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2012/09/22
落葉よ 落葉
踏まれて つぶれて
土のよう
誰が踏んだ
みんなが踏んだ
雪が降ったら
冷たかろう
乙女よ 乙女
爪を噛んでは
いけません
舐めてごらん
指がとける
蜂蜜かけたら
甘かろう
乙女は 落葉
枝から離れて
風まかせ
落ちてみたい
落ちたくない
虫に食われりゃ
痛かろう
2012/09/20
皆は僕に喪服を着せた。
そのまま僕は家を出た。
僕は外で待っていた。
日が暮れても待っていた。
誰か見た人、いませんか。
僕の父さん、どこですか。
2012/09/17
長い長い戦いが続いた結果として
ほとんど人の言葉が話せなくなり、
獣の鳴き声しか出せなくなった仲間たち。
銃弾に傷めつけられた穴だらけの家を
敵が中まで侵入してこないように
男たちが寝ずの番をしている。
ただし、もう
敵は一人しか生き残っていない。
マシンガンの弾が底をついたらしく
口真似で発射音を出し続けている。
音のなくなった世界が怖いのかもしれない。
神経質そうな味方の男が
かつて友であったはずの敵を恐れ、
家の外の闇へ向かって吠えている。
おそらくライオンのつもりなのだ。
敵はマシンガンの口真似を続けながら
手作りの骸骨みたいに痩せ、
よたよた歩くように走っている。
一声吠えると
ついに仲間の男が外へ飛び出した。
目を背けながらも、願わずにいられない。
たった一人の敵なんだから
早く逃げてくれたらいいのに。
外に隠れる場所がないなら
この家の中に逃げてくればいいのに。
2012/09/15
あさ ケーキをたべた
なまクリームのうえにひとつ
やわらかそうなかのじょのみみたぶ
ちょっとコリコリして
なかなかおいしかった
ナニヲキキタカッタンダロ
ひる ケーキをたべた
なまクリームのうえにひとつ
なやましげなかのじょのくちびる
ちょっとヌメヌメして
とてもおいしかった
ナニヲツブヤイテイタンダロ
よる ケーキをたべた
なまクリームのうえにひとつ
こまったようなかのじょのめだま
ちょっとプチプチして
すごくおいしかった
ナニヲミツメテイタンダロ
2012/09/15
ここは呪われた古城。
忌まわしき運命の吹きだまり。
床も壁も天井も
すべて血塗られている。
あなたは寝室で吸血鬼に襲われ、
階段から幽霊に突き落とされ、
地下牢でミイラにされる。
殺されないためには殺すこと。
殺すためには生き返らせないこと。
いくら手を洗っても
血糊は消えない。
どんなに耳を塞いでも
悲鳴は続く。
不吉な鳥が屋根に巣を作り、
不吉な数の卵を産む。
庭の草木は、生きたまま枯れている。
崩れた塀の下敷きの黒猫の
救いようのない笑顔だけが残る。
不運なる紳士淑女のみなさん。
呪われた古城にようこそ。
2012/09/13
長くなった髪の毛を切って
ゴミ箱に捨てた。
もう読まない漫画や小説も
ゴミ箱に捨てた。
着古した服はまとめて
ゴミ箱に捨てた。
使用済みの注射器はもちろん
ゴミ箱に捨てた。
使用済みの避妊具も当然ながら
ゴミ箱に捨てた。
死んだペットの犬だって
ゴミ箱に捨てた。
飽きてしまった恋人さえも
ゴミ箱に捨てた。
一緒に撮った写真はビリビリ破って
ゴミ箱に捨てた。
もらったプレゼントも一緒に
ゴミ箱に捨てた。
一度も泣かなかった胎児までも
ゴミ箱に捨てた。
親も兄弟も親類も友人もみんな
ゴミ箱に捨てた。
それから
なにもかも捨てた僕自身も
ゴミ箱に捨てた。
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2012/07/13
荷物なく
ひとりっきりで
いざ逝かん
あるやなしやの
薄明の地へ
そこに痛みなく
苦しみもなく
悩み 消え
迷い 解け
安らかなる地平
ただ広がるばかり
いざ逝かん
恐れることなかりせば
心 静かに
願い かすかに
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2012/06/28
僕は
そっちへなんか
行きたく
ないんだけど
風小僧が手招きしたり
風娘が背中を押したり
あれこれ
翻弄するものだから
仕方なく
突風に
舞い上がったり
つむじ風に
クルクル回ったり
そっちの方へ
そっちの方へと
吹き流され
引き寄せられて
もう
地に足着かないまま
どうにも
こうにも
戻れなくなってしまって
なんとも
かんとも
やるせない気持ちに
なってしまいながらも
なんにもならない
なんにもなれない
なにをしているのかも
よくわかんない
袋小路の
吹き溜まりの
安っぽい
安っぽい
安っぽいポリ袋。
2012/06/18
ゆっくり壊れる
夜もすがら
なんの恨みもあるまいに
ゆるゆるゆると
ゆるゆると
あやしく乱れる
夜もすがら
なんら手柄になるまいに
あやあやあやと
あやあやと
2012/06/16
どうして僕たちは
こんな荒野にいるのだろう。
にぎやかなのに
淋しくて
楽しそうでも
つまんない。
なんでもあるのに
なんにもなくて
なにをしたって
なんにもならない。
明るいはずが
真っ暗闇で
手探りしなきゃ
歩けない。
正しいことが集まって
まちがったことになっている。
良いことが寄り添って
最悪なことになっている。
どうして僕たち
こんなふうになってしまったの?
どうして
どうして
どうして
木霊は返ってくるけど
尋ね返されるだけ。
いくら待っても
求める答えは返ってこない。