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2008/10/19
夢中になって交尾をしていたら
彼女に頭を切り落とされてしまった。
うっかりしていた。
彼女の両腕は鎌になっていたのだ。
彼女は落ちた頭を拾い上げ、
わざと僕に見せつけるように
眉間にシワを寄せて食べ始める。
途端に僕は悲しくなる。
もっとうまそうに食べてくれても
いいじゃないか。
僕の頭が泣いている。
だから彼女が喜んでいる。
それでも僕は、交尾をやめないのだ。
やめられない、と言うべきか。
2008/10/18
いつの間にか僕は牛になっている。
好かれている僕がなにもしないから
彼女を泣かせてしまったという理由で
クラスの女の子たちが僕を取り囲み
縫い針を手にして僕の体を刺している。
チクチクするような痒みを感じるけれど
それらしい痛みはほとんど感じない。
他人の痛みどころか自分の痛みさえ
もう僕は感じなくなっているのだ。
取り囲む有刺鉄線の柵の杭の一本が
僕が本当に好きな女の子だったから。
どのように開放されたか記憶にないが
おそらく囲いを破って逃げたのだろう。
以上、情けない囲い牛だった僕の話。
2008/10/12
帰ッテオイデ
甘く囁く
潮騒
帰ッテオイデ
悩ましく手招く
白い波
帰ッテオイデ
閉じた瞳の
水平線
2008/10/09
女の子と男の子が向き合って
あやとりをして遊んでいる。
女の子の指に赤い糸
「はい、おばあさんの魔法のホウキ」
赤い糸は女の子から男の子の指へ
「おばあさん、クモの糸に引っかった」
今度は男の子から女の子の指へ
「そんなの、カニのハサミでチョッキンよ」
また女の子から男の子へ
「大変だ。落ちたところは天の川」
ふたたび男の子から女の子へ
「吊り橋かけて渡りましょ」
プツンと音立て、糸が切れ、
複雑に絡まった糸と指。
2008/08/20
清らかな
青い風に抱かれ
透けるような
白い衣をなびかせつつ
はるか彼方の天をめざして
抜きつ 抜かれつ
鳥のように戯れながら
蔦のように絡まりながら
愛され 祝福される者の
歓喜の笑みを満面にたたえ
どこまでも どこまでも
高く さらに高く
信じられない高みまで
天女たちが
昇って
ゆく
2008/08/17
ヒポポタマスと並んで歩いてる。
装甲車みたいに頑丈で大きなからだ。
まったく惚れ惚れしてしまう。
背中を叩いても、私の手が痛むだけだ。
やさしく撫でたって、感じてもくれない。
ヒポポタマスはいたって無口だ。
話しかけても無視されることが多い。
というか、無視されないことが少ない。
いったい私のこと、どう思ってるんだろ?
太くて長い牙をグワッと見せびらかして、
ヒポポタマスはたびたび大あくびをする。
私と一緒に歩いていても退屈なのだ。
きっとハエくらいにしか思われてないんだ。
ヒポポタマスは勝手気ままに生きてる。
公園の芝生に寝転んで日光浴なんかする。
私はベンチに腰掛けてそれを眺める。
サラサラと音を立てて時がこぼれてゆく。
みんな、ヒポポタマスはカバだという。
すぐにでも別れた方が私のためだという。
そのヒポポタマスの寝姿に見惚れてる私。
頬杖ついて、ため息なんかついて・・・・・・
救いようのないくらいバカみたいな私。
えいっ!
ヒポポタマスの横に寝転んでやれ!
2008/08/15
冷たい雨の夜に
君と
もつれ合って階段を降りる
「脇腹にナイフが刺さっているわ」
ふたり
思わず笑ってしまう
見えないはずの流れ星が
君のサングラスを
斜めに横切る
「願い事、かなったね」
ふたり
なんとなく黙ってしまう
遠く近い雷鳴
あれは
銃声に違いない
冷たい雨の夜に
君と
冷たい雨の夜に
君と
2008/08/02
君が
花火を見たいというから
ふたり
高台に登ったんだ
べつに
花火なんか見たくなかったけど
じつは
たくらみがあったから
君を
花火を見る君を見たくて
君は浴衣姿
裾が風になびくはず
夜空の花火は
君の頬を照らすだろう
無邪気な横顔を七色に染め
白痴みたいに手をたたいて喜ぶ君
宝石みたいに瞳を輝かせ
唇を少し開けたままの君
「きれいだ!」
ほら
こんなに素直に言える
2008/07/30
やわらかな闇の底
小さな光の群
愛らしい瞳
夏草の向こう側
いつも君は無茶をする
僕の気持ちも知らないで
透けて肌が見えるから
川に落ちたかと驚いて・・・・・・
そんなふうに君は
いつも僕をこまらせる
だめだよ だめだよ
だめだったら
濡れた浴衣は着替えなきゃ
白いお砂糖 かけちゃうぞ
蛍 こいこい
この子は甘い
2008/07/28
君の頬に縫い針を刺して
絹を裂く悲鳴をあげさせて
型紙からはみ出たら切り落として
髪と眉は一本残らず毛抜きして
まぶたなんか縫い合わせて
ただし片目は見開かせて目打ちして
耳たぶは折り曲げてアイロンかけて
唇は裁ち鋏で横に切り裂いて
鼻までめくり上げたらピン止めして
舌には洒落た刺繍を施して
ヘラでうなじに赤い筋つけて
肩を切り開いたらパッドを埋めて
両手の指なんか全部指抜きして
背中なんか雑巾みたくミシン掛けして
ヘソと乳首に金ボタンを縫い付けて
ふくらはぎと靴下を一緒にまつって
尻には物差し突っ込んで
そうして
血まみれの君を着てみたい。