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  • 雲をつかむ

    2016/08/24

    愉快な話

    なんとなくできそうな気がしたので 

    空に手を伸ばしてみる。

     

    すると、不思議なことに  

    ちゃんと雲をつかむことができた。

     

    「おいおい、なにすんだ。やめろよ」

    つかまれた雲が文句まで言いだす。

     

    つかみどころのない感触ながら 

    もぞもぞ動くのがわかる。

     

    「まったく、冗談じゃないぞ。 

     人間の分際で勝手なことするな」

     

    やけに偉そうな雲である。

    なんだか心配になってきた。

     

    でも、せっかくなので 

    この雲と記念撮影することにした。

     

    コンデジで、パチリ。

     

    すると、それっきり雲は黙ってしまい 

    もう僕の手の届かない空へ帰ってしまった。

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  • もどかしい音頭

    2016/08/20

    愉快な話

    ミシン目でつながった1枚の書類には
    2件の請求額が記されてある。

    それを役所の窓口に提出して手続きをしているところ。

    「片方の分しか支払ってませんね」
    パソコンのモニター画面を見ながら受付けの女性職員。

    「ああ。それはですね・・・・」
    過去のやり取りを思い出しながら説明する私。

    両方やる予定だったが、実際には片方しかやらなかったのだ。
    だから支払いも半分だけ。

    けれども、なかなか込み入った事情があり 
    うまく内容を伝えることができない。

    もどかしい。
    どうやらボケてきたらしい。

    それで、もどかしい音頭を踊りたくなったが 
    あいにく、そんな変な踊りは知らない。

    まったくもって、もどかしい。
    もどかしいったら、ありゃしない。

    ああ、こりゃこりゃ。

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  • そら君の冒険

    2016/08/15

    愉快な話

    長く寒かった冬が終わり、ようやく 

    北の大地にも待ちに待った春が訪れました。

     

    ぽかぽか暖かい日差しに心うきうき。

    はるさんちのそら君は冒険の旅に出かけるつもりです。

     

    夜ふかしはるさん、ただいまお昼寝中。

    今が旅立つチャンスです。

     

    苦労してこしらえた秘密の通路をくぐって 

    そら君、はるさんちを抜け出しました。

     

     そらそら 空は よい天気

     そらそら そら君 ごきげんだ 

     

    時計台なんか見上げもせず 

    テレビ塔だって関係なし。

     

    赤レンガがどうしたって? 

    クラーク先生、なに言ってんの? 

     

    ラーメン横丁でチャーシューもらって 

    すすきもないのにすすきのとはこれいかに? 

     

    「これいかに?」と目覚めたら 

    はるさんが写真を撮っていました。

     

     そらそら そら君 夢見てた

     そらそら そら君 変な顔

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  • アニマル交響楽団

    2016/08/10

    愉快な話

    私は老いさらばえた指揮者である。

     

    長年、地元の交響楽団を指揮してきたが 

    そこを引退してからは趣味で動物たちを指揮している。

     

    クマに楽器を演奏させるサーカスみたいなのではなく 

    持ち前の発音発声の特技を活かしてやるのだ。

     

    スズムシの鈴の音、ウグイスのさえずり、

    キツツキのドラミング、ウサギのスタンピング、

    猫の甘え声、犬の吠え声、などなど。

     

    ライオンの咆哮なども加えたいのだが 

    さすがに世話が大変だし、そんな予算もない。

     

    ともかく、これら雑多な音声を組み合わせ

    適宜タイミングよく発するよう仕向けるわけだ。

     

    複数の犬が吠え合って収拾がつかなくなったり 

    肝心な時に眠ってしまったり、なかなか大変。

     

    それでも、ウサギにニンジン与えるフリして与えなかったり 

    猫にマタタビ嗅がせながらくすぐったりしているうちに 

    偶然のように見事なハーモニーを奏でる瞬間が訪れる。

     

    「ささやかな奇跡」と呼んでいるが 

    なかなか楽しいものである。

     

    音声だけならパソコンのソフトで編集することも可能で 

    実際にそれでCDを作ってみたこともある。

     

    しかしながら、仲間内ではウケたものの 

    やはり生演奏が一番だと思う。

     

    指揮者の動物的勘が試される 

    というものだ。

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  • さびしがり屋

    2016/07/30

    愉快な話

    えーと、もしもし。

     

    あの、私、会員登録したばかりの者なんですが 

    そちら、さびしがり屋さんですよね。

     

    話し相手になってくださる、と聞いたのですが・・・・ 

     

    ああ、そうですか。

    良かった。助かりました。

     

    私、ひとりでいると、さびしくてさびしくて 

    もう死にそうになるんですよ。

     

    ええ、そうなんです。

    ひとりでテレビとか観てても、ダメなんです。

     

    読書していても、パソコンいじっていても 

    孤独を感じるばかりで、やり切れなくなるんですよ。

     

    こういうシステムができて、ありがたいですね。

     

    ああ、そうなんですか。

    正式には、確か「気の向くまま商店街」でしたっけ。

     

    お天気屋とか恥ずかしがり屋とか 

    その日の気分屋なんてのも・・・・ 

     

    ああ、だから会員ではなくて、お客さんなんだ。

    なるほど、納得しました。

     

    通話にはポイントが必要なんですよね。

    へー、お店の商品を買ってもいいんですか。

     

    では、さびしがり屋さんとこの商品、なんですか? 

