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Tome館長

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  • 悩ましい声

    どこか知らないところへ一緒に行こうと 

    友人と約束のようなものをしたらしい。

     

    そのため、どこか知らない場所で待っているが 

    彼の姿はなかなか現れない。

     

    ところで、にぎやかな建物が目の前にある。

    不必要なまでに窓や電飾が明るいのだ。

     

    何気なく中に入ってみると、彼がいて 

    見覚えのない女の子とデートの最中であった。

     

    こちらとの約束はすっかり忘れているようである。

    少なくとも、そのように感じられる。

     

    中央ホールのような印象を与えるフロアには 

    たくさんの裸の男女が入り乱れている。 

     

    抱き上げたり、組み合ったり、振りまわしたり 

    恥知らずと言うか、目を覆うばかりである。

     

    すると、ここは公衆欲場のような特別な場所なのか。

    それとも、なにかのまちがいなのか。

     

    ・・・・いくら考えてもわからない。

     

    「今この目の前にある不具合を修正しない限り

     将来の輝ける進展は見込めないのだぞ」

     

    さような声なき声も聞こえてくるが、いかんせん 

    女の子たちの悩ましい声まで聞こえてくる。

     

    「今この目の前にある世界を楽しまない限り

     永遠に楽しむことなんてできないのよ」

     

    それはもう信じられないほどの悩ましさである。

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  • 説得の作法

    2016/11/27

    愉快な話

    説得するには、まず相手を知ること。

    観察したり、打診したりする。

     

    何を好み、何をきらい、何を望み、何を恐れるか。

     

    好ききらい、いかんともしがたし。

    望みには応じられない場合が多い。

     

    そこで、相手の恐れを利用することになる。

     

    こちらの目的を相手に伝える必要はない。

    結果として目的を達成するまでだ。

     

     

    「まず、こいつを外すんだ」

    銃口を相手の額に押しつける。

     

    「次に、これをずり下げろ」

    逆らったら危険だぜ。

     

    「これも一緒だ」

    誰だって命は惜しいからな。

     

    「よし。こいつを持ち上げろ」

    撃たれたら痛いだろうし。

     

    「それから爪を立てて、ここを掻くんだ」

    ああ、そこそこ。

     

    「そ、そこが、すっごく痒かったんだ」

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  • いけないこと

    ねえ、いいかしら。

    お姉さんといけないことしましょうよ。

     

    うん、そうよ。

    やってはいけないことをするの。

     

    ほら、こんなことするのはいけないことよね。

    でも、やっちゃうわけ。

     

    楽しいでしょ。

     

    うふふ、そうよ。

    だって、いけないことができるんだもんね。

     

    もともと、いけなくなんかないのよ。

    いけないと決めつけるからいけないのよ。

     

    たとえばジャンケンでね 

    グーでもチョキでもパーでもない 

    なんか変な形の手を出すようなもんかしら。

     

    つまり、やってはいけないことを許すわけ。

    それだけで世界が変わるわ。

     

    まず自由になる。

    なにより気楽になれる。

     

    ただし、やましいことはしちゃダメよ。

    やましいことをすると、気が重くなるわ。

     

    することが不自然になるし 

    できることが自由にできなくなる。

     

    あっ、こらっ。

    そんなことしちゃダメだってば。

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  • ぶたちちラーメン

    2016/11/25

    変な話

    知人の男とラーメン屋に入り 

    注文した品が出てくるのを待っている。

     

    ここの店主の娘であるか、または店員であるか 

    どちらか不明だが、その子に知人はご執心なのだ。

     

    テーブル席で待つ間に知人と店主が口論となる。

    いわゆるラーメン論争である。

     

    ひとりカウンター席に避難してメニューを眺めていると 

    はしっこに「ぶたちちラーメン」と書かれてある。

     

    ぶたちち? 豚の父親? 豚の母乳? 

    それとも豚のオッパイの肉? 

     

    これはぜひ食してみたいものだ。

    などと思っているうちに、すでに食べてるし。

     

    わあ、どうしたことだ。

    前の注文を取り消さねばならない。 

     

    ところが、あわててテーブル席に戻ると、すでに 

    その上にレバニラ炒めらしき皿が載っている。

     

    こんなもん注文したっけ? 

    そもそも看板娘はどこにいるのだ? 

