生まれてすぐ、妹はネズミにさらわれたのだ。

    屋根裏に運ばれて、そこで大きくなった。
    ちょうど僕の部屋の真上あたり。

    そんなこと、僕、全然知らなかった。
    大きなネズミがいるんだとばかり思ってた。


    それは、ある朝のことだった。
    ネズミ捕りに少女が挟まっていたのだ。

    「チュー、チュー、チュー!」

    ネズミそっくりの声で鳴くのだった。


    父も母も、僕の妹に違いないと断言した。
    なぜなら少女の顔が僕の顔にそっくりだったから。

    「おまえ、僕の妹なんだってさ」
    「チュー」

    やはり人間の言葉は話せないのだった。


    妹に服を着せておくだけでも大変だった。
    無理に着せても、すぐに破ってしまうから。

    ネズミ色の服なら、どうにか我慢してくれたけど。


    なんでもかじる癖を直すのも苦労した。
    家族全員、生傷だらけになったものだ。

    立って歩かせるのにも時間がかかった。
    食べ物を天井から吊り下げたりしたっけ。


    でも、妹は確実に人間らしくなってきている。
    少しずつだけど、でも本当に嬉しい。


    最近、髪飾りなんかするようになった。

    「なんか、女の子らしくなってきたよ」
    「チュウ?」

    まだ猫を見ると逃げ出してしまうけど。


    おや、その妹がやってきた。
    人間らしく微笑んでる。

    おやすみのキスの時間だ。

    「チュッ!」


    まだちょっと、ドキドキする。
     

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  • 恋人の溜息

     
    エレクトロニクスの進歩はすさまじい。

    なんと最新式の電子秤は
    微妙な感情の重さまで量れるという。


    「おれたち、別れる時期を逃しちゃったな」

    いやがるようなことばかり言って、
    恋人から溜息を吐き出させることに成功した。


    出たばかりのそれを
    さっと専用のポリ袋に入れて、

    その口をくるっと結ぶ。


    そして、そのまま

    その恋人の溜息なるものを
    電子秤にかけてみた。


    表示は「35.7g」



    う〜ん、微妙。
     

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  • 花火と少女

    2011/08/04

    愛しい詩

    夜空に咲く花火
     それを見上げる少女

       どっちを見てるの?
        どっちも見てるの

          花火と少女
           儚はかなくも 美しく
     

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  • 君の顔

    2011/08/03

    愛しい詩

    空に浮かぶ雲の形が
    君の横顔に見える。

    部屋の壁紙の汚れも
    君の顔に見える。


    末期症状だね。


    そのうち他人の顔が
    君の顔に見えて、

    その人を君と思い込んで
    好きになったりするのかな。


    いつまでも
    気づかないふりをして・・・・・・
     

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    • Tome館長

      2011/08/03 12:25

      「こえ部」で朗読していただきました!
      なお、最後の一行は「こえ部」nanatsukiさんのアドリブです。

  • 懺 悔

    2011/08/02

    暗い詩

    懺悔します。
    私は人殺しです。


    この手を直接くだしてはおりません。
    けれど結果として、同じことです。

    ひとり私が生きるため、
    多くの命を奪わねばなりませんでした。

    飢えず、苦しまず、快適に過ごすため、
    これまで多くの犠牲が捧げられたはずです。

    それらは、ひとり私のためだけではないでしょう。
    多くの私と同様な人々のためでありましょう。

    おそらく、それは仕方ないこと。
    いくら探しても、他の選択肢はなかったのでしょう。

    しかし、事実は事実です。
    数の多少、濃度の差異ではありません。

    いくら着飾っても、罪人は罪人です。
    後ろめたくて当然です。


    それだけです。
    私の懺悔は以上です。

    お城の中の汚れを知らないお姫様、
    そんな役を続ける気には、とてもなれません。
     

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  • 狼なんか怖くない

    2011/08/01

    ひどい話

    狼なんか怖くない。

      だって、

        狼なんか
         見たことない。


    幽霊なんか怖くない。

      だって、

        幽霊なんか
         おどかすだけ。


    もっと怖いの知ってるよ。

      ほらね、

        人間の方が
         よっぽど怖い。
     

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  • 鉈(なた)

    2011/07/30

    怖い話

    狭い通路だった。

    両側は頑丈な石の壁。
    人ひとりがやっと通れる幅しかなかった。

    俺の前には人の列が延びている。
    この列は俺の後ろにも延びている。


    後ろにいる者から背中を押される。
    そのため、前にいる者の背中を押してしまう。

    前にいる押された者が、さらに
    その前にいる者の背中を押してしまう。

    これを繰り返して、列は前進するのだ。


    キラキラ光る何かが前方に見えてきた。
    俺は背が高いから、頭越しに見えるのだ。

    通路の先、男がこちら向きに立っていた。

    そいつは鉈を振り上げては次々と
    列の先頭にいる者の首を切っていた。

    天井の照明が、鉈の刃に反射して光るのだ。


    首を切られたものは倒れ、姿を消す。
    すると、通路の列が一歩だけ前進する。

    (どういうことなのだ?
     なぜこいつらは抵抗しないのだ?)


    なにがなんだかわからないまま列は進み、
    とうとう俺は先頭に立つことになった。

    だが、首を切られてはたまらない。

    俺は向かい合った男の手から鉈を奪い、
    それで男の首を切り落とした。


    首をはねられた男は、倒れて姿を消した。

    そこで通路は行き止まりになっていた。
    両側と同じような頑丈な壁だ。


    背後から加えられる力で、俺は
    その行き止まりの壁に押し付けられる。

    ものすごい圧力。
    苦しい。

    このままでは死んでしまう。

    俺は必死にからだをねじる。
    からだの向きを変え、列と対峙する。


    列の先頭の顔が迫ってきた。
    向かい合った俺の胸と腹を押してくる。

    通路の列はどこまでも続いて見える。

    この狭い通路のどこにも逃げ場はない・・・・・・


    叫びながら、俺は鉈を振り上げた。
     

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  • 落とし穴

    2011/07/29

    怖い話

    腰が痛む。
    腕も疲れてきた。

    随分と深く掘ったものだ。
    見上げると、空が丸く小さく見える。


    いやいや。
    まだまだ浅い浅い。

    あの憎い奴を陥れるための穴なのだから。
    穴の深さは、怨みの深さ。

    「待ってろよ。地獄に落としてやる!」

    満身の力を込めてスコップを土に刺した。


    すると、足場が消えた。
    土の底が抜けたのだ。

    ぽっかり開いた穴に落ちてしまった。

    痛いの痛くないの。
    死ぬかと思った。


    「おやおや。また亡者が落ちてきたぞ」

    地の底から唸るような声がした。
    恐ろしい声だった。

    汗が冷え、寒気がしてきた。


    あたりは、この世と思えぬほど真っ暗で、
    まるで地獄にいるような気がしてくるのだった。
     

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