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2015/01/12
どんなに愛しくても
いつまでも一緒いられるものではない。
また仮に
いつまでも一緒にいられるとしても
互いの愛しい気持ちは
どうしても変わらざるを得ない。
その気持ちの変化は
昔の気持ちの裏切りであるかもしれないけれど
今の気持ちの偽りであるよりは
まだいくらか罪の目方は軽い気がする。
2015/01/08
暗く長い廊下の向こうには
石炭置き場がある。
その当時の学校のストーブは
電気でも石油でもなくて
石ころの石炭を燃やしていたのだ。
崩れた崖のような黒い石炭の斜面をスコップで掘り
銀色のブリキのバケツに移す。
そして
それを教室まで運び
ストーブの脇にある木箱に移す。
その日の当番の仕事だったが
僕はこの仕事、わりと嫌いではなかった。
誰かがやらねばならない仕事だったし
それゆえ皆に感謝もされたから。
もちろん
そんなに好きなはずも
なかったけれど。
2015/01/07
「助けてくれよ」
「いやだね」
「薄情だな」
「その通り」
「友だちだろ?」
「俺に友だちはいない」
「そんな」
「いるのは、敵。でなかったら、手下」
「この際、手下でいいからさ」
「それが手下の態度か」
「この通りです。お願いします」
「ふん。まあいいだろう」
「では、助けていただけるのですね」
「いいや」
「どういうことですか」
「おまえが俺を助けるのさ」
「はっ?」
「おまえは俺の盾に過ぎない」
「・・・・盾?」
「そうだ。矢玉を受けて死ね!」
2015/01/05
聖なる神殿の中
秘めやかなる祭壇の前で
麗しき巫女がひとり泣いていた。
彼女は知ってしまったのだ。
この身の行く末と
この世の行く末を。
その時
祭壇の上に
神が光臨された。
神はおっしゃられた。
「聡明な娘よ。私を見なさい」
巫女は見上げた。
神は祭壇の上で
裸踊りをなさっておられた。
2015/01/02
あるところに 不眠症の羊飼いがいました。
羊毛みたいな白いヒゲがご自慢の
この老いた羊飼いの悩みの種は 眠れないことでした。
「眠れない夜は 羊を数えると 眠れますよ」
近所の奥さんが そう教えてくれました。
「わしは毎日 羊を数えておるよ。
それが わしの仕事じゃからの」
「あら。それじゃ あなた、きっと眠っているんですよ」
そこで目が覚めました。
元旦の朝でした。
これは 羊を数える老いた羊飼いの 初夢だったのです。
2014/12/30
一匹の蟹が水辺を這っていた。
そこに一匹の亀がやってきた。
「やあ、カニさん」
「やあ、カメさん」
そんな挨拶はなかった。
これは童話ではないのだから。
危険を感じ、蟹は逃げた。
あやうく亀に踏み潰されるところだった。
「カメさん、足もと見てよ。危ないじゃないか」
「カニさん、いたのか。そんなところにいるのが悪い」
そういう会話はなかった。
これは寓話ではないのだから。
蟹は水辺から離れた。
亀は水の中に入っていった。
「それだけ?」
「つまんない」
そんなことを言ってはいけない。
これは笑い話ではないのだから。
2014/12/28
ようこそ。
不幸なる紳士および淑女の皆さん。
なにはともあれ
本日はまことにご愁傷様です。
あなた方がまずすべきことは
すべてに対して諦めることです。
ここは呪われた運命の吹き溜まり。
わずかな希望の光さえ届かず
どこまでも漆黒の絶望の闇が続くばかりです。
ここでは
悪意と不信が手を組み
天災と人災が腕を組み
厄病神と死神が肩を組みます。
ここでは
過ちが事故を呼び
事故が惨劇を呼び
惨劇が破滅を呼びます。
まったく救いがありません。
ただし
ほんのわずかな希望さえないと
あらかじめわかっているということが
あるいは
いくらか救いと言えないこともありませんね。
2014/12/25
聖夜の君たちのために
ささやかなピアノ曲を贈ろう。
クリスチャンでもなんでもないから
三位一体とかよくわからないけど
聖霊と呼ばれるものについては
なんとなく音楽に近いような気がするな。
八百万の雑多な神々おわしますところの島国では
天にまします父と子の堅苦しい教えなんか取っ払い
デートやケーキ、ツリーやサンタ
おいしい楽しいとこだけいただきましょう
というわけだ。
まちがった考えかもしれないけど
血みどろの宗教戦争なんかするよりは
全然まちがってないと思うよ。
2014/12/22
美しき顔を沼の面から突出してはいるものの
やはり、どこかありきたりな美しさ。
その首から下の隠された大部分は
おそらく醜く、不具不浄であろうと思われる。
なぜそこまで外面を取り繕うのか。
いつか沼は涸れる。
やがて干からび、屍となる定め。
いやでも総身を白日のもとに捨て置かれ
堆積した内面の恥を晒さねばならぬ。
それは膿み爛れ腐り崩れ
周囲に異臭まき散らし
おぞましき虫ども
うじゃうじゃ這いまわる棲家ぞや。
ついには見るも無残、ああ
その薄皮のごとき仮面もはがれ落ちん。
2014/12/16
私はポプラ。
枯れ葉舞う並木道。
すっかり道が舗装され
枯れ葉がゴミになっちゃった。
ゴミじゃない。
ゴミではなかった。
散って
舞い落ちて
地面を覆って
それでそのまま
なんの問題もなかったはず。
どうして迷惑がるの?
どうして掃いちゃうの?
枯れ葉をゴミにしたのは
誰よ誰?