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2009/02/11
君の似顔絵を
なみだで描いた
君の瞳は
湖面の月
小さな波紋に
ゆれて壊れる
2009/02/10
天女の衣
やぶれはて
悲しい思い出
砂の数
叶わぬ願い
星の数
鬼の角に
帯かけて
松葉みたく
ゆれましょか
2009/02/09
それを貼りさえすれば
どこへでも届くという不思議な切手。
どんな遠いところでも
どんな危険なところでも
どんな変てこなところでも
その切手が貼ってさえあれば
必ず届いてしまうという。
天の川のお姫様のところへも
火の山にすむ竜神様のところへも
会えなくなったお母様のところへも
その切手が貼ってあれば
なぜか届いてしまう。
そんな不思議な切手がもう一枚
届いたところにもあったなら
返事が来るかもしれないね。
2009/02/08
ある夏の昼下がりのことでした。
縁側に見知らぬ猫が寝ていました。
寝てるふりをしていたのかもしれません。
裏庭では見知らぬ犬が吠えていました。
野良犬でない証拠に首輪をしていました。
枕もとには見知らぬ女が座っていました。
随分と心配そうな顔をしており、
どうも妊婦のようでした。
突然、私は
胸が苦しくなりました。
ふとんを跳ねのけ
立ち上がり、
猫を踏み、犬を蹴り、
勢いに乗って
女を押し倒しました。
それらは
すべて
ある夏の昼下がりに
見知らぬ私がしたことです。
2009/02/08
少年は
水色の羽の蝶を
追っていた
聞こえてくるのは
鳥のさえずり
水の音
針葉樹に囲まれた
宝石のように
愛らしい湖で
水浴びしてる
溶けそうな
肌の色
それとも
鱗のない魚
髪をかきあげ
振り向いた
美しい少女の
目は複眼
2009/02/07
あたいは兎 泣き兎
赤い目をして 泣いてるの
なぜ泣く 兎
笑いなさい
なぜかしら 笑っていると
すぐに泣きたくなっちゃうの
うそ泣き 兎
笑えない
笑っていると 空しくて
泣いていると 楽しくて
2009/02/07
冬の浜辺の
砂に埋もれた人形を
繰り返し撫でるは
波の白い 手と手と手
服汚れ 髪乱れ
腕千切れ
それでも唇は
奇妙に微笑んでいる
持ち上げれば
細き首は折れ
ガラスの目玉
ボトリと落ちる
傷心の君を
胸に抱けど
灰色の砂
ただ零れるばかり
2009/02/06
いまにも泣きそうな
本当に泣いてしまいそうな
そんな夜がある。
みんなが楽しそうでも
いくら君が笑わせようとしても
なおさら泣けてくる
そんなやるせない
どうしようもない
もう泣くしかないような
そんな夜がある。
2009/02/05
枝に串刺しの
月明かり
蔓草に縛られた
石像の両腕
それら群像に
首はない
荒れ果てた庭園
泥沼の池
亡霊も凍る
崩れ果てた宮殿
金獅子の紋章は
王家の末裔か
屋根の上の
まわりもせぬ風見鶏
朽ちた階段
落ちた手摺り
色硝子の剥れた
窓の残骸
蓑虫を織り込んだ
蜘蛛の巣の帳
項垂れた燭台
脚の折れた寝台
掛け時計から垂れる
鳥葬の鳩
影さえ映さぬ
古代の鏡
壁に磔の
化石の蜥蜴
永遠の如く
静かなる夜
2009/02/04
ぼくたちは それぞれ
なにかを もとめて
こんな とおいところまで
きてしまった けれど、
おろかな こどもが
にじを おいかけても
いくら おいかけても
どうしたって
おいつけない ように、
やっと たどりついても
あんなに もとめた
とおいところは
ここではなくて、
ここは どこでもなくて、
ここは ただのここ でしかない。