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2013/10/20
両手に握った枝ふたつ
うつろな瞳の巫女ひとり
花髪飾り 白い足袋
紅の袴 紺の帯
巫女は踊る リスになり
柳に揺れて 竹に跳ね
巫女は踊る 谷を抜け
沼を渡り 山を越え
森のけものに囲まれて
素足の裏を舐められて
丸い月 ひとつ
おっぱい ふたつ
帯をほどいて 笛吹いて
ぴいひゃら ぴいひゃら
今夜はうれしい村察
ぴいひゃら ぴいひゃら
ぴいひゃらら
2013/10/17
小さな池に薄氷
ひやりと張りて
曇り空
逆さに映し
小石投げよか
投げまいか
凍った空の
一枚や二枚
割れずして
なんとしよ
爆弾降るやも
しれぬのに
2013/10/16
川の流れ
浮かぶ舟
空を見上げりゃ
雲がゆく
昨日は過ぎ去り
今日はここ
明日は明日の
風が吹く
2013/10/16
「あたしの切り札はこれよ」
女は服を脱ぎだした。
やれやれ、またか。
これだから女ってやつは、まったく。
「残念ながら」
おれは首を振る。
「おれはロボットなんだ。
人間の色気なんか通じない」
「あら、奇遇ね」
彼女は不敵に笑う。
「じつは、あたしもロボットなの」
なるほど。
あらわになった金属部品の
その悩ましいまでの
光沢と形状。
2013/10/14
情熱の動脈 哀愁の静脈
脈打つ心臓 膨らむ肺臓
痙攣するは 胃と腸と横隔膜
「とっても素敵な
内臓露出ファッション!」
隠しきれない骨格標本の悩ましさ
体液に濡れる人工臓器
衝撃の子宮外妊娠
寄生虫のダンスホール
悪性腫瘍の謝肉祭
「むしろ 隠すなんて 恥ずかしい」
未来における流行の最先端では
皮膚と筋肉が透明になる。
刺激を求めて
どこまでも恥ずかしくなる。
やがて楽しい
透明人間の時代がやってくる。
Yaeh!
2013/10/13
青い色紙で 一羽の鶴を折る
これを屋根の上から 飛ぱしてみる
青い折り鶴が 空に舞う
赤い色紙で 一羽の鶴を折る
これも屋根から 飛ばしてみる
赤い折り鶴が 舞い下りる
緑の色紙で 一羽の鶴を折る
やっぱり屋根から 飛ぱしてみる
緑の折り鶴が 舞い落ちる
きっと妹が 窓の外を眺めてる
白い紙の 寝たきりの乙女
見よ 色とりどりの 鶴の舞
2013/10/11
無精者なので無精ひげを生やしている。
面倒臭いから
ひげそりはしない。
気になるとハサミで切る。
髪も同様。
床屋へ行ったのは小学生までだ。
頬やまぶたなど
位置的に見っともない部分は毛抜きで抜く。
手持ち無沙汰だったりすると
指の爪で挟んで抜いたりもする。
ある日、パソコンをいじりながら
あごひげを片手でつまんでいた。
すると、妙に長い毛に触れた。
条件反射のように引き抜く。
・・・・つもりだったが
その毛がなぜかズルズル伸びるのだった。
抜けないままの毛の先端を見ることさえできた。
小指ほどの長さ、色は真っ白。
さらに引っ張ると、さらに伸びる。
どう考えてもおかしい。
そこで思い出したのが都市伝説。
皮膚から綿が出る、耳から糸が出る、
そんな話。
それによれば
耳から出た糸を引っ張り続けると
やがてプツンと音を立てて糸が切れ
同時に視力を失うのだそうだ。
思わずゾッとして
その白い毛から指を離す。
おそるおそる根もと近くをハサミで切る。
糸ではない。
ごく普通の白髪に見えた。
それだけ。
以後、その近くのひげは
なるべく引き抜かないようにしている。
しかし、それにしても
あれはなんだったのだろう。
いまだに謎である。
2013/10/10
人はよく
戦いの後で
戦いを振り返る。
だからきっと 人は
平和の後で
平和を振り返る。
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2013/10/08
たいした火山の
いやもう立派な噴火だよ。
ドカンドカンと
天地にとどろく産声あげて
元気な火の子が飛び出した。
「これは素敵! いい眺め」
火の子が落ちたところは
山のふもとの林の中。
たちまち草木に火がついて
ゴウゴウゴウと勇ましく
ボウボウボウと燃えあがる。
「これまた素敵! おもしろい」
火の子は跳ねて転がって
近くの池に飛び込んだ。
ものすっごい水音がして
モワモワ蒸気が舞いあがる。
「これは大変! 冷たいよ」
火の子よ、火の子。
気の毒に。
元気がすぎて
火が消えた。
2013/10/03
昔は空を飛べたはずなのに
今はもう飛ぼうともしない。
空が恋しくないわけじゃないが
この大地から離れる気にはなれない。
たしかに空は広いけど
どこまでいっても空でしかない。
いやなことは少なかろうけど
楽しいことがそんなにあろうはずもない。
翼がすっかり退化しても
羽がみんな抜け落ちても
飛ぶことしかできない鳥でいるより
飛べない鳥でありたい。