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2012/06/01
鎖に繋がれ
目は虚ろ
生き長らふため
櫂を漕ぐ
ガレー船の奴隷さながら
2012/04/14
もの悲しくも
切なくも
腕なくし
脚萎えし
傷痍軍人
白装束の楽団の
アコーディオンの音
かつて
同郷の友と
上野の森にて
不意に
聴かされり
2012/04/11
パンは一個しかなかった。
それを男が食べてしまった。
もう食べ物は残っていない。
女は泣きながら死んだ。
やがて、男も死んでしまった。
パンは一個しかなかった。
それを女が食べてしまった。
もう食べ物は残っていない。
男は怒り狂い、女を殺した。
やがて、男も死んでしまった。
パンは一個しかなかった。
それを男が半分食べた。
残った半分を女が食べた。
もう食べ物は残っていない。
やがて、男も女も死んでしまった。
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2012/04/06
私は、もうダメ。
ペチャンコだ。
完全につぶれてしまった。
針の折れた安物の画鋲みたい。
ああ、みじめ。
立ち直れない。
骨も肉も内臓も、みんなグチャグチャ。
両手なんか、ウチワみたい。
これでは顔も洗えない。
もっとも顔だって
きっと座ブトンみたいだろうけど。
怖くて鏡が見れない。
でも、どうせ目玉もつぶれて見えないか。
ああ、そんな。
踏まないで。
つぶれていても痛むのだから。
ああ、どうして踏むの。
つぶれた声で、聞こえないの?
やめて、煙草は。
熱い灰が落ちるじゃない。
私は敷物じゃないんだから。
今のところは、まだ・・・・・・
2012/03/30
殺人現場は血の海で
漂う膨れた全裸死体
浮いては沈む指紋の波が
血塗りの壁に打ち寄せる
穴だらけの密室
凶器は殺し文句
目撃者は剥製の虎
密告者は義眼の猿
手作りのアリバイ
子ども騙しの偽証
不謹慎な動機
不透明な殺意
容疑者はあなた
被害者もあなた
迷宮に響く
怪しき叫び
2012/03/25
銀色の
ナイフの刃先を
さっと
煌めかせ
切ったばかりの
傷口から
ドク
ドク
ドク
と
溢れ出て
生命線を伝って
運命線に流れ込み
知能線と感情線を
するりと乗り越え
幾本かの
指の先から
ポタ
ポタ
ポタ
と
赤い雫が
垂れ
垂れ
垂れ
垂れ
垂れる途中で
凍ってしまい
いくつもの
いくつもの
キラキラ
光る
真っ赤なルビーに
なりました
ころ
ころ
ころ
きれいだね
うふふ
2011/10/08
私がこうして書いていて
あなたがそうして読んでいる。
どうしてこんなことが
そんなことになるのか
なんだか不思議な気がする。
もし私がこうしなくて
もしあなたがそうしなかったら
そこにはきっと
また別の世界が広がっていたはずなのだ。
そんなふうに
いくつもいくつも
形にならなかった可能性たちの
屍の海。
2011/09/26
糸が見えるというのに
この糸が切れそうなこと
なぜ見えぬ?
夢見ておるのか?
おまえが見ている糸は
本当にこの糸か?
おまえの頭の中に巣くう
蜘蛛の糸ではあるまいな。
なにを待っておる?
虫なら来んぞ。
おまえがみんな
喰ったではないか。
2011/08/27
真夜中に
女が髪を編んでいる
憂鬱と軽蔑と恥じらいと
憂鬱と軽蔑と恥じらいと
憂鬱と軽蔑と恥じらいと
夜の三つ編み
ほどけない
ほどけない
夜の三つ編み
2011/08/17
買ってうれしい
花いちもんめ
まけてくやしい
花いちもんめ
となりの姉さん
ちょっと来ておくれ
靴がないから行かれない
裸足でいいから
ちょっと来ておくれ
服がないから行かれない
布団かぶって
ちょっと来ておくれ
布団がないから行かれない
しょうがない
しょうがない
お金やるから出ておいで
あの子が欲しい
あの子じゃわからん
この子が欲しい
この子じゃわからん
まあるくなって
考えよう
考えたってわからない