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2011/10/23
ある夜
星が落ちてくるの
幼い頃に見た
雪のように
いくつも
いくつも
いくつも
大人になった日の
涙のように
地面に落ちたら
穴があくの
家に落ちたら
家が燃えるの
山に落ちたら
山が消えるの
はしゃいでいるのは
子どもたち
無邪気な瞳が
キラキラ 光る
たくさんの願い
かなえてね
2011/09/08
戦いは終わった
勝者はいない
戦いは終わった
敗者ばかり
戦いは終わった
それを悲しむ者はいない
戦いは終わった
それを喜ぶ者もいない
戦いは終わった
安堵の声さえ聞こえない
戦いは終わった
ただ吹く風ばかり
2011/04/15
宝物のように
大切にしていても
壊れてしまったら
もう使えない
たとえ見た目は
修復できても
心の棚には
もう飾れない
2011/03/25
箱の中の姫君は
お外のことがわからない
なにを見ても
箱の中
なにを聞いても
箱の中
箱の中とは
つゆ知らず
お外があるとも
知らないで
歌ってみたり
遊んでみたり
2011/03/19
きれいは 汚くて
汚いは きれい
やさしさは きびしくて
きびしさは やさしい
美しいのに 醜くて
醜くても 美しい
そういうふうに
見えるから 見えなくて
見えないから 見えてくる
2009/03/19
ようこそ。
いらっしゃい。
ここなら
なんでもできる。
あなたの望むまま。
望まないまま。
欲しければ
なんでもある。
いらなければ
なんにもない。
なにもかも
あなた次第。
なにをしたって
かまわない。
どんなことだって
許される。
許せないなら
それもよし。
さあ、どうぞ。
いらっしゃい。
もちろん
あなたの勝手だから
来なくたって
いいんだけどさ。
2009/03/16
もしも蚊が幽霊なら
気になって気になって
眠れない。
潰しても潰しても潰しても
遠く近く聞える
あの羽音。
疲れ果て
灯りをつける。
どこにも蚊はいない。
背筋に寒気が走る。
なにしろ
季節は冬なのだ。
もしも星が幽霊なら
ほとんど誰も
気にしない。
さまよえる幽霊星。
青白き火の玉
見たように
天文学者が悲鳴をあげる。
それから
宇宙飛行士もあわてそう。
もしも宇宙が幽霊なら
きっと誰も
気づかない。
だって
みんな幽霊なのだから。
2009/03/09
十二方位の十三番目
羅針盤さえ迷子の見知らぬ町
見知らぬ町の広場には
人影がない
見知らぬ町の時計台には
針もない
見知らぬ町を
見知らぬ商隊が通る
ラクダだけ
商人の姿はない
ラクダの背には荷物もない
そんな見知らぬ町で
見知らぬ人を見たら
それは見知らぬ町の
見知らぬ人
2009/03/05
わたし、いつまでも踊るつもり。
いつまでもって、いつまでなんだろ。
なにが悲しくて、こんな救われないこと
こんなむなしいこと、続けるんだろ。
ああ、また思い出してしまう。
忘れたい。忘れられない。
どうしても消え去ってくれない記憶。
だから、だから踊るしかない。
そんなの追いつけないくらい速く。
そんなの振り落とすくらい激しく。
苦しい。ここから逃げ出したい。
でも、もう逃げる場所なんかない。
もう駄目になってるのかもしれない。
踊るのをやめてしまったら
きっと本当に駄目になってしまう。
なんにもないんだから。
蝉の抜け殻みたいに空っぽなんだから。
親も兄弟も友だちも呆れてしまって
みんなどこかへ消えてしまった。
もう誰も一緒に踊ってくれない。
こんな暗くさびしいところに
わたしひとりだけ残して。
もう演奏さえ聞こえない。
でも、やめるわけにはいかない。
うまくなくても、みっともなくても
情けなくたって、踊るしかない。
だって、そうなんだから。
ほかにはなんにもないんだから。
もうなんにもわかんないんだから。
いつまでもわたしを踊らせて。
迷惑かもしれないけど
あまり迷惑かけないようにするから
どうか、わたしを踊らせて。
2009/03/02
眠れない夜
ポタポタポタと
しずくが落ちる。
ふと大切なことを
思い出せそうな気がして
言葉に置き換えようと
あせっているうちに
跡形もなく
消えてしまった。
しずくの音だけが
ポタポタポタと
耳に残る。