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  • 戦いは終わった

    2011/09/08

    空しい詩

    戦いは終わった
                勝者はいない


    戦いは終わった
                敗者ばかり


    戦いは終わった
                それを悲しむ者はいない


    戦いは終わった
                それを喜ぶ者もいない


    戦いは終わった
                安堵の声さえ聞こえない


    戦いは終わった
                ただ吹く風ばかり
     

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  • 大切なもの

    それがなんであるか
    説明するのは難しいのだけれど、

    ともかく、

    そのとても大切なものを
    僕はあやまって壊してしまった。


    そのため僕はまるで
    死んでいるみたいな気分になり、

    その粉々になってしまった
    大切なもののかけらを集めたり

    せっかく集めたそれらを
    結局あきらめて投げ捨てたりして、

    そんなふうに
    なんにもならない時間を

    波打ちぎわの波みたいに
    まったく意味もなく無駄に過ごしてしまった。


    こんなことではいけない。

    壊れてしまった大切なものにかわる
    なにかもっと大切なものを

    僕は見つけなければいけない。


    そんな気がするのだ。

    そして、そのためどこか遠くへ
    旅に出かけなければならない気もする。


    でも、

    そんなものがどこにあるのか、

    また、そんなものが
    本当にどこかにあるというのか、

    そういう大切なことさえ
    さっぱりわからないままなのではあるけれど。
     

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    • Tome館長

      2014/06/11 03:24

      「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2011/09/11 00:12

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 僕の彼女

    2011/09/05

    切ない話

     
    僕が彼女と一緒に帰宅すると、
    家にはすでに彼女がいた。

    家にいる彼女を見つめる。
    どう考えても僕の彼女だ。

    すぐ横にいる彼女を見つめる。
    まぎれもなく僕の彼女だ。

     
    「この女は誰?」
    やはり彼女は問い詰める。

    嘘をついてもしかたない。
    「僕の彼女だよ」

    「この女は誰?」
    やはり彼女も問い詰める。

    嘘をついてもしかたない。
    「僕の彼女だよ」

    彼女と彼女が見つめ合う。

    とりあえず僕は家に入る。

     
    死ぬほど喉が渇いていた。
    冷蔵庫から瓶ビールを出す。

    ビールをグラスに注ぐと、
    彼女が駆け足でやってきた。

    ビール入りグラスを奪うと、
    窓から裏庭に投げ捨てた。

    もったいないとは思うが、
    文句を言える立場ではない。

     
    「もう許せない!」
    彼女は僕の腕を引っ張る。

    「もう許せない!」
    彼女も僕の腕を引っ張る。

    痛い。信じられない力。
    「やめろ! 僕の彼女なら」
     

    僕は彼女と彼女に引っ張られ、
    僕と僕とに裂けてしまった。
     

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  • 廃人回収車

    2011/09/03

    怖い話

     
    毎度お騒がせいたしております。
    こちらは廃人回収車のコエブ商会です。


    ご家庭でご不用となりました痴呆老人、
    処分にお困りの長期ヒキコモリ、
    手の付けられない腐女子など

    どんな廃人でも無料でお引取りいたします。


    もう動かなくなった死人、
    壊れたケガ人、
    病気がうつるかもしれない病人など

    どんな症状でも構いません。

    お気軽にお声をおかけください。


    こちらは廃人回収車です。
    クルマはゆっくりゆっくり移動しております。


    ご家庭でいらなくなった廃人はおりませんか。

    ネトゲ廃人、
    自称宇宙人、

    近所迷惑なロリコン息子、
    世間に顔向けできないコスプレ娘、

    働きもしない飲んだくれ暴力亭主、
    パチンコ中毒なカラオケ大好き夜遊び奥さん、

    などなど、
    どうにも手に負えない重い廃人でも大丈夫です。

    力自慢の運転手が力ずくで運び去りますので
    ご安心ください。


    なお、
    危険思想の持ち主や組関係者の方などは
    有料になる場合がございます。

    その他、ご不明な点がございましたら
    どうぞお気軽に運転手までご相談ください。


    毎度お騒がせいたしております。
    こちらは廃人回収車のコエブ商会です。
     

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  • 鞭の音

    2011/08/30

    変な詩

    ああ 鞭のくれ方 わかんない
     猛獣使いじゃ ないんだもん

       だから おじさん 吠えないで