     

    ははー、お喋りロボットですか。

    ほほー、ペットのハムスターもね。

     

    えっ? 異星人の幼女? 

    まさか、それはないでしょう。

     

    えっ? そうなんですか? 

    ホントですか。

     

    なんだ。それなら、もう 

    さびしがってる場合ではありませんね。

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  • 竜の正体

    2016/07/26

    愉快な話

    竜は どこにいるのでしょう? 

     

    快晴の空に 竜はいません。

    普段、竜は 小さくなって 雲の中に隠れています。

     

    隠れている雲が 大きくなって 黒くなると 

    竜の子も 大きくなって 大人の竜になります。

     

    風が強くなったら それは竜が吐く息です。

     

    雨が降ったら それは竜の汗です。

    竜のオシッコが少々 混ざっているかもしれません。

     

    雷鳴が聞こえたら それは竜の咆哮ほうこうです。

    時々、竜だって オナラくらいしますけどね。

     

    稲妻が走ったら それは竜が 駆け抜けたのです。

     

    ええ、そうです。

    カミナリ様が 竜の正体なのでした。

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  • トラの毛

    2016/07/25

    愉快な話

    昔、トラの毛は 真っ黒でした。

    カラスの羽の色と いい勝負でした。

     

    「もっと明るい色に してください」

    トラは 神さまに お願いしました。

     

    すると 神さまは 断りました。

    「そんな願い、いちいち叶えていたら きりがない」

     

    けれども トラは 諦めません。

    いつまでも しつこく お願いするのでした。

     

    「やれやれ、仕方ないな。ただし 全部は無理だぞ」

    神さまは トラの願いを 半分だけ 叶えてやりました。

     

    そういうわけで、その時から トラの毛は 

    黄色と黒の あのシマシマに なったのです。

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  • 夕暮れの気配

    2016/07/23

    愉快な話

    なんとなく目が覚めた。

    レースのカーテン越しの窓の外、ぼんやり薄暗い。

     

    夕暮れの気配である。

     

    (寝ながら考え事をして、そのまま眠ってしまったのだな)

    そう思った。

     

    (それとも眠ろうとしていて眠ったんだっけ?)

    どうもよく思い出せない。

     

    トイレに行き、キッチンで歯を磨き、顔を洗う。

    それから畳の部屋に戻る。

     

    万年床の上に座椅子を置き、座って腰まで毛布を掛ける。

    そして考え事の続きをする。

     

    なにかしら面白い話をひとつ考えねばならない。

    それが日課になっている。

     

    どうも頭がすっきりしない。

    (今日は何をしたっけ?)

     

    思い出そうとしてもはっきり思い出せない。

    (いや、あれは昨日の話だよな)

     

    窓の外は、相変わらず薄暗い。

    (まさか・・・・)

     

    手もとの電波時計を持ち上げて見る。

    (やっぱり!)

     

    「午前」の表示。

    そう言えば、かすかに雨音がする。

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  • キカキカ

    2016/06/19

    愉快な話

    恐れていた状況は補助線とともに出現した。

    「キカキカが来た!」

     

    大きい。

    コンパスと定規だけでは太刀打ちできそうもない。

     

    「三角屋敷の長老を呼べ」

    円周に接するように伝令が走った。

     

    キカキカは容赦なかった。

    瞬く間に村は記号だらけにされてしまった。

     

    さらに、とんでもない場所に垂線を下すと 

    次々と合同条件を吐き出す。

     

    あまりの光景に、ウブな村娘がバタバタ倒れた。

    血の気の多い若い衆も頭を痛めた。

     

    「キカキカを見てはいかん!」

    公理に乗って運ばれてきた長老が叫ぶ。

     

    「あんなもん、なんの役にも立たん」

    いかにも、と村の古老たちがうなずく。

     

    キカキカは怒った。

    長老を踏みつぶすつもりだ。

     

    「愚か者め」

    長老は懐から消しゴムを取り出した。

     

     

    以上である。

     

    キカキカが長老に消されてしまったことは 

    今さら証明するまでもあるまい。

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  • 腹の虫

    2016/05/23

    愉快な話

    「グルルルル」

    腹の虫が鳴き始めた。

     

    うるさいのでエサを与えてやる。

    お菓子が少しあったので、それを食べた。

     

    カビの生えたかりんとう。

    僕が食べると、すぐに腹の虫のところまで届く。

     

    腹の虫はいやしいから、なんでも食べる。

    どうせかりんとうみたいなフンを出すんだし。

     

     

    「ギュルルルル」

    しばらくすると、また鳴き出した。

     

    うるさいな。

    迷惑電話みたいなやつだ。

     

    すぐに与えるとくせになるから、放っておく。

     

     

    「ゴロゴロゴロゴロ」

    鳴き声が変わった。

     

    どうやら怒ったらしい。

    腹の虫がおさまらないようだ。

     

    ふん、たかが虫のくせに。

    無視、無視。

     

     

    「ゾロゾロゾロゾロ」

    なんだなんだ、この鳴き声は? 

     

    うわああああ、腹の虫が外に出てきた!

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