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  • 殺し文句

    2012/07/06

    愉快な話

    ものすごい殺し文句を発明した。
    こいつにまいらぬ女はいない。

    相手が女なら
    誰でもイチコロ。

    どんな純真な少女であろうと
    どんな貞節な人妻であろうと

    一発でメロメロ。


    いくら美しくても耐えられない。
    いくら賢くても抵抗できない。

    女子高生、女子大生、OL、教師、
    幼女、熟女、より取り見どり。

    近親者だろうが関係なし。


    どんな醜い男が使っても大丈夫。

    臭かろうが
    貧乏であろうが
    センスがなかろうが

    まったく問題なし。


    それは、この俺が保証する。


    もてなかった俺。
    自殺未遂までした俺。

    まさに男の最底辺に属するこの俺が

    まさに死ぬほど苦労して
    考えに考えに考えぬいた末の

    必殺の殺し文句!


    完全にして完璧。

    こいつから逃れられる女など
    この世にいない。


    男なら知りたいだろう。
    ぜひ使ってみたいだろう。

    そうだろう、そうだろう。


    ふふふ。

    ふふふふふふ。


    絶対に教えてやるもんか!
     

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  • 怖い話

    2012/07/05

    怖い話

    怖い話だ。
    おそろしく怖い話だ。

    聞かなければ良かった
    と後悔するくらい怖い話だ。

    しかし、死ぬほど怖い話ではない。
    死ねないほど怖い話だ。

    つまり死にたくても死ねないのだ。


    たとえば、痛み。
    虫歯の痛みを思い出していただきたい。

    痛い。
    とにかく痛い。

    時が立つほど痛くなる。
    もう気絶するくらい痛い。

    ところが、まだ気絶しない。
    ますます痛くなる。

    もう死ぬほど痛い。
    死んだほうが楽なくらい。

    ところが、まだ死なない。

    もっともっと痛くなる。

    信じられないくらい痛い。
    もう表現できないくらい痛い。

    ところが、まだまだ死ねない。
    さらにさらに痛くなる。

    どこまでもどこまでも痛くなる。
    なのに、いつまでもいつまでも死ねない。

    死にたくても死ねない。
    終わりなどない。

    つまり、無限に痛くなり続ける痛みなのだ。


    しかも、痛みだけではないぞ。

    かゆみ、苦さ、臭さ、吐き気、疲れ、息苦しさ、
    悲しみ、空しさ、いやらしさ、不安、恐怖、絶望・・・・・・

    ありとあらゆる不快な感覚や感情が
    どこまでも悪化してゆく。


    やはり終わりがない。
    死にたくても死ねない。

    ますます不快になるばかり。
    無限に不快になり続けるばかり。

    まったくどこにも
    わずかな救いすらないまま・・・・・・


    どうだ。
    不快だろう。

    しかし、ここまで聞いたら
    もう逃げられないぞ。

    覚悟するんだな。


    これから、おまえに
    死に至らぬ病、

    その不快極まりない不快が始まる。
     

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  • 最低の殺し屋

    2012/07/04

    ひどい話

    われながら最低の殺し屋だと思う。

    まともな殺し方ができないのだ。

    拳銃で撃ち殺す自信などない。
    刃物で殺すのは難しすぎる。

    毒薬なんか怖くて持ち歩けない。
    格闘なんか冗談じゃない。


    それでも殺し屋をやっている。


    直接やらずに間接的にやるのだ。

    まず、依頼されたターゲットを綿密に調査。
    次に分析。そして、計画。

    それから実行に移す。


    ターゲットが幸福だったら不幸にする。
    不幸なら、もっと不幸にする。

    たとえば、
    恋愛中なら破局へ導く。

    野心があれば挫折させる。
    夢があれば現実を教えてやる。

    地位も家庭も人格も崩壊させる。
    いわゆる、社会的な抹殺。

    わずかに残った希望さえ奪ってしまう。
    つまり、絶望させるのだ。


    やがて、ターゲットは自殺してしまう。


    手間は掛かるが、安全で確実だ。

    それに、なぜか依頼主が喜ぶ。
     

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  • 催眠術

    まず、力を抜いて。
    そう、身も心も楽にして。

    さあ、私の目を見なさい
    両目で両目を見るようにして。

    恥ずかしがらず、物を見るような目で。

    少しずつ近寄りますよ。
    私の目が大きく見えてきますよ。

    そのうち境界があいまいになり、
    ふたつの目がひとつになりますよ。

    あなたは眠くなるはずです。
    ほら、あなたはだんだん眠くなる。

    まぶたが重く、重くなる。

    ほら、もう目を開けていられない。
    目を閉じてもかまいませんよ。

    どうぞ目を閉じてください。
    あなたは我慢する必要ありません。

    おやおや。
    ゆっくり頭が前後に揺れていますね。

    いいリズムです。
    それは、あなたが望むリズムです。

    あなたは、あなたです。
    あなたの望むようにすればいい。

    落ちたければ、どうぞ落ちなさい。

    楽な世界へ、楽な世界へ。
    下へ下へ、深く深く、どこまでも。

    私の声が遠くから聞こえます。
    はるか遠くから聞こえます。

    意識が体から離れそうです。
    もう体に触れられても感じない。

    こんなことをされてもわからない。

    いや、わかるかもしれませんが
    いやな感じはしないはず。

    こんなことをされても平気。
    むしろ、なんだか気持ち良いくらい。

    ほら、こんなことさえ許してしまう。

    そう、自然に。
    それでいいのです。

    それが本来のあなたです。

    いいですか、ほらほら。
    もっともっと、こんなことだって・・・・・・





    はい、目を開けてください。

    いかがですか?