    バシッ! バシッ! バシッ!
     ほらほら こんなに ミミズ腫れ

    ビシッ! ビシッ! ビシッ!
     まあまあ どんどん 血が出るわ

    ブシッ! ブシッ! ブシッ!
     あらあら 骨まで 見えてきた

    ベシッ! ベシッ! ベシッ!
     あれあれ とんでも ないことに

    ボシッ! ボシッ! ボシッ!
     うわうわ なんだか わかんない


    ああ 鞭の音が たまんない
     猛獣だったら 怖いけど

       だから おじさん 吠えないで
     

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  • 撃つぞ

    2011/08/29

    愉快な話

    おい、待て。止まれ。こら、逃げたら撃つぞ。
    よしよし、動くなよ。死に急ぐことはない。

    何者だ、おまえは。ふん、言いたくないのか。
    その自信はどこから来る。ここか。ここか。

    まだ言いたくないか。そらそら、これでもか。
    ほほう、たいしたもんだ。ちょっと見直したよ。

    まあいい。何者でも関係ない。とにかくだ。
    おまえ、何をしていたんだ。こんなところで。

    いいか。ここには黙秘権なんかないからな。
    なにを教わってきたか知らないが、忘れろ。

    ほれ、どうだ。喋りたくなってきたろうが。
    やれやれ、なんて奴だ。まったく、疲れるよ。

    しかたない。面倒臭いから撃ち殺してやる。
    いまさら命乞いなんかしても、手遅れだぞ。

    恨むなよ。おまえが逃げようとするからだ。
    ちょっと道を尋ねようとして、悪かったな。
     

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    • Tome館長

      2014/08/24 05:50

      「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2012/12/29 02:41

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 夜の三つ編み

    2011/08/27

    暗い詩

    真夜中に
    女が髪を編んでいる


      憂鬱と軽蔑と恥じらいと
      憂鬱と軽蔑と恥じらいと
      憂鬱と軽蔑と恥じらいと


    夜の三つ編み
    ほどけない

    ほどけない
    夜の三つ編み
     

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  • 夜の隙間

    夜が始まって夜が終わるまでのどこかで
    彼女は跡形もなく消えてしまった。

    すうっと音もなく切り開いた夜の隙間から
    するりと音もなく抜け出たかのように。


    「逃げたのではなく、隣の部屋に移動しただけ」

    そう言わんばかりの鮮やかな手口。
    彼女に見えて僕には見えない出口。


    酔いたくなる夜にふと探してしまうけど、
    見つからないことはとうにわかっている。

    わかっていてもやめられない。


    そんな夜だってあるさ。
     

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  • 糸電話

    「もしもし、きこえますか?」
    「もしもし、きこえますよ」

    幼い兄弟が糸電話で遊んでいる。

    「いま、なにしてますか?」
    「でんわでおしゃべりしてます」

    「それはえらいですね」
    「どういたしまして」

    たわいない会話である。

    「そちらはどこにいますか?」
    「こちらはここにいます」

    「こちらもここにいますよ」
    「それはえらいですね」

    「奥さん。旦那には内緒だぜ」

    「なんですか、これは?」
    「なんですかね、これは?」

    「へんなこえでしたね」
    「いやらしいこえでしたね」

    「たぶん、こんせんですね」
    「それはえらいですね」
     

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    • Tome館長

      2014/06/14 02:05

      「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2011/12/19 16:38

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • あべこべの世界

    2011/08/24

    変な話

    あべこべの世界、なかなか簡単ではない。


    「愛しているから、あなたを抱けないの」
    突然、恋人があべこべの人になった。

    「でも、抱きたいの。だから、殺すの」
    そんなふうに説明されても理解できない。

    死にたくないので彼女から逃げた。
    拾った石を手に彼女が追いかけてきた。

    「逃げるから追いたくなるのよ」
    彼女が叫ぶ。

    痛い。
    肩に石が当たった。

    彼女は正しい。
    立ち止まるしかない。

    彼女は追いつき、そのまま追い越す。

    さらに走り続ける。
    小さくなる後姿。

    やがて、はるか前方の壁にぶつかった。

    痛々しい音がした。
    恋人は倒れるはず。

    ところが、倒れたのは壁の方だった。


    あべこべの世界、なかなか簡単ではない。
     

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