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汚れた女

2008/07/22

切ない話

 
あんまり汚れてるから
とにかく洗ってやることにした。


泥だらけの足。
手なんか血まみれだ。

わけのわからないものが
背中に付着している。

髪もひどい。
坊主にするしかない。

「くそっ!
 どうしたらこんなに汚れるんだ」


こすってもこすっても落ちやしない。
さすがに腕が疲れてきた。

削るようにしなければ
落ちそうもないところもある。

「この汚れだけは
 落ちないかもしれないぞ」


眉間にしわを寄せるが
女は泣かない。

その汚れた目で
じっと見上げるだけ。
 

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林檎の樹の下

2008/07/22

愛しい詩

 
林檎の樹の下にあなたがいる
ワンピースが風にゆれている

林檎の樹の下にあなたがいる
微笑もうとして失敗している

林檎の樹の下にあなたがいる
わたしが近づくの待っている

林檎の樹の下にあなたがいる
いるはずのないあなたがいる
 

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公園の幽霊

2008/07/21

怖い話

 
夜の児童公園はさびしそう。
遊ぶ子どもの姿はどこにもない。

でも、ブランコが揺れている。
誰もいないのに、風もないのに・・・・・・


おや?

白い花束が地面に落ちてる。

わたしは気になって、拾いあげた。


「それ、きれいな花ね」

かすかな声だった。


振り向くと、小さな女の子。
ブランコに乗って、揺れていた。

そして、向こう側が透けて見えた。


(この子、幽霊に違いない!)

怖くて、わたしは逃げたくなった。

でも、足が重くて動かない。


「まだ、わかってないのね」

ブランコから降りると、
女の子はわたしに近づいてきた。

そして、ひどく悲しそうな顔のまま
白い花束を見つめた。


「それ、あんたのよ」
 

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猫背の犬

2008/07/20

楽しい詩

おいら猫舌
 猫背の犬

   犬歯隠して
    猫の目キラリ


三年の恩を
 三日で忘れ

   マタタビ舐めて
    猫まねき


犬小屋の床で
 爪を研ぎ

   月夜の晩に
    吠えたりしない
 

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ね え

2008/07/19

愛しい詩

いつか君が
 大きくなって

僕とのことを
 ふと思い出したら

いったい君は

  どんな気持ちに
   なるんだろうね
 

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陽だまり

2008/07/19

明るい詩

あなたの眠る陽だまりに
隕石が落ちてきたのです。

あなたは色と形と重さを失い、
わずかに声だけが残りました。


「わたしが生まれたわけは
 わたしが生まれたいと望んだから」


大きな穴があいてしまったけど、
そこは今でも陽だまりです。
 

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恋人の木

2008/07/18

切ない話

恋人の脚に根が生えてきた。

きれいだった彼女のふくらはぎが
今では見る影もない。


「木になってしまうんだね」

僕がそんなことを言うから
彼女は淋しそうにうなずく。

針葉樹に似てきた緑の髪がゆれる。
そんな動作さえ苦しそうだ。


すっかり痩せて、木の枝のような腕。

ほとんど食事をとっていない。
このままでは枯れてしまう。

諦めよう。もう限界だ。


恋人を腕に抱え、庭へ運ぶ。

軽い。
信じられないくらい軽い。


「ここ、日当たり良さそうだね」

僕がそんなことを言うから
彼女は無理して苦しそうにうなずいて

籐椅子が軋むような音をさせた。
 

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おもちゃの王国

2008/07/17

楽しい詩

さあさ、おもちゃの兵隊がやってくるぞ。
あの勇ましい鼓笛隊の行進が聞こえないか。


 チイタカタッタ タカタッタ
 チイチイタカタ タカタッタ


弱い者いじめの悪い子を捕まえにきたんだ。
おもちゃの王国に連れてかれたら大変だ。

おもちゃの森は、ゼンマイ仕掛けの遊園地。
おもちゃの川は、いつも下から上へ流れてる。

君が泣くと、おもちゃの王様、笑っちゃう。

縛られて、おもちゃの兵隊にされちゃって
うんと背中のネジを巻かれて、さあ行進だ。

ほらほら、おもちゃの兵隊がやってきたぞ。


 チイタカタッタ タカタッタ
 チイチイタカタ タカタッタ
 

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紫の姫

2008/07/16

無邪気な話

青い騎士と赤い騎士が、決闘をします。


青い騎士は、賢くて美しい。
赤い騎士は、強くてたくましい。

勝者は、紫の姫を妃とします。
敗者は、死神を友とします。


紫の姫ときたら、かわいそう。

「お願い。どちらも死なないで」

美しい紫の涙がこぼれます。

「片方だけじゃ、あたし、いや!」
 

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エリコちゃん

2008/07/15

切ない話

エリコちゃんがスケッチブックに
エリコちゃんの絵を上手にかきました。

クレヨンでかいたエリコちゃんの自画像。

ママの手鏡を見ながら
苦労してかいたので

とてもかわいらしい女の子にかけました。

それなのに、それをかいたエリコちゃんは
あまりうれしくないのでした。

スケッチブックのエリコちゃんの方が

手鏡にうつる本物のエリコちゃんより
なんだかかわいらしく見えたからです。

エリコちゃんはおもしろくありません。

エリコちゃんはぷんと怒って
スケッチブックを床にほうりなげました。

ところがそのとき、エリコちゃんは
大変な失敗をしてしまいました。

手鏡を床に落として
割ってしまったのです。

しまった、とエリコちゃんは思いました。
ママのたいせつな手鏡だったからです。

スケッチブックのエリコちゃんが

手鏡を割ったエリコちゃんを見上げて
いかにもうれしそうに笑っています。

エリコちゃんは頭にきてしまいました。

スケッチブックを床からひろい上げると

黒とか灰色とか黄土色とか
きらいな色のクレヨンばかりえらんで

自画像のエリコちゃんの顔を
メチャクチャにしてしまいました。

途中でクレヨンが折れてしまったほどです。

こうして自画像のエリコちゃんは
すっかり汚れてしまいました。

いい気味だ、とエリコちゃんは思いました。

なのにエリコちゃんは泣いてしまって
なみだのせいで部屋がゆがんで見えるのでした。

いつまで泣いていてもしかたありません。

床にちらばった鏡のかけらをひとつひとつ
エリコちゃんはひろい始めました。

かけらをひろい集めて、テープでくっつけて
鏡をもとどおりにしようと考えたのです。

でも、最後のひとかけらだけは
どんなにさがしても見つからないのでした。

ですから、エリコちゃんが
つぎはぎだらけの鏡を持ち上げてみると

ガタピシャしたエリコちゃんの顔のまんなかに
指が入るくらいの穴があいているのでした。

そして、汚れたエリコちゃんの自画像が

その小さな暗い穴のむこう側に
ぽっかり浮かんで見えるのでした。
 

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