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2016/12/10
正義がきらいだ。
その威を借る狐
正義の使者どもがきらいだ。
大いばりで大義名分
錦の御旗みはたを振りかざす。
愛、保護、安全、平等、平和、・・・・
それらしき美名の下
どんな横暴も許されるとふんでいる。
きゃつらに退治される立場の悪の組織なるものは
そんなに迷惑な存在か。
必要悪ではないのか。
疑わしきを罰するのか。
正義の味方の引き立て役に
させられているだけではないのか。
きゃつらに問いたい。
イイカッコする前に
地味ながらもっと実質あること
本当になすべきことがあるのではないのか
と、怒りをこめて。
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2016/12/09
「ただいま」
「おかえりなさい」
ぼくは、この遊びをやめたいのだ。
「腹へったな」
「すぐ夕飯にしますね」
最初は、そこそこ面白かった。
「お風呂も沸いてますよ」
「うん。あとで入る」
でも、こんなこと毎日やらされてはたまらない。
「ああ、疲れたよ」
「毎日、ごくろうさま」
さすがに、もう限界のような気がする。
「あのさ、そろそろ別の遊び、しない?」
「あら? ちっとも遊んでなんかいなくてよ」
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2016/12/08
神殿が荒らされ、秘宝の短剣が盗まれた。
それを手にする者
人を刺さずにいられなくなる、という。
もし身近に誰もいなければ
己の胸さえ刺す、という。
奪われるまで、力尽きるまで
それこそ死ぬまで刺し続ける、という。
まさに呪われた短剣。
おちおち血糊も拭けやしない。
ただし揃いの鞘の内に短剣あれば
その呪いが外へ及ぶことはない、という。
ところが残念ながら
宝石で飾られた美しい鞘は
神殿の床に落ちていた。
しかも修復できそうもないほど無残に
折れて割れ、粉々に砕け散って。
それゆえか神殿の門から外へ累々と
血と屍の列が続く、続く。
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2016/12/07
その緑色の家は葉っぱに覆われていた。
こういう家を見た経験は二度目だったので
最初の家の時よりは冷静でいられた。
しかし、その玄関らしき暗い穴から
人が出てくるのを見た瞬間、さすがに驚いた。
廃屋ではなかったのだ。
ちゃんと人が住んでいたのだ。
しかも、お嬢さんと呼びたくなるような
色白で清楚な感じの若い女性だった。
どうも信じられない。
この家の中はどうなっているのだ。
ナメクジとかダンゴ虫とかアリとかゲジゲジとか
ウジャウジャ這いまわっていそうな気がする。
案外、たまたま不動産の売買とかの件で
関係者が下調べしていただけ、とか。
まあ、もっとも、自家用車に寝泊まりするような
隠れホームレスのOLだっているそうだから
それに比べれば大したことではないのかもね。
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2016/12/06
寒くも暖かくもない穏やかな昼下がり。
黙って浜辺に腰おろし
ぼんやり遠い水平線を眺めていた。
低く浮かぶ麦わら帽子そっくりの雲。
または雲そっくりの麦わら帽子。
打ち寄せる波の手招き。
幾千もの白い手がおいでおいでする。
僕のかたわらには人魚姫。
無防備にも裸のまま安らかに眠る。
きれいな爪先、かわいらしい膝に
なまめかしくも美しい下半身。
その上半身はウロコに覆われ
背ビレ、胸ビレ、エラのある醜い魚。
まぶたのないどんより濁ったその眼まなこで
どんな夢を見るのやら。
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2016/12/05
「おれ、やったよ」
ユウタが立ち上がりながら言う。
「えっ? ほんと?」
僕はベンチに座ったまま驚く。
「うん。やった」
ユウタは前の方を向いている。
あんな見飽きた風景に興味あるわけないから
きっと僕と目を合わせたくないのだ。
「いつ?」
「昨日、みんなと別れてから」
続けて「どこで?」とは尋ねない。
その先はユウタが自分から言うべきなのだ。
僕は考え込んでしまう。
あんなこと、僕にできるだろうか。
いや、無理だ。
どう考えても、できそうもない。
「でも、もう二度としたくないね」
「・・・・そうなんだ」
斜め後ろから見上げるユウタの横顔は
なんだか見知らぬ少年のそれのように見えた。
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2016/12/04
人格調査は、地球上に住むすべての人と世帯を対象とする
この惑星の最も重要な統計調査です。
地球人の人格や意識の実態を明らかにするため
人格法という法律に基づき、5年に一度実施されます。
人格調査の結果は福祉施策や生活環境整備、災害対策など
地球の未来をつくるために欠かせない
様々な施策の計画策定などに利用されます。
1 世帯員の数
2 人格の種類
3 氏名および善悪の別
4 世帯主との政治的なつながり
5 最初の人格が確立した年月
6 思想的な同志の有無
7 宗教または信念
8 現在の思想を持つようになってからの期間
9 5年前には何を考えていましたか
10 9月24日から30日までの1週間に何を考えましたか
11 巡礼地または潜伏地
12 受け売りか自説かの別
13 政治結社・宗教団体などの名称および活動の内容
14 本人の意識の内容
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2016/12/03
「ここからあたしんちへ行くにはね
この通路を抜けるのが近道なんだよ」
下校途中、あかねちゃんが言う。
「えっ? それっておかしいよ。だって
あかねちゃんち、この道をまっすぐのところじゃん」
ぼくは算数の図形の話をしたくなる。
「そう思うでしょ? でも違うんだな、これが」
あかねちゃん、その狭い隙間から中に入ってしまった。
しょうがないので、ぼくも続く。
「ここ、よそんちの庭じゃないの?」
「そうよ」
「見つかったら怒られるよ」
「平気だって。当然って顔してれば、大丈夫」
それから小川を飛び越え、線路下のトンネルをくぐると
見覚えのある場所に出た。
「あれ? ここって・・・・」
「そうよ。あれがあたしんち」
本当に近道なのだった。
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2016/12/02
失敗や事故や災害、放っておいたら起こって当然。
可能性ある限り、未然に防ぐ絶対の手段はあるまい。
自分たちの判断が正しいかどうか
その判断を下すのも自分たちの判断だから。
それゆえ安全性の確保には限界がある。
最善の防災対策は、起こる可能性を減らすこと。
できれば消し去ること。
家の中にいれば、まず交通事故には遭わない。
道路からクルマを締め出せば、なおさら。
欲出さば災いあり。
とかく余計なものが多すぎる。
ないで済むなら、ないに越したことない。
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2016/12/01
自炊のご飯は玄米と決めている。
そう。
栄養あれど、白米ほどおいしくない。
そのため
あまり食欲がわかない。
しかしながら
それだからこそ良いのである。
おいしくて、つい食べ過ぎてしまう
という心配がない。
今すべき事柄に集中できる。
そして、少しだけ食べる分には
十分においしいのである。
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