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Tome館長

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  • 別れの言い訳

    どんなに愛しくても 
    いつまでも一緒いられるものではない。

    また仮に 
    いつまでも一緒にいられるとしても

    互いの愛しい気持ちは 
    どうしても変わらざるを得ない。


    その気持ちの変化は 
    昔の気持ちの裏切りであるかもしれないけれど 

    今の気持ちの偽りであるよりは 
    まだいくらか罪の目方は軽い気がする。

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  • 暗く長い廊下

    2015/01/08

    思い出

    暗く長い廊下の向こうには 
    石炭置き場がある。

    その当時の学校のストーブは 
    電気でも石油でもなくて 
    石ころの石炭を燃やしていたのだ。

    崩れた崖のような黒い石炭の斜面をスコップで掘り 
    銀色のブリキのバケツに移す。

    そして 
    それを教室まで運び 
    ストーブの脇にある木箱に移す。

    その日の当番の仕事だったが 
    僕はこの仕事、わりと嫌いではなかった。

    誰かがやらねばならない仕事だったし 
    それゆえ皆に感謝もされたから。

    もちろん 
    そんなに好きなはずも
    なかったけれど。

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  • 友だちはいない

    2015/01/07

    ひどい話

    「助けてくれよ」
    「いやだね」

    「薄情だな」
    「その通り」

    「友だちだろ?」
    「俺に友だちはいない」

    「そんな」
    「いるのは、敵。でなかったら、手下」

    「この際、手下でいいからさ」
    「それが手下の態度か」

    「この通りです。お願いします」
    「ふん。まあいいだろう」

    「では、助けていただけるのですね」
    「いいや」

    「どういうことですか」
    「おまえが俺を助けるのさ」

    「はっ?」
    「おまえは俺の盾に過ぎない」

    「・・・・盾?」
    「そうだ。矢玉を受けて死ね!」

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  • 神殿の巫女

    2015/01/05

    愉快な話

    聖なる神殿の中 

    秘めやかなる祭壇の前で 
    麗しき巫女がひとり泣いていた。


    彼女は知ってしまったのだ。

    この身の行く末と 
    この世の行く末を。


    その時 

    祭壇の上に 
    神が光臨された。


    神はおっしゃられた。
    「聡明な娘よ。私を見なさい」

    巫女は見上げた。


    神は祭壇の上で 
    裸踊りをなさっておられた。

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  • 眠れない羊飼い

    2015/01/02

    愉快な話

    あるところに 不眠症の羊飼いがいました。

    羊毛みたいな白いヒゲがご自慢の 
    この老いた羊飼いの悩みの種は 眠れないことでした。

    「眠れない夜は 羊を数えると 眠れますよ」
    近所の奥さんが そう教えてくれました。

    「わしは毎日 羊を数えておるよ。
     それが わしの仕事じゃからの」

    「あら。それじゃ あなた、きっと眠っているんですよ」

    そこで目が覚めました。
    元旦の朝でした。

    これは 羊を数える老いた羊飼いの 初夢だったのです。

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  • 水辺にて

    2014/12/30

    愉快な話

    一匹の蟹が水辺を這っていた。
    そこに一匹の亀がやってきた。

    「やあ、カニさん」
    「やあ、カメさん」

    そんな挨拶はなかった。
    これは童話ではないのだから。


    危険を感じ、蟹は逃げた。
    あやうく亀に踏み潰されるところだった。

    「カメさん、足もと見てよ。危ないじゃないか」
    「カニさん、いたのか。そんなところにいるのが悪い」

    そういう会話はなかった。
    これは寓話ではないのだから。


    蟹は水辺から離れた。
    亀は水の中に入っていった。

    「それだけ?」
    「つまんない」

    そんなことを言ってはいけない。
    これは笑い話ではないのだから。

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  • 運命の吹き溜まり

    2014/12/28

    怖い話

    ようこそ。
    不幸なる紳士および淑女の皆さん。

    なにはともあれ 
    本日はまことにご愁傷様です。

    あなた方がまずすべきことは 
    すべてに対して諦めることです。


    ここは呪われた運命の吹き溜まり。

    わずかな希望の光さえ届かず 
    どこまでも漆黒の絶望の闇が続くばかりです。


    ここでは 

    悪意と不信が手を組み 
    天災と人災が腕を組み 

    厄病神と死神が肩を組みます。


    ここでは 

    過ちが事故を呼び 
    事故が惨劇を呼び 

    惨劇が破滅を呼びます。


    まったく救いがありません。


    ただし 

    ほんのわずかな希望さえないと 
    あらかじめわかっているということが 

    あるいは 
    いくらか救いと言えないこともありませんね。

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  • 聖夜の曲

    2014/12/25

    明るい詩

    聖夜の君たちのために 
    ささやかなピアノ曲を贈ろう。


    クリスチャンでもなんでもないから 
    三位一体とかよくわからないけど 

    聖霊と呼ばれるものについては 
    なんとなく音楽に近いような気がするな。


    八百万の雑多な神々おわしますところの島国では 
    天にまします父と子の堅苦しい教えなんか取っ払い 

    デートやケーキ、ツリーやサンタ 
    おいしい楽しいとこだけいただきましょう 

    というわけだ。


    まちがった考えかもしれないけど 
    血みどろの宗教戦争なんかするよりは 

    全然まちがってないと思うよ。

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  • 象徴としての沼

    2014/12/22

    暗い詩

    美しき顔を沼の面から突出してはいるものの 
    やはり、どこかありきたりな美しさ。

    その首から下の隠された大部分は
    おそらく醜く、不具不浄であろうと思われる。


    なぜそこまで外面を取り繕うのか。


    いつか沼は涸れる。
    やがて干からび、屍となる定め。

    いやでも総身を白日のもとに捨て置かれ 
    堆積した内面の恥を晒さねばならぬ。

    それは膿み爛れ腐り崩れ 
    周囲に異臭まき散らし 

    おぞましき虫ども 
    うじゃうじゃ這いまわる棲家ぞや。


    ついには見るも無残、ああ 
    その薄皮のごとき仮面もはがれ落ちん。

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  • 枯れ葉

    私はポプラ。
    枯れ葉舞う並木道。

    すっかり道が舗装され 
    枯れ葉がゴミになっちゃった。


    ゴミじゃない。
    ゴミではなかった。


    散って 
    舞い落ちて 

    地面を覆って 
    それでそのまま 

    なんの問題もなかったはず。


    どうして迷惑がるの? 
    どうして掃いちゃうの? 

    枯れ葉をゴミにしたのは 
    誰よ誰? 

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