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2009/03/18
うぶ毛の生えた地平線
誰かの指が
散歩する
くれぐれも
髪の川に流されたり
せぬように
2009/02/27
涙は
君のために
僕が作ってあげられる
世界で一番小さな
海です
(寺山修司の詩「なみだは にんげんのつくることのできる いちばん小さな 海です ・・・・・・」のアレンジ)
2009/02/11
君の似顔絵を
なみだで描いた
君の瞳は
湖面の月
小さな波紋に
ゆれて壊れる
2008/11/26
触れたら魚になり
つかんだら泡になる
泣いたって
知らんぷり
いじわるな君の性格
「浜辺で遊んでると、波にさらわれるよ」
心配するけど
どうせ君のことだから
誰にも邪魔されることのない海底で
夢を見ながら
眠っているんだろうね
触れたら鳥になり
つかんだら風になる
見つめても
知らんぷり
自分勝手な君の性格
「雲の上に乗って、雪にでもなるつもり?」
忠告したって
どうせ君のことだから
誰にも征服されることのない山頂に
ひとり優雅に
舞い降りるんだろうね
2008/11/24
僕は君が好きだけど
君のすべてが好きなわけじゃなく
好きなのは君だけじゃない。
君を盗み見ながら
僕が描くかもしれない似顔絵は
きっと君に似ていない。
僕は君が欲しいけど
君が望むような僕なら
たぶん君なんか欲しくない。
君が僕でない誰かと愛し合えば
僕は死にたくなるだろうけど
本当に死んだりなんかしない。
2008/11/16
傷口を舐めてあげる
ほら まだ血がにじんでる
あんた 野鼠みたいに怯えてる
あたしのこと なんにも知らない
傷口を塞いであげる
こんなの 使い捨ての唇
傷は浅い 舌の先が底まで届く
あんたのこと なんにも知らない
傷口を開いてみようか
なんだか苛めてみたくなる
この痛み ずっと忘れないでね
あたしたちのこと 誰も知らない
2008/11/12
大きなクマのぬいぐるみ。
いつもあたし、これ抱いて寝るの。
しっかり抱いていないと眠れない。
理由はわかんない。とにかくそうなの。
これ、パパが誕生日に買ってくれた。
だけど、あんまりパパには会えない。
なんというか、いろいろあってね。
あたし、さびしかったり悲しい夜に
ぬいぐるみをしっかり抱いてみるの。
すると、ぬいぐるみもあたしを抱いてくれる。
なんだかとっても気持ちよくなって、
本当に泣きたいくらい気持ちよくなるの。
ホントよ。すごく不思議。
でもね、あたしね、わかっちゃった。
これ、ただのぬいぐるみじゃない。
これ、パパなんだもん。
ねっ?
ぬいぐるみの中にいるの、パパでしょ?
2008/11/07
手作りのかごから抜け出して
あの島へ君は飛んでいった
一枚の羽を残したのは
形見のつもりなのか
しなやかで白くて柔らかい
いかにも君の羽だと思う
あきれるほど青い海の向こう
鳥たちの棲む島へ君は帰ってゆく
さわがしい羽音 さえずる声
手の届かない空に鐘の音が消える
鳥たちの島できっと君は
鳥たちの女王様になれる
君のいないかごの中
遠い海から吹く風に
白い羽がゆれている
2008/10/26
恋人が壊れてしまった。
あんなに楽しそうに笑っていたのに。
ほんとに壊れてしまった。動かない。
どうしてなんだ。まだ新品なのに。
あんなことしたからかな。
普通だよな。あんなことくらい。
でも、ちょっと乱暴だったかな。
平気だよな。恋人なんだから。
もともと欠陥品だったのかな。
うん。そうかも。なんか変だったもん。
それにしても、困った。どうしよう。
ええと、そうだ。分解してみようか。
いやいや、駄目だ。危険すぎる。
ひよっとしたら、爆発するかも。
それに、きっと元に戻せなくなる。
恋人の中身なんて、グチャグチャで
複雑に決まってるんだから。
2008/10/25
あたしゃ蜘蛛
つぶらな八個の眼
いやらしい八本の脚
銀の糸で 罠を張り
闇に潜んで 待ち伏せる
あんたは蛾
おびえた二個の複眼
さまよう二本の触覚
銀の鱗粉 撒き散らし
月なき夜に 囚われる