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  • せぬように

    2009/03/18

    愛しい詩

    うぶ毛の生えた地平線

      誰かの指が

        散歩する



    くれぐれも

      髪の川に流されたり

        せぬように
     

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  • しずく

    2009/03/17

    暗い詩

    ぽたぽたぽたと しずくが落ちる

     なみだにしては ちと赤い
     

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  • もしも幽霊

    2009/03/16

    空しい詩

     もしも蚊が幽霊なら

     気になって気になって
     眠れない。


    潰しても潰しても潰しても

    遠く近く聞える
    あの羽音。

    疲れ果て
    灯りをつける。

    どこにも蚊はいない。

    背筋に寒気が走る。

    なにしろ
    季節は冬なのだ。


     もしも星が幽霊なら

     ほとんど誰も
     気にしない。


    さまよえる幽霊星。

    青白き火の玉
    見たように

    天文学者が悲鳴をあげる。

    それから
    宇宙飛行士もあわてそう。


     もしも宇宙が幽霊なら

     きっと誰も
     気づかない。


    だって
    みんな幽霊なのだから。
     

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    • Tome館長

      2012/10/24 23:27

      ケロログ「0w0!!?」むい・w・ぴらふさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/10/08 14:23

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 砂漠の狐

    2009/03/16

    明るい詩

    昔、砂漠に戦争があった。

    砂漠には狐が棲んでいたが
    彼らは砂漠に残った。


    戦争は長く続いた。

    狐は砂を掘り、
    昼間は砂の中に隠れて過ごした。

    争いは避けなければならない。
    争いに巻き込まれてはならない。

    かすかな音さえ聞き逃してはならない。


    耳だけが
    彼らの頼りだった。


    だから

    時は流れ
    戦争は絶えて久しいけれど

    それら砂の中に隠れし者の
    子孫の末裔の

    砂漠の狐の
    耳は長い。
     

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  • 人形の舞踏会

    2009/03/14

    楽しい詩

    華やかな衣装を身にまとい
    端正な顔に美しく化粧をほどこして

    世界中から集まった人形たち


      麗しき人形
      美しき人形

      きれいな人形
      かわいい人形

      愉快な人形
      良い人形


    とても愛らしい
    小さな貴婦人たち

    もっとも
    等身大のマネキンだっているけど


    人形たちの素敵な舞踏会

    もっとも
    誰も踊ったりしないけど
     

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  • 鳴き猫の扉

    2009/03/13

    怖い話

    この家の玄関の扉を開ける時、
    軋んだ音がする。

    その音が
    猫の鳴き声そっくりなのだ。

    知らない客は驚いて
    キョロキョロする。

    いくら探しても
    どこにも猫の姿はない。


    その昔、
    扉に挟まって猫が死んだのだろうか。



    この扉を閉める時にも
    軋んだ音がする。

    なぜだろう。
    女の泣き声そっくりなのだ。

    知らない客は驚いて
    キョロキョロする。

    いくら探しても
    どこにも女の姿など・・・・・・


    おやおや。
    この家の奥さんが扉に挟まっていた。
     

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    • Tome館長

      2012/10/06 19:58

      ケロログ「Spring♪」武川鈴子さんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/10/05 18:31

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • ロレロ霊歌

    2009/03/12

    楽しい詩

     
    キドラ辺境惑星における伝統音楽は
    いたるところに存在するにもかかわらず
    同時に見つけるのが困難とされている。

    ロレロと呼ばれる宗教的な期間に
    年配者が若者に伝説を語る風習があり、
    そこで歌われるのがロレロ霊歌である。

    現在では霊的なものは失われてしまったが
    これはタヌヌ戦争直前に録音されたもの。

    液体楽器ビハデを奏でるのは
    村の古老ダグエラとその娘エダの親子。

    ベキ音唱法を駆使して即興で歌うのは
    タンニとウフニの双子の姉妹である。

    録音に成功した辺境調査家エデレーは
    自著において次のように解説している。

    「ベキ音唱法が時空の認識を変化させ
     時を越えて打ち寄せるビハデの波紋により
     宇宙の意識が聴者の意識と重なると、
     自他および因果の区別は意味を失う」 

    なお、ここで語り継がれる伝説については
    サッササ叙事詩のキドラ辺境型変形、
    またはそのピケ亜流と分類される。
     

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  • あんた

    2009/03/11

    暗い詩

    ねえ、あんた。ねえったら。

    あんた、どうしたの?

    あたしを置いてきぼりにしてさ。
    もう、いやんなっちゃうな。

    せっかく、ふたりっきりなのに
    あたしも一緒に連れてってよ。

    ねえ、もしかして、あんたったら
    あたしのこと忘れちゃったわけ?

    ポンポンって肩を叩いてやらないと
    思い出してもくれないわけ?

    こんなに近くにいるのに、
    こんなに触れ合ってるのに。

    それとも、ひとりで行きたいわけ?

    ひとりで勝手に行って
    残されたあたしなんか、どうでもいいの?

    あたしのこと、なんだと思ってるの?

    だめだめ、そんなのだめ。
    全然信じられないよ。

    あんた、ちょっとおかしいよ。

    ううん、すごくおかしいよ。
     

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  • 失 恋

    あっ

    そうか


    なるほど

    そういうことね


    なんだ

    ばかみたい


    ほんと

    ばかみたいだ
     

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  • 見知らぬ町

    2009/03/09

    空しい詩

    十二方位の十三番目

    羅針盤さえ迷子の見知らぬ町


    見知らぬ町の広場には
    人影がない

    見知らぬ町の時計台には
    針もない


    見知らぬ町を
    見知らぬ商隊が通る

    ラクダだけ
    商人の姿はない

    ラクダの背には荷物もない


    そんな見知らぬ町で
    見知らぬ人を見たら

    それは見知らぬ町の
    見知らぬ人
     

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