Tome Bank

main visual

Tome館長

m
r

Tome館長

CREATOR

  • 3

    Fav 1,206
  • 9

    View 6,102,234
  • p

    Works 3,356
  • 倉庫の床

    縛られ、倉庫の床に転がされている。

    コンクリートの床の冷たさとかたさは 
    ああ、拉致されているんだなあ 
    という感慨で私の胸を一杯にさせる。

    肩から足首まで焼き豚のように縛られ 
    さらに両手に手錠までかけられていながら 
    猿ぐつわを口にはめられていないのは 

    ここが、大声で救いを求めたとしても 
    救助される見込みのない僻地であることを 
    露骨に暗示している、ように思われる。

    見張りはいない。私ひとりきりだ。

    見上げると、倉庫の高い天井に
    一匹のコウモリがぶら下がっている。

    まさかあれが見張りとは思えない。

    ときおり遠い汽笛のような音がするのは
    窓の隙間から風が入るためだろう。

    曇りガラスなので屋外の景色は見えない。

    なんとかすれば立ち上がれそうだが 
    なんとなく立ち上がる意欲が湧かない。

    縛られ、倉庫の床に転がされているのも 
    そんなに悪くない、ような気がする。
     

    Comment (2)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
    • Tome館長

      2014/09/05 10:06

      「こえ部」で朗読していただきました!

    • Tome館長

      2011/05/06 12:17

      ケロログ「しゃべりたいむ」かおりサンが朗読してくださいました!

  • 姿 見

    2008/10/30

    暗い詩

    嫁入り道具の箪笥に貼りついた姿見が
     ある朝、めりめりと音を立てて剥がれ、

       戦場で消息が途絶えたはずの夫が現われる。


    割れた硝子の破片が女の手首に突き刺さり、
     手首から床に垂れ落ちる血を女は見詰める。

       それを夫も表情のないまま見詰めている。


    ねじ切れそうなくらいに首をねじ曲げ、
     女は項垂れたまま窓から曇り空を見上げる。

       醜くなるほんの手前まで歪んだ美しい顔。


    やがて女の悲鳴が陰々と響き始める。
     

    Comment (1)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 水面の神話

    まず最初に、水面があった。
    それは厚さのない鏡であった。

    水面には表裏の区別はなく、
    そこに姿を映す者はいなかった。

    音も光もなんにも存在しないので
    やがて水面はいたたまれなくなった。

    わだかまりが生まれ、
    悶え、歪み、乱れ、

    ついに水面に波紋が広がった。


    限界を超えた水面は千切れ、
    あるいは泡、あるいは雫となった。

    表裏の区別がないため
    泡と雫の区別もなかった。

    それらは光となり、
    また闇となった。


    やがて光は星屑となり、
    闇は神話となったのである。
     

    Comment (1)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 証 明

    2008/10/28

    論 説

    現実が想像の世界であることの証明。


    まず、現実が想像の世界でないと仮定する。

    すると、非想像世界を想像することになる。

    つまり、これは空想である。


    次に、現実が想像の世界であると仮定する。

    すると、想像世界を想像することになる。

    つまり、これは認識である。


    ところで、現実は認識するものであり、
    空想するものではない。


    ゆえに、現実は想像の世界である。


    以上、証明終わり。
     

    Comment (1)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 獅子の首

    2008/10/28

    変な詩

    獅子の首が落ちた。

    でも獅子は気づかずに
    その首を食べてしまった。


    食べた後で獅子は気がついた。
    あれは自分の首だったのだと・・・・・・

    でもどうやって食べたのだろう。
    食べるための口もないのに・・・・・・

    獅子は首をひねるのだった。
    ひねるための首もないのに・・・・・・
     

    Comment (1)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 四 季

    2008/10/26

    空しい詩

    ねえさんは 街で春を売ります。
    にいさんは 海で夏と遊びます。
    いもうとは 野で秋をひろいます。
    おとうとは 山で冬に抱かれます。


      なにが楽しいというのでしょう。
      なにが悲しいというのでしょう。


    いつも季節は めぐるばかりです。
     

    Comment (2)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
    • Tome館長

      2013/07/13 09:54

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2011/07/07 02:31

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 逆さまの顔

    2008/10/26

    変な詩

    君が悲しげな声をあげた時

      あわてて君がつけた顔は
       上下逆さまだったから

         僕はつい笑ってしまったんだ


            それについては君に謝るけど

          でもね
         僕は思うんだけど

       そんな時は
      そんな顔をすればいいのに
     

    Comment (2)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
    • Tome館長

      2012/08/24 15:28

      ケロログ「しゃべりたいむ」かおりさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2011/06/16 13:15

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 壊れた恋人

    2008/10/26

    愛しい詩

    恋人が壊れてしまった。

    あんなに楽しそうに笑っていたのに。
    ほんとに壊れてしまった。動かない。

    どうしてなんだ。まだ新品なのに。

    あんなことしたからかな。
    普通だよな。あんなことくらい。

    でも、ちょっと乱暴だったかな。
    平気だよな。恋人なんだから。

    もともと欠陥品だったのかな。
    うん。そうかも。なんか変だったもん。

    それにしても、困った。どうしよう。
    ええと、そうだ。分解してみようか。

    いやいや、駄目だ。危険すぎる。
    ひよっとしたら、爆発するかも。

    それに、きっと元に戻せなくなる。

    恋人の中身なんて、グチャグチャで
    複雑に決まってるんだから。
     

    Comment (2)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
    • Tome館長

      2011/11/27 21:26

      「しゃべりたいむ」かおりさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2011/08/18 12:50

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 蜘蛛の巣

    2008/10/25

    愛しい詩

    あたしゃ蜘蛛

      つぶらな八個の眼
       いやらしい八本の脚

         銀の糸で 罠を張り
          闇に潜んで 待ち伏せる


    あんたは蛾

      おびえた二個の複眼
       さまよう二本の触覚

         銀の鱗粉 撒き散らし
          月なき夜に 囚われる
     

    Comment (2)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
    • Tome館長

      2011/10/25 00:57

      「しゃべりたいむ」かおりさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2011/09/11 00:16

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 鏡も見ず

      麻痺した触覚を頼りに
       そおっと指先でつまんで

         べりべりべりべりべりべりと

           はがした唇の干からびた皮を
            どこに捨てようか

          考えてない


    痛みを伴い

      錆びついた血の味を
       ぬらりと舌先に感じ

         ぺろぺろぺろぺろぺろぺろと

           濡れはじめる唇のひび割れを
            見せつけようとして

          誰もいない
     

    Comment (2)

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
    • Tome館長

      2011/09/11 19:00

      「こえ部」で朗読していただきました!

    • Tome館長

      2011/04/01 00:35

      ケロログ「しゃべりたいむ」かおりサンに朗読していただきました!

RSS
k
k