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  • 逃げ切れない

    あなたは密かに視られてる。
    ジッと盗撮されている。

     あなたはキョロキョロ
     あたりを見まわす。

      それらしき不審人物見当たらない。
      それらしきカメラも穴も見つからない。


    あなたは密かに聴かれてる。
    シッカリ盗聴されている。

     あなたはオドオド
     声をひそめる。

      いくら盗聴器さがしても
      そんなものは出てこない。


    あなたは尾行されている。
    常に監視されている。

     逃げ続けるのはあなたの定め。
     棲家を移り、雑踏に紛れ。

      それでも、あなたは逃げ切れない。
      あなたの中の消せない他人。
     

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  • 波の枕

    2012/05/08

    変な詩

    誰もいない砂浜。

    海水浴シーズンには
    まだ少し早い。

    サンダル脱いで裸足になり、
    波打ち際に立つ。

    手に持っているは
    ゴム製の水枕。

    この中に
    海水を詰めるつもり。

    海水入りの水枕。

    なかなか
    素敵じゃないかしら。

    海原に浮かぶ夢とか
    見れるかも。


    ところが現実、甘くない。

    割れた貝殻踏んで
    よろめいて

    そのまま波にさらわれ
    海原へ。

    気が付いたら
    かなり沖合。

    私は泳げない。


    水枕を持ってて
    助かった。

    空気を詰めて
    栓をして

    浮き袋にしちゃいましょう。

    そうしましょう。
    そうしましょう。


    ああ、流される。
    どこまでも流される。

    そのうち
    眠くなってきた。

    海面に仰向けに寝て

    頭の下には
    水枕ならぬ空気枕。


    波を枕に見る夢は
    魚の夢ではあるまいか。

    プカプカ プカカ
     

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  • 薄切りの夢

    親しくしている方から
    ハムをいただいた。


    キッチンに立ち、
    まな板に載せ、

    包丁で切る。

    パンに挟んで食べるつもり。


    切っているうちに

    どれくらい薄く切れるか
    試してみたくなった。


    包丁にサラダ油を垂らす。

    切り方も工夫する。


    あれこれ試行錯誤の末、

    惚れ惚れするほど
    薄く切れるようになった。


    じつに見事な薄切りハム。

    これなら皆既日食だって
    透けて見えるかも。


    「うふふ」

    思わず笑ってしまう。


    それにしても

    なんて、なんて
    薄っぺらいんでしょうね。
     

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  • 不思議な扉

    2012/05/06

    変な話

    それは不思議な扉です。

    確かに扉はあるのに
    どこにあるのか誰も知りません。

    いくら探しても見つからないのです。

    なのに、ふと気付くと
    なぜか目の前にあるのだそうです。

    つまり、そういう扉なのです。


    その扉は施錠されていません。

    だから、誰でも開けることができます。

    そして、開けることができれば
    誰でも通り抜けることができます。


    それによって
    どうなるのか

    入ることになるのか
    出ることになるのか

    よくわかっていません。

    というのも

    この扉を通り抜けた者で
    こちらに戻ってきた者は

    いまだかつて
    一人としていないからです。


    さて、唐突ではありますが
    今、あなたの目の前に扉があります。


    そうです。

    冗談みたいですが
    あの不思議な扉なのです。
     

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    • Tome館長

      2013/04/16 11:43

      「こえ部」で朗読していただきました!