    なにも覚えていないのですね。

    大丈夫。
    心配いりませんよ。

    無事に治療は済みましたから。

    そうです、そうです。
    なんだか、すっきりしたでしょ?


    そうでしょう、そうでしょう。

    なんだか私まで
    すっきりしてしまいましたよ。
     

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  • 酒 よ

    2012/07/01

    愉快な話

    ひとり、酒を飲んでいた。


     人、酒を飲む。
     酒、酒を飲む。
     酒、人を飲む。


    で、酒に飲まれてしまった。

    なんということ!


    「おーい、酒よ」
    酒を呼んでみた。

    「なーんだ、人よ」
    酒が返事をした。


    いかん、いかん。
    こりゃ、かなり酔っとるぞ。
     

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    • Tome館長

      2014/10/25 11:31

      「こえ部」で朗読していただきました!

    • Tome館長

      2012/07/02 19:08

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

  • 殺人鬼

    2012/06/30

    怖い話

    「殺人鬼ですって?」


    見える者には見える。
    見えない者には見えない。

    そんな殺人鬼がいる。


    「信じられない」


    いると思う者にはいる。
    いないと思う者にはいない。

    そんな殺人鬼である。


    「誰か助けて!」


    救助を求めても虚しい。
    誰も助けてくれない。

    自分でなんとかするしかない。


    「お願い。殺さないで」


    哀願しても無駄である。
    殺人鬼を殺すしかない。

    殺されたくなければ。


    「・・・・・・殺しちゃった」


    殺人鬼は死んだ。
    あなたは生きのびた。

    すると、殺人鬼はあなたである。


    「きゃあああああ!」
     

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  • 猿の目

    2012/06/29

    怖い話

    僕は皆から変な奴だと思われている。

    落ち着きがなくて、コソコソしている。
    怯えて、オドオドしている。

    犯罪者のような印象を与えるらしい。

    実際、ただの犯罪者になりたいと思う。
    自首するだけで済むなら気楽なものだ。


    誰かに追われているというわけではない。

    付きまとわれているだけ。
    ただ見られているだけ。

    朝から晩まで、寝ても覚めても。


    誰から?

    きっと信じてもらえないだろう。
    見ているのは猿だから。

    そう。
    猿芝居の猿。


    ほら。
    君も変な奴だと思っただろ?

    でも、僕が猿から見られているのは事実だ。


    どこにいるって?

    ああ、今はわからないな。
    あいつは他人がいると姿を隠してしまうから。


    でも、いつもこっちを見ている。
    猿まねで変装したり、望遠鏡で覗いたり。

    僕がひとりなら堂々と姿を現すくせに。
    寝室とかトイレとか、墓地とかでね。

    いかにも軽蔑したような目で。
    歯ぐき丸見えの裂けるほど横に伸びた口で。


    あいつは顔に似合わず狡猾だ。
    捕まえようとしても必ず逃げられてしまう。

    幻覚じゃない。
    家族にも見えるのだから。

    おかげでホームレスさ。


    恋人にも見えた。
    途端に恋は破れたけど。

    無理もない。
    四六時中いつも猿に見られていてはね。


    しかし、なんなのだろう?

    あの猿は。
    あの猿の目は。
     

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  • ポリ袋

    2012/06/28

    暗い詩

    僕は
    そっちへなんか

    行きたく
    ないんだけど

    風小僧が手招きしたり
    風娘が背中を押したり

    あれこれ
    翻弄するものだから

    仕方なく

    突風に
    舞い上がったり

    つむじ風に
    クルクル回ったり

    そっちの方へ
    そっちの方へと

    吹き流され
    引き寄せられて

    もう

    地に足着かないまま

    どうにも
    こうにも

    戻れなくなってしまって

    なんとも
    かんとも

    やるせない気持ちに
    なってしまいながらも

    なんにもならない
    なんにもなれない

    なにをしているのかも
    よくわかんない

    袋小路の
    吹き溜まりの

    安っぽい
    安っぽい

    安っぽいポリ袋。
     

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  • 産院にて

    2012/06/27

    愉快な話

    「あなた」
    「よくがんばったな」

    「男の子よ」
    「おれにそっくりだ」

    「そうね」

    「おや?」
    「どうしたの?」

    「こいつ、頭に角が二本ある」
    「そうよ」

    「おれもおまえも角は一本なのに」
    「あら、足して二本じゃない」

    「そうか。なるほど」
    「そうでしょ」

    「だけどな、おまえ」
    「なによ」

    「おれたちの孫は、角が四本か?」
    「・・・・・・」 

    「おれたちのひ孫は、角が八本か?」
    「・・・・・・」

    「ああっ! 角が伸びてきた!」
     

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  • 「死」の考察

    2012/06/26

    論 説

    「死は私と関係ない。
     私がいるうちは死んでおらず、死んでしまえば私はいないから」


    悟ったように昔の賢人は語ったが、はたして本当だろうか。

    「死」と「私=生」は、さような小賢しい理屈通り
    きれいに分離されているものだろうか。


    年々老い、若さと力を失い、疲れやすくなり、意欲が減り、
    意識は薄れ、苦しく辛く耐えがたい痛み、そして・・・

    これでは、まるで
    生きながら少しずつ死んでいるようなものではなかろうか。


    「無」そのものと同様、「死」そのものを感じることはできぬとしても
    その影の冷たさ厭わしさは

    「私=生」の減少または衰退、あるいは
    虫食いの病葉の如きものとして実感せらるるはずである。


    ゆえに、死後ならともかく、完全に死ぬ直前まで
    「私=生」は「死」と無関係である、とは決して言えまい。


    物事は単純に割り切れない。

    残念ながら。
     

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    • Tome館長

      2013/11/11 21:54

      「しゃべりたいむ・・」かおりさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/06/27 12:30

      「こえ部」で朗読していただきました!

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