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2009/02/14
化石の町には
化石の民が住み
生きた化石として
地層に埋もれている
化石の公園には
化石の花が咲き
琥珀の虫が
砂の花粉を運んでいる
化石の少女が
太古の夢を見ても
楽しい思い出は
すでに風化している
あなたが化石の町に
もしも迷い込んだら
あなたは石像となり
永遠に立ちつくすだろう
そんな化石のような
化石の町
2009/02/04
ぼくたちは それぞれ
なにかを もとめて
こんな とおいところまで
きてしまった けれど、
おろかな こどもが
にじを おいかけても
いくら おいかけても
どうしたって
おいつけない ように、
やっと たどりついても
あんなに もとめた
とおいところは
ここではなくて、
ここは どこでもなくて、
ここは ただのここ でしかない。
2008/11/18
僕がどうしようもない缶詰だった頃
君はピッカピカの缶切りだった
僕の汚れたブリキの蓋を開けたから
銀色の君の刃先が汚れてしまったね
その君の刃先の汚れを取ろうとして
拭った僕の手がまた汚れていたっけ
結局のところ 僕は僕を見失い
あれから救いようのない空缶さ
今頃 君はどうしているだろう
僕の腐った中身を食べてしまって
2008/11/17
牛よ 牛
牧場の牛よ
おまえの脇腹の模様は
あの空の雲そっくりだ
遠く厩舎を離れ
その小さな目で
なにを見るのか
おまえが飲み込んだ草は
おまえの胃と口との間を
なん度も往復するだろう
だから 牛よ
牧場の中の牛よ
あの錆びた有刺鉄線の柵は
おまえの地平線なのだ
反芻の日々
繰り返しの日々
そこから日は昇り
そこへと日は沈む
2008/11/16
あなたがたによくよく言っておく。
どのような窮地に陥ったとしても
あなたがたは神をあてにしてはならない。
なぜなら、あなたがたを救えるのは
あなたがたでしかないからである。
つねに神はあなたがたとともにあり
あなたがたが生きているということが
そのなによりのあかしである。
そのようなあなたがたによって
あなたがたが救えないとすれば
ともにある神によってもまた
あなたがたは救えないのである。
2008/11/11
生きるために
食べるとしても
食べるために
生きたくはない。
君のために
生きるとしても
君のために
死にたくはない。
2008/10/26
ねえさんは 街で春を売ります。
にいさんは 海で夏と遊びます。
いもうとは 野で秋をひろいます。
おとうとは 山で冬に抱かれます。
なにが楽しいというのでしょう。
なにが悲しいというのでしょう。
いつも季節は めぐるばかりです。
2008/10/21
たとえば
鍵があって
扉がある。
または
弓矢があって
的がある。
でも
合わなかったり
はずれたり。
2008/10/13
僕たちは そういうふうにできている
君ときたら あんなだし
僕にしても こんなだし
僕たちは そうなるようになっている
2008/10/13
僕は彼女が好きだったけど
彼女が僕に好意があるとは思えなかった。
彼女に告白する勇気のなかった僕は
僕が彼女を好きだという噂を流したんだ。
火のないところに煙は立たないというけど
煙が立ってから火がつくことだってある。
僕が彼女を好きだという噂を聞いて
彼女が僕を好きになるかもしれないのだ。
ところが、その噂がみんなにひろがった頃、
僕は彼女なんか好きでなくなっていた。
せっかく芽が出てきたというのに
その草に僕は水をやらなかったわけだ。
しっかり根も葉もある噂だったけど
花も実もつけることなく枯れてしまった。