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  • 竜の炎

    2016/11/20

    ひどい話

    主人公は異星人との混血児。

    とても勇敢な少年。

     

    かわいらしくて賢い妹 

    にくたらしくて力持ちの弟を従え 

     

    世界の平和を守るという伝説の 

    竜の炎を求め、冒険の旅に出かけた。

     

    孤児の三人を引き止める者はいなかった。

     

    父親は辺境の地で戦死した。

    勇敢な最期だったという。

     

    それぞれ母親は異なり 

    皆、出産と同時に亡くなった。

     

    どれも悲惨な最期だったという。

     

    怪物を退治したり、囚われの姫を救ったり 

    大活躍の末、ついに三人は手に入れた。

     

    永遠の平和を世界にもたらすであろうはずの竜の炎を。

     

    ところが、持ち帰ろうとした途端 

    その炎が消えてしまった。

     

    まさに伝説。

     

    もともと永遠の世界平和など 

    人知のおよぶところではなかったのだ。

     

    これにより世界平和の根拠は消滅し 

    三人による凄惨な世界分割戦争が勃発した。

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  • 死神の部屋

    2016/11/19

    怖い話

    「生命維持管理室」という立派な名称があるにもかかわらず 

    ここは皆に「死神の部屋」と呼ばれている。

     

    ここでは個々の人間の基本的生命バロメーターが管理されている。

    若々しさ、健康、気分、欲望、やさしさ、理性、などなど。

     

    無機質な数値やグラフによって表すことも可能ではあるが 

    それでは直観的なイメージがつかみにくい。

     

    そのため現在に至るまで、昔からの伝統にのっとり 

    ロウソクとその炎の状態によってリアルに表示されている。

     

    ロウソクの太さは生命力の強さ、その長さは寿命。

    色は人格のようなものに相当する。

     

    そして、そのてっぺんで燃える炎の状態は 

    まさに今この瞬間における命の燃え具合を示している。

     

    実際に何が行われているかは想像するしかない。

     

    ただし、明るさ、色、勢い、形、それらの変化によって 

    おおよそのところは察せられる。

     

    この部屋において、これらロウソクとその炎を

    一元的に管理しているのが、生命維持管理官たち。

     

    いわゆる死神である。

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  • 君が語る夢

    2016/11/18

    空しい詩

    君が満面の笑みをたたえ 

    嬉しそうに語るところの君の夢は 

     

    僕が頬杖をついて 

    つまらなそうに語るところの僕の現実と 

     

    並ぶことも 重なることも 

    交わることもなく 

     

    無限遠点に届くどころか すぐ目の前で 

    力尽きて消えてしまった。

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  • 食べ物

    2016/11/17

    ひどい話

    食べ物が床に落ちている。

     

    料理の途中で落ちたのか 

    食事の途中で落ちたのか 

     

    どちらなのか どちらでもないのか 

    さっぱり心当たりがない。

     

    それらは大小いくつかあって 

    色も形も様々。

     

    しかも、よくよく観察すれば 

    ごくかすかながら もぞもぞと動いている。

     

    まだ生きているのだ。

     

    正直なところ 不気味である。

    目を背け、すっかり忘れてしまいたいくらいだ。

     

    しかし、それが食べ物である以上 

    どうしても食べなければいけないような気がする。

     

    食べずに捨てるのはもったいない。

    いや、申しわけない気持ちさえする。

     

    ここは勇気を出すのだ。

     

    ひとつ 白っぽい豆腐のような 

    比較的小さなそれを 箸で拾い上げる。

     

    そのまま口にするのはためらわれるので 

    水道の水で軽く洗う。

     

    唇や口蓋に触れないよう 

    そっと前歯の先だけで噛んでみる。

     

    たとえるなら イカを噛むような歯ごたえ。

     

    決意して飲み込む。

    まるで味なんかわからない。

     

    喉に抵抗らしきものもなかったが 

    なんともいとわしい気分が全身にひろがる。

     

    いやだ。

    もうたくさんだ。

     

    いくら食べ物だからって 

    こんなに我慢してまで食べたくない。

     

    許されようが 許されまいが 

    残りは捨てるしかない。

     

    それで飢えるなら 仕方ない。

     

    そもそも 食べ物を落としたりしては

    いけなかったのだ。

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  • どこかの泥沼

    2016/11/16

    変な話

    どこか知らない場所に沼がある。

    ただし、その沼を見た者はいない。

     

    もともとは水の澄んだきれいな池だった。

    魚なども泳いでいたそうである。

     

    それが今では真黒な泥沼。

    腐った臭いを周囲に撒き散らしている。

     

    魚どころかイトミミズさえも逃げてしまった。

     

    なぜこんなに汚れてしまったのかというと 

    じつは沼の底に穴があるから。

     

    その穴の奥は細い管になっていて 

    地中をどこまでも延びている。

     

    どこか知らないところにつながっていて 

    そこから汚れたものが送られてくる。

     

    そのために池が泥沼となってしまったのだ。

     

    それにしても沼の汚れはもう限界。

    よくもまあ地中の管が詰まらないものである。

     

    そのうち逆流するのではなかろうか。

     

    たまりにたまった真黒な汚泥の逆流。

    ものすごいことになりそうだ。

     

