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  • お天気雨

    2009/03/03

    暗い詩

      雲ひとつないのに
      どうして雨が降るんだろ


    雨傘 サシテイルノハ 私ダケ


      恋人みたいなのに
      どうして他人なんだろ


    雨傘 ヤブレテイルノハ 私ダケ


      笑っているのに
      どうして泣くんだろ


    雨傘 ステラレナイノハ 私ダケ
     

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  • 泥 棒

    2009/02/21

    暗い詩

    逃げてゆく 逃げてゆく
    誰か あの泥棒を 捕まえて


    金庫は 破られたけど
    盗まれるものなど なかったはず

    なんにもない 空っぽの 金庫
    はじめから なんにも 入ってない


    真っ黒な 覆面をして
    足跡も 指紋も残さず 去ってゆく

    あいつを 誰か 捕まえて
    お願い だから 捕まえて


    どうして 私から 逃げるの
    あんた まだなんにも 盗んでない
     

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  • 赤い花

    2009/02/19

    暗い詩

    かつて
    地の果ての
    戦場で見た

     その草は
     雨水では
     育たないのだ

    血を
    与えなければ
    枯れてしまう

     それも
     人の血
     でなければ


    夏の終わりに
    一輪の花が
    咲く 

     その脈打つような
     血色の
     花弁 

    ちょっと
    掘りおこして
    みたくなる

     そんな赤い花が
     もしも
     咲いていたら
     

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    • Tome館長

      2014/10/05 17:14

      「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2014/10/05 17:13

      「さとる文庫 2号館」もぐらさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/09/25 16:40

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 暗い遊び

    2009/02/15

    暗い詩

    鼻欠けお婆にさえ煙たがれたもん。

    「この子はいつも、屍とばかり遊びおる」 


    そうなの。

    遊び仲間は
    みんな死んでるの。

    お葬式してあげたわ。
    火葬、土葬、水葬、風葬、雨あられ。

    墓も立派よ。
    石三つ。


    骨の髄まで舐めてあげたわ。

    頭蓋骨に髪を巻いたら
    蹴鞠ができた。

    尾骨と鎖骨を組んだら
    知恵の輪できた。


    だから、大人に嫌われる。


    もしかしたら
    笑顔を忘れたのかな。

    大人に見せるための素敵な笑顔。


    でも、やっぱり
    生きてる友だちが欲しいな。

    まるで生きてるみたいな反応なんかして。

    きっと、楽しいだろうねえ。


    ねえ、誰か。
    誰か。


    ああ、そうだ。
    アナタがいいわ。

    ねえ、アナタ。

    アタシと一緒に遊びましょ。
     

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    • Tome館長

      2012/07/13 21:56

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2012/07/10 22:39

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 時の墓場

    2009/02/12

    暗い詩

    夜 眠れなくて

     目覚まし時計の
     時を刻む音が

     闇に響く


    どうしても 眠れなくて

     目覚まし時計を
     押入れの中に

     放り込む


    このまま 眠ってしまえば

     押入れの中は
     闇に葬られた

     時の墓場
     

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  • 毒りんご

    2009/02/11

    暗い詩

    闇に潜む魔女は
    呪文を唱える 醜い老婆

    頭蓋骨の割れ鍋で
    グツグツ煮ては ニタニタ笑う


     コウモリの羽 トカゲの尻尾
     処女の唾液 黒猫の腋毛

     血に汚れた 札束
     商人の 二枚舌


    ドクロの杖で かきまわし
    煮汁を塗れば 毒りんご

    舐めれば 生きて腐り
    食べれば 腐りて死ぬ

    死ぬまで 気づかず
    死んだら もう気づけない
     

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    • Tome館長

      2014/09/22 01:31

      「さとる文庫 2号館」もぐらさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/09/18 02:58

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 汚れた人形

    2009/02/07

    暗い詩

    冬の浜辺の
     砂に埋もれた人形を

       繰り返し撫でるは
        波の白い 手と手と手


    服汚れ 髪乱れ
     腕千切れ

       それでも唇は
        奇妙に微笑んでいる


    持ち上げれば
     細き首は折れ

       ガラスの目玉
        ボトリと落ちる


    傷心の君を
     胸に抱けど

       灰色の砂
        ただ零れるばかり
     

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  • 夜が泣く

    2009/02/06

    暗い詩

    いまにも泣きそうな
    本当に泣いてしまいそうな

    そんな夜がある。


    みんなが楽しそうでも
    いくら君が笑わせようとしても

    なおさら泣けてくる


    そんなやるせない
    どうしようもない

    もう泣くしかないような


    そんな夜がある。
     

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    • Tome館長

      2013/06/10 00:14

      「さとる文庫 2号館」もぐらさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2012/09/14 16:57

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 迷 い

    2008/11/21

    暗い詩

    気づかない
    ふりをしていた


    黙って
    うつむいたままの

    君が

    そこにいるのに

    なにかに心を奪われ

    まるで君なんか
    そこにいなくて

    昨日のことなんか
    もうすっかり忘れてしまって

    意味のない笑みを

    いやらしく
    横顔に浮かべながら

    なにも気づかない
    ふりをして

    むしろ見せつけるように

    君がそこからいなくなるまで

    君ではない
    誰かと

    君に関係のない
    なにかについて

    ずっと
    話し続けた


    迷いがあった

    そんな気がする
     

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  • 魔法の目薬

    2008/11/21

    暗い詩

      母親は
      魔女に違いない。

      呪文を唱え、
      我が子に魔法の目薬をさす。


    一滴で、見えるものが見えてくる。

    二滴で、見たいものが見えてくる。

    三滴で、見るべきものが見えてくる。

    四滴で、見えないものが見えてくる。

    五滴で、見たくないものが見えてくる。

    六滴で、見てはいけないものが見えてくる。

    七滴で、見えるものが見えなくなる。
     

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