雪の城
2008/12/02
その年の冬は大雪だった。
屋根から下ろした雪が屋根より高くなった。
前年は、雪でスポーツカーをつくった。
その年は、雪で城をつくる計画だった。
しっかりと城の設計図まで書いた。
方眼紙に定規を当てて書いた立派なもの。
つくる場所は、家の裏の畑の上。
もちろん雪に埋もれて畝(うね)など見えない。
ある晴れた朝、シャベルを雪面に突き刺した。
アーチ式の門を立て、城壁をめぐらす。
中央には螺旋階段のある、大きな塔を築く。
王と女王のための豪華な玉座も並べて置く。
美しい姫君のための寝室まで用意した。
天蓋付きのベッドが備えられてあるのだ。
氷柱を何本も削ったりして、大変だった。
水彩絵の具で雪の表面に着色したりもした。
熱中のあまり、時の立つのも忘れてしまった。
そして、とうとう見事な雪の城が完成した。
本物の城にも負けていない、と思った。
それにしても、完成するのが遅すぎた。
冬も春もとうに過ぎ、夏の盛りになっていた。
ログインするとコメントを投稿できます。