     

    すっかり頭が混乱してしまい、せっかくの 

    ぶたちちラーメンの味、ちっとも思い出せない。

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  • 野菜家族

    2016/11/24

    楽しい詩

    ナスがママ 

    キュウリがパパ 

     

    妹トマト 

    僕ピーマン 

     

     

    カボチャの土地に 

    キャベツの家が建っている 

     

     

    クルマはスイカ 

    バイクはハクサイ 

     

    自転車ニンジン 

    足ダイコン 

     

     

    今朝はサラダで 

    お昼は漬物 

     

    今夜は 

    野菜炒めかな

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  • 墓参り

    2016/11/23

    怖い話

    お盆の墓参り。親類縁者お揃いで山寺へ。
    夏の夕暮れ行き来する浴衣姿の家族連れ。
    坂のぼり、山門くぐり、さらに坂のぼる。
    盆花で飾られし先祖代々の苔むす墓の群。
    ロウソクに火を灯し、台の上に。線香も。
    数珠を手に黙祷。手持ち提灯に火を移す。
    坂くだり、山門くぐり、さらに坂くだる。
    つまづいて、家の前で提灯の火が消える。
    ひとり墓前まで戻り、迎え火を運ぶ沙汰。
    西日は沈み、人影まばらな夜道となりぬ。
    幾百もの灯明りに浮かぶ山のシルエット。
    蛍とび交うも、すれ違いし人の影はなし。
    灯明りに照らされ、卒塔婆の影ゆれ踊る。
    提灯のロウソクに火を移し、立ち上がる。
    不意の突風。提灯ゆれるも、迎え火残る。
    見渡せば、人気ない山の墓場は真っ暗闇。
    誰ぞ吹いたか突風で灯明りすべて寂滅す。
    残るは、ゆれる迎え火、かそけき蛍の光。

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  • 僕のもん

    2016/11/22

    暗い詩

    ひとっつも僕の入ってない それは

     とても僕のもん なんて呼べなくて 

     

    それこそ そのあたりに転がってる

     ちっとも珍しくなくて 欲しくもない 

     

    石ころとか 風景みたいな

     どうでもいいもんじゃないかな 

     

     

    そういう つまんないもんばっかり

     君がまだ 欲しがるってんなら 

     

    それは なにも僕でなくったって

     

     ほら そのあたりを歩いてる 

    あの人とか あの人とか

     

     または あの人とか あの人とか

     

    とにかく もう どこのどいつだって

     かまいやしないじゃないか

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  • やりたくない

    2016/11/21

    空しい詩

    やりたくなくて 

    やらなくてもかまわないなら 

    やらなきゃいい 

     

    起きたくなければ 起きない 

    食べたくなければ 食べない 

    言いたくなければ 言わない 

     

    興味なければ 

    見ない 読まない 聞きもしない 

     

    コウダカラ とか 

    ナントカノタメ とか 

    ソウスルホウガイイ とか 

     

    まったく 

    余計なおせっかい というものだ

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  • 竜の炎

    2016/11/20

    ひどい話

    主人公は異星人との混血児。

    とても勇敢な少年。

     

    かわいらしくて賢い妹 

    にくたらしくて力持ちの弟を従え 

     

    世界の平和を守るという伝説の 

    竜の炎を求め、冒険の旅に出かけた。

     

    孤児の三人を引き止める者はいなかった。

     

    父親は辺境の地で戦死した。

    勇敢な最期だったという。

     

    それぞれ母親は異なり 

    皆、出産と同時に亡くなった。

     

    どれも悲惨な最期だったという。

     

    怪物を退治したり、囚われの姫を救ったり 

    大活躍の末、ついに三人は手に入れた。

     

    永遠の平和を世界にもたらすであろうはずの竜の炎を。

     

    ところが、持ち帰ろうとした途端 

    その炎が消えてしまった。

     

    まさに伝説。

     

    もともと永遠の世界平和など 

    人知のおよぶところではなかったのだ。

     

    これにより世界平和の根拠は消滅し 

    三人による凄惨な世界分割戦争が勃発した。

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  • 死神の部屋

    2016/11/19

    怖い話

    「生命維持管理室」という立派な名称があるにもかかわらず 

    ここは皆に「死神の部屋」と呼ばれている。

     

    ここでは個々の人間の基本的生命バロメーターが管理されている。

    若々しさ、健康、気分、欲望、やさしさ、理性、などなど。

     

    無機質な数値やグラフによって表すことも可能ではあるが 

    それでは直観的なイメージがつかみにくい。

     

    そのため現在に至るまで、昔からの伝統にのっとり 

    ロウソクとその炎の状態によってリアルに表示されている。

     

    ロウソクの太さは生命力の強さ、その長さは寿命。

    色は人格のようなものに相当する。

     

    そして、そのてっぺんで燃える炎の状態は 

    まさに今この瞬間における命の燃え具合を示している。

     

    実際に何が行われているかは想像するしかない。

     

    ただし、明るさ、色、勢い、形、それらの変化によって 

    おおよそのところは察せられる。

     

    この部屋において、これらロウソクとその炎を

    一元的に管理しているのが、生命維持管理官たち。

     

    いわゆる死神である。

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