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2013/05/20
割れる 割れる
ひび割れる
足のカカトが
ひび割れる
クチビル上下も
ひび割れる
雨が降らない
雨降らない
どこにも降らない
一滴も
大地が割れる
笑顔が割れる
心はとうに
割れている
日々 ひび
ひびび
ひび割れる
2013/05/18
空は高く
海ひろく
大地は緑
人の影なし
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2013/05/18
「いっそ、私を殺して」
「それなら、一緒に死のう」
若い男女が心中することになった。
理由は問題ではなかった。
場所が問題であった。
「海がいいわ」
夢見るような女の瞳。
「いや。山がいい」
酔ったような男の頬。
結局、意見は合わなかった。
それでも、ふたりは心中した。
女は海で。
男は山で。
それを心中と呼べるかどうか、は
ともかく。
2013/05/16
僕の秘密の遊び場は
小学校の裏山にある鍾乳洞。
入口は、お地蔵様の並ぶ崖の下。
ここに入る時
君のその大事な頭を天井に
ぶつけないよう注意するんだね。
まっすぐ進むと
冷凍マンモスの部屋があるよ。
そこには八つほど穴があって
右から二つ目を選ぶのさ。
恐竜の背骨の階段を
だらだら下まで降りたらね
そこは恐ろしい強酸の水たまり。
服や靴、濡れると融けるから
十分に注意するように。
この水をね、すくって飲むと
すっごく楽しくなるんだよ。
奇妙なものが見えたり
音が聞こえたり。
考える原始人
あるいは三歩前の足音、とかね。
もしも四歩前の足音なら
それは君きみ
ちょっとばかし飲みすぎだよ。
2013/05/15
客と商談中なのであった。
なかなかスムーズに進行していた。
ところが、ふと私は気づく。
客から受け取ったばかりの書類がない。
大事なものを紛失してしまった。
テーブルの上を捜しても見つからない。
あわてて自分のバッグを開ける。
安物のバッグが破れ、中身が床に散らばる。
とんでもないものがゾロゾロ。
あられもないものがゴロゴロ。
その恥ずかしい事と言ったらない。
人間性を疑われてしまったに違いない。
あせって席を立ち、急いで拾い集める。
客の視線が背中に突き刺さる。
「ああ、これはまことにもって
申しわけありませんの利休」
言いわけが言いわけになってない。
こぼれ落ちる自分の言葉が理解できない。
ボロボロと信用を失ってゆくばかり。
もう逃げるしかないと決意した瞬間、
目の前に書類が置かれてあるのに気づく。
「あった! 書類がありました!」
私は狂喜する。
だが、客の目は冷たい。
「最初からここにありましたよ」
2013/05/14
この館の主は収集狂として名高い。
切手や古銭、宝石や貴金属、書画骨董、
蝶の標本、化石、ミイラ、下着、拷問道具。
珍しいもの、貴重なものであれば
なんでも集めしまう大変人。
世界中から美男、美女、美童を集めている
という噂もある。
とんでもない危険物にも手を出している
という証言もある。
媚薬、麻薬、毒薬、細菌、拳銃から核兵器、
妖精、幽霊、原始人、宇宙人、そして時間の穴。
とにかく
入手困難なものであれば
なんでも見境なく集めてしまうのだ。
危険極まりない?
まさに!
ただし、ご安心あれ。
なぜなら
どんな物騒なものでも
この館の中に入ってしまったら
もう二度と外に出る事はないのだから。
2013/05/13
こんな夜遅く、秘密の集会があるという。
参加せねばなるまい。
会場は近所の住宅。
顔見知りの奥さんが出迎えてくれる。
じつは私の好みのタイプである。
「遅れてしまい、申しわけありませんか」
そのように彼女が挨拶するので
私は次のように挨拶を返す。
「それは確かに、まあ、そうですね」
これが集会参加者の合言葉なのだ。
彼女が微笑む。
「どうぞ、お上がりください」
私は靴を脱ぎ、踊るように家に上がる。
じつは初めて上がる家なのだ。
耳の長い猫が廊下を歩いていた。
追いかけて捕まえ、耳にリポンを結ぶ。
だが、リボンはすぐに外れてしまう。
手で唇を隠しながら奥さんが笑う。
廊下に落ちたリボンを私は拾う。
(はて? このリボン、どこから出たのやら)
私たちは広い部屋に入る。
大きな丸いテープルを囲み、
十人ほどの同士が集まっている。
ほとんど女性で、ほとんどが美人だ。
今夜は期待できそうな気がする。
「それでは、これより集会を始めます」
同士のひとりが壁のスイッチに触れる。
たちまち部屋は暗くなる。
2013/05/13
行き交う人の姿もない
夕暮れ近い外人墓地。
墓石の列が夕日に赤く染まっていた。
そのひとつの白い墓の手前で
私は美しい指輪を拾った。
「ねえ、お願い。はめて欲しいの」
ふと、そんな声を聞いたような気がした。
ふざけて左手の薬指にはめてみた。
不思議なくらい軽くはまった。
だが、自分には似合わない。
(彼女にプレゼントしようか?)
そんなことを考えたりした。
(とりあえず指輪をはずしておこう)
それは簡単にはずれるはずだった。
だが、なかなか抜けない。
「いやいや。お願いだから、抜かないで」
そんな声が聞こえる。
指輪がきつく指を締めつける。
さらに指をグイグイ引っ張る。
下へ、地面へと引き下げようとする。
あらがいがたい力だった。
もう立っていられなかった。
私は名も知らぬ墓の前にひざまずいた。
指が地面にズブズブ埋まってゆく。
「あなた、お願い。早く、早く、来て」
女の声が地面のすぐ下から聞こえる。
それはもう気のせいではない。
墓碑銘など読む暇はなかった。
しかし、私は確信する。
おそらく、これは
不幸な花嫁の墓に違いあるまい。
2013/05/11
死なせ屋は、殺し屋ではない。
死にたがっている客を
望み通りに死なせてやるのが商売だ。
だから、本当に死ぬべきかどうか
客の相談にのってやったりもする。
死ぬのを思いとどまらせたら
とりあえず相談料だけいただく。
これでも結構な収入になるのだ。
死ぬ前に客の望みを叶えてやるのも
死なせ屋の仕事のひとつ。
たとえば、死にたい理由が失恋なら
その失恋相手の調査や分析、
関係者の買収や状況操作、そして企画提案。
場合によっては
その相手を誘拐してやったりさえする。
死ぬ前に望みが叶ってしまうと
やはり死にたくなくなる客も多い。
そんな客に高額な費用を請求をすると
結局、また死にたくなったりする。
つまり、死なせ屋の商売のコツは
死なさず生かさず、だな。
2013/05/10
てるてる坊主
晴れ祈願として
軒先に下げる、あれ。
首吊りにしか見えないんですけど。
ふれふれ坊主
雨祈願として
逆さに下げる、あれ。
拷問にしか見えないんですけど。