    このまま放っておいていいのかね。

    どこにつながっているのか知らないけどさ。

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  • 押入れの女

    2016/11/15

    怖い話

    妙に安いな、と思いつつも借りたマンションは 

    どうやら事故物件だったらしい。

     

    寝室兼用の和室には引き戸式の押入れがあり 

    おもに寝具を入れておくわけだが、ここに出るのである。

     

    寝る前に閉めたはずのふすまが夜な夜な開き 

    中にいる何者かの眼が、外のこちらを覗くのである。

     

    その眼と視線を合わせてしまったが最後、もう動けなくなる。

    いわゆる金縛り。

     

    まぶたを閉じることもならず、一晩中にらめっこ。

    ふすまが閉まると、気を失うように眠る。

     

    夢だったのかな、と最初は疑ったものだが 

    どうも記憶が生々しすぎる。

     

    そのうち、ふすまのすき間から手が出てきた。

    日を置いて、片方の手首、ひじ、腕のつけ根まで。

     

    さらに、同じ具合に足も出てきた。

    じらすように足首、ひざ小僧、太ももまで突き出された。

     

    明らかに若い女、それもなかなかの美脚。

    情けない話、こんな状況なのに、おれは興奮してしまった。

     

    真夏に半裸の寝姿だったわけで 

    押入れの住人に股間の膨らみを見られたのだろう。

     

    調子づいたのか、ついに彼女は押入れの二段目から 

    こちら和室の畳の上に足を下してきた。

     

    なまめかしい浴衣姿である。

    そして、それをまた、なまめかしく脱ぐのである。

     

    (ははあ、なるほど)

    身動きすることもならず、おれは思った。

     

    (露出狂の幽霊だったか)

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  • 洗い髪

    真夜中 濡れた髪がまとわりつく。

     

     

    ぬらぬら胸を撫で わき腹を這い 

    両腕をねじりあげ 後ろ手に縛られる。

     

    両脚は みじめな形に 拡げられている。

     

    口は塞がれ 首はきつく絞められ 

    声は出せず 息もできない。

     

    曲げられた背骨の きしむ音。

    深く侵入する感触の股間。

     

    このまま死ぬ予感。

    そして 闇。

     

     

    翌朝 すっかり髪は乾いている。

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  • タイム箪笥

    2016/11/13

    変な話

    ある独居老人が行方不明となり 

    その家の古い箪笥(たんす)の中から赤ん坊が発見された。

     

    その赤ん坊がどうなったかは知らないが 

    問題の箪笥は今、私の持ち物になっている。

     

    「片付け屋」とも呼ばれる遺品整理業者から流れたのだ。

     

    いわゆる孤独死の汚部屋の遺品ではないから 

    死臭もなく、由緒ありそうな立派な古箪笥である。

     

    そして、この箪笥をしばらく使っているうちに 

    私は奇妙な現象に気づいた。

     

    その引き出しの中に物をしまっておくと 

    そのうち別の物に変わってしまうのである。

     

    まずTシャツの色や絵柄が変わったのには驚いた。

    地味なデザインが派手になったのである。

     

    あれこれ中に入れる物を変えて調べてみた。

     

    すると、理屈は不明だが、この現象 

    どうやら収納する引き出しの位置によるらしい。

     

    引き出しの上の段ほど新しくなり、下ほど古くなる。

    同じく左側は特殊になり、右に寄ると一般的になる。

     

    生玉子を入れておいたら消滅したこともあり 

    例外はあるものの、大体そんな感じなのだ。

     

    ということは・・・・ 

     

    引き出しの中から発見されたという赤ん坊、 

    おそらく行方不明の老人その人に違いあるまい。

     

    しかしながら、どうも不思議なのは 

    上の段の引き出しは小さいのばかりだということ。

     

    たとえ小柄だったとしても 

    大人が中に入れたとはとても思えないのだが・・・・

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  • 良くも悪くも

    2016/11/12

    論 説

    良い時は 全体を見よ 

    それだけではない 

     

    悪い時は 部分を見よ 

    大したことはない

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  • いじめないでね

    2016/11/11

    ひどい話

    お願いだから、僕をいじめないでね。

    今、僕をいじめると、あとで君に仕返しするよ。

     

    僕はね、とっても陰湿なんだ。

    ケンカは弱いけど、泣き寝入りはしないよ。

     

    たとえば、そうだね 

    君の家に火をつけちゃうかもしれない。

     

    そりゃ犯罪だけど、つまり追い詰められたら 

    そういう危険なことだってやりかねないってことさ。

     

    または、君がコンビニで万引きしたこと 

    君のお母さんに言いつけちゃうかもしれない。

     

    なぜか偶然だけど、その証拠写真もあるし。

    まったくケータイって便利だよね。

     

    それとも、君のお母さんが工藤先生と浮気してること 

    君のお父さんに言いつけようかな。

     

    ウソなもんか。

    ちゃんと僕は知ってるんだよ。

     

    ふん。まあ実際のところ 

    ウソだってかまわないんだけどさ、僕は。

     

    ねっ、わかったろ。

    そういうわけだから、僕をいじめないでね。

     

    まさか。とんでもないよ。

    僕、君をいじめてなんかいないって。

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