    • Tome館長

      2012/05/13 17:58

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

  • 誘ってみたら

    2012/05/05

    変な話

    墓場で出会った彼女は
    とても魅力的な幽霊だった。

    駄目もとで誘ってみたら
    快く僕に憑いてきてくれた。


    普通の多くの人たちには
    彼女の美しい姿は見えない。

    せいぜい寒気のようなものを
    背筋に感じるくらいだ。


    思い出したくないのか、彼女は
    幽霊になった経緯を話してくれない。

    話したくないわけでもあるのだろう。
    あえて僕も尋ねたりしない。


    彼女の言うところによると
    僕は半分ほど幽霊なのだそうだ。

    そう言われてみると、確かに
    現実感が希薄な気がする。


    「すると、僕は半分ほど死んでいるのかい?」
    「いいえ。あなたは半分ほど生きているのよ」

    なんだか同じ事のような気がするけど
    じつは微妙に違う事なのだそうだ。


    いつも彼女が側にいてくれるから
    いつだって僕は幸せな気がする。

    いつか僕は死ぬだろうけど、もう
    いつ死んでも怖くない気がする。
     

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  • あえぎ声

    俺は独身。
    時は真夜中。

    場所はマンションの一室。

    隣の部屋から壁越し、
    かすかに声が聞こえる。


    俺は耳を壁に押し当てる。

    「ああ、あああ・・・・・・」

    女のあえぎ声が聞こえる。


    俺は首をひねる。

    (はて、隣は空き家だったはず・・・・・・)


    そっと玄関のドアを開け、
    共用階段の踊り場に出る。


    隣の玄関ドアの新聞受けには
    「入居者募集」のステッカーが貼られたまま。

    見上げれば、電力量計。
    そのアルミニウムの円盤は微動だにしない。

    金属製のドアに耳を押し当てても、無音。
    自分の鼓動が聞こえるくらいだ。


    俺は自室に戻る。
    内鍵を閉める。

    まだ壁越しに声がする。


    マンションの構造上、天井から物音がしても
    真上の部屋が音源であるとは限らない。

    壁の場合も、そういうことがあるのだろうか。
    真横の部屋ではなく、その上下階であるとか・・・・・・


    再び俺は、壁に耳を押し当てる。

    「ああ、あああ・・・・・・」

    その声に聞き覚えはない。
    女の切なく悩ましい、あえぎ声。


    俺は、だんだん興奮してきた。

    股間に手が伸びる。


    その時だった。

    壁越しの女の声が大きくなったのは。

    「ああ、あああ、あんた・・・・・・聞いたわね」
     

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    2012/05/03

    空しい詩

    ねえ

      いいの?


    こんなこと
     していて

       本当に

         いいの?


    それって

      やっても
       やらなくても

         どうでもいいこと
          なんじゃ

            ないの?


    もっと

      他に
       すべきこと

         あるんじゃ

           ないの?


    せめて

      そういうのが
       あるのかないのか

         考えてみても

           いいんじゃ

             ないの?
     

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  • いくつかの鍵

    2012/05/02

    変な話

    大きな屋敷である。

    長い廊下がどこまでも続き、
    その両側には、等間隔に扉が並んでいる。


    私は、丸い金属環を片手に持っている。

    己の尻尾を噛む蛇の意匠が施された、それは
    取っ手の穴を串刺しに、いくつかの鍵を携えて離さない。


    私は、あるひとつの扉の前に立ち、
    ある想いに囚われる。

    (この扉に合う鍵は、この束の中にあるのだろうか)


    私は、金属環を目の高さに持ち上げ、
    垂れ下がる鍵に目をやる。

    (そもそも、いくつの鍵があるのだろう)


    私は、ひとつひとつ鍵を数え始める。

    しかし、それは環状になっているがゆえに
    始まりと終わりの区切りがない。

    途中で数がわからなくなってしまった。


    とりあえず私は、ひとつの鍵を選び出し、
    目の前の扉の鍵穴に挿し込んでみる。

    しかし、鍵は回らない。

    (鍵が合わないのだろうか。
     それとも、扉が合わないのだろうか)


    私は、意味もなく扉を撫でる。

    (私は、この扉を開けようとしているけれど、
     この扉でなければならない理由はあるのだろうか)


    私は、扉をノックしてみる。

    (また、仮に扉を開けることができたとして
     それから私は、なにをするつもりなのだろう)


    私は周囲を見回す。

    (このことは、どの扉についても言える)


    その時、扉の内鍵の外れる気配がした。
     

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  • いつか叶う

    2012/05/01

    明るい詩

    願い
     叶ったら

       お話は

         そこで
          おしまい。


    もっと
     続き

       聞きたいなら

         もうちょっとだけ
          我慢ね。
     

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