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2016/09/13
僕はいつもの帰り道を通れない。
びっくりするくらい大きなカンガルーが
曲がり角のところで待ち伏せしてるはずだから。
おそらく野良ではなく、飼いカンガルーだろう。
なぜなら、両手にボクシングのグローブをはめている。
それでも、あんなに大きくなると、さすがに怖い。
しかも、必ずスパーリングを求めてくる。
僕の見た目が弱そうに見えるのか、強そうに見えるのか
なぜか僕をパートナーとして気に入ったようなのだ。
もちろん僕は、いかれたカンガルーの相手なんかしたくない。
ボクシングは見るものであって、するもんじゃない。
それで僕は、越えなくてもいい線路を越えたりして
わざわざ遠まわりして帰宅することになる。
カンガルーの語源は「わからない」という意味ではないそうだが
あいつらの考えていること、ホントわからない。
(画像:Robert Hoge)
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2016/09/12
朝まだき
眠りもならず 起きもせず
うつらうつらと まどろめば
ざわざわ ざわわ
ざわざわと
頭ん中に クモの這う
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2016/09/11
往来を歩いていると
刀の鞘を足蹴にされた。
「無礼者!」と斬り捨てようとしたら
武士の魂たる刀がなかった。
鞘の中身は竹光である。
魂なき入れ物だけ飾っておれば
侮辱されるは武士として当然の報い。
そもそも斬り捨てようがない。
食うに困って質に入れ
そのまま流してしまったのだな。
これでは武士とも呼べないか。
武士は食わねど高楊枝。
武士が食ったら豚になる。
ブーブー
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2016/09/10
ひょいとサルが顔を出す。
「わあ、なんだなんだ。あっちへ行け。
おれはサルなんぞに用はない」
「ウキキキキ」
さすがサル。恥ずかしげもなく、定型的な笑いを笑う。
「黙れ。歯ぐきをむき出して笑うな。
とぼけて頭に手を置くな。猿真似すんな」
しかし所詮、サルはサル。
なにを言っても無駄なのだ。
「ウッキ ウッキ ウキウキ ウッキ」
どこかで聞いた節で、どこかで見た踊りを踊る。
やれやれ。やっぱ、サルだ。
去らぬなら、無視するしかあるまい。
「ウッキッキ」
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2016/09/09
たてがみが燃えるのではない
燃えあがる炎が
ライオンのたてがみなのだ
駆け抜ける草原さえ 燃えている
灼熱の太陽から降り注ぐ 火の雨
雨宿りできる安息の木陰は どこにもない
黒煙を噴きあげ
燃えながら流れる 油の川
涙の川なら
手足縛ってでも 溺れてみたい
赤き血の川なら
裸になって 泳いでやる
ああ 喉が焦げる
心臓が焼けただれる
燃えに燃え
すべてが灰になってしまう
なにも残らない
一本の骨 ひとつの言葉すら
ああ 限界だ
もう我慢できない
あの燃えるライオンに今 喰われたい
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2016/09/08
チリトリは 鳥じゃない
アヤトリも 鳥じゃない
セキトリも 鳥じゃない
ウミネコは 猫じゃない
ネンネコも 猫じゃない
ネコイラズも 猫じゃない
トラフグは 虎じゃない
トラウマは 虎でも馬でもない
ウルトラは 虎を売るわけじゃない
ゾウガメは 象じゃない
ゾウニは 象を煮るわけじゃない
ゾウサンは 象が三頭いるわけじゃない
パンダは パンじゃない
トノサマガエルは 殿様じゃない
セイタカアワダチソウは 背の高いシャンプーじゃない
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2016/09/07
じつは私は目が見えない。
若い頃に病気で失明したのだ。
ある日、家の中で手探りしながら腰を下ろそうとしたら
そこに椅子はなくて、そのままストンと落ちてしまった。
なのに、すぐに床に尻が着かない。
落ち続けているのは風を切る感じでわかる。
ひょっとして開け放たれた窓から落ちたのだろうか。
いやいや、そんなはずはない。
仮にそうだったとしても、家は平屋なのだから。
ああ、これはもしかしたら
死んでゆく時の感覚なのかもしれない。
そう思いついた途端、安心したのか
ちゃんと椅子に座っている自分に気づいた。
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2016/09/06
「おい、カネを出せ。
出さねば、わきの下の毛を抜くぞ」
また変なやつが来店したものだ。
受付を長年しているが、初めてのタイプである。
「しっかり処理してるので、わき毛はありません。
また仮にあるとしても、むしろ抜いてもらいたいくらいです」
「そうか。それは相手が悪かったな。
では、改めて出直すとしよう」
とりあえず、その変な客は大人しく帰ってくれた。
なんなんだろう。
春先だからだろうか。
「いやあ君、立派な接客態度だったね。
私なんか、髪の毛を抜かれるとしたら、まず抵抗できないな」
頭の薄い上司は、しきりに感心してるし。
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2016/09/05
コピペ ペコピパ ペコピパポ
コピペ ペコピパ ペコピパポ
コピー & ペースト
コピー & ペースト
取って 貼って 簡単だ
取って 貼って 簡単だ
コントロール C コントロール V
コントロール C コントロール V
左クリック 右クリック
左クリック 右クリック
頭ん中 考えなしの マウスが走る
頭ん中 考えなしの マウスが走る
コピペ ペコピパ ペコピパポ
コピペ ペコピパ ペコピパポ
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2016/09/04
その人は男か女かわからない。
とりあえず彼と呼んでおく。
彼は珍しい技術を持っている。
めくるのがうまいのである。
めくらせたら彼の右に出る者はいない。
本のページをめくるとか
婦人のスカートをめくるとか
そんなの誰でもできるけれど
彼のめくる真似はなかなかできない。
眠っている人のまぶたとか
黙っている人のくちびるとか
本人に気づかれずにめくる。
池の水面だってめくってしまう。
夜の帳とばりだってめくってしまう。
白日のもとにさらされる宇宙の神秘。
心の覆いなんかわけもない。
その透けるように白い指先が
見た目優雅に弧を描く。
すると、この人は彼ではなく
彼女とでも呼ぶべきかもしれない。
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