エリコちゃんがスケッチブックに
エリコちゃんの絵を上手にかきました。
クレヨンでかいたエリコちゃんの自画像。
ママの手鏡を見ながら
苦労してかいたので
とてもかわいらしい女の子にかけました。
それなのに、それをかいたエリコちゃんは
あまりうれしくないのでした。
スケッチブックのエリコちゃんの方が
手鏡にうつる本物のエリコちゃんより
なんだかかわいらしく見えたからです。
エリコちゃんはおもしろくありません。
エリコちゃんはぷんと怒って
スケッチブックを床にほうりなげました。
ところがそのとき、エリコちゃんは
大変な失敗をしてしまいました。
手鏡を床に落として
割ってしまったのです。
しまった、とエリコちゃんは思いました。
ママのたいせつな手鏡だったからです。
スケッチブックのエリコちゃんが
手鏡を割ったエリコちゃんを見上げて
いかにもうれしそうに笑っています。
エリコちゃんは頭にきてしまいました。
スケッチブックを床からひろい上げると
黒とか灰色とか黄土色とか
きらいな色のクレヨンばかりえらんで
自画像のエリコちゃんの顔を
メチャクチャにしてしまいました。
途中でクレヨンが折れてしまったほどです。
こうして自画像のエリコちゃんは
すっかり汚れてしまいました。
いい気味だ、とエリコちゃんは思いました。
なのにエリコちゃんは泣いてしまって
なみだのせいで部屋がゆがんで見えるのでした。
いつまで泣いていてもしかたありません。
床にちらばった鏡のかけらをひとつひとつ
エリコちゃんはひろい始めました。
かけらをひろい集めて、テープでくっつけて
鏡をもとどおりにしようと考えたのです。
でも、最後のひとかけらだけは
どんなにさがしても見つからないのでした。
ですから、エリコちゃんが
つぎはぎだらけの鏡を持ち上げてみると
ガタピシャしたエリコちゃんの顔のまんなかに
指が入るくらいの穴があいているのでした。
そして、汚れたエリコちゃんの自画像が
その小さな暗い穴のむこう側に
ぽっかり浮かんで見えるのでした。
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