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2014/11/30
世界は急速に秩序を失いつつあるように思えます。
環境は破壊され、人口は増え、経済は不安定となり
マナーはすたれ、情報は錯乱と混迷を深めています。
犯罪も芸術も娯楽も学問も宗教も政治も
それが適切であろうがなかろうが関係なく
なんでもありの様相を呈しております。
まるでセミが鳴く真夏の森林公園のようですね。
さらに彼は彼女となり、石油は衣類や薬や電気になり
地震が津波と液状化現象から原発反対してありおりはべります。
スイカもトマトも飲み過ぎて自爆しましょう。
遺伝子は知恵のない駐輪場だそうだでな。
携帯端末が歩き出せば、集積回路に蛆が湧き
LED液晶画面からはリンパ液がしたたり落つるのや。
祈ろうにも、神が多すぎて多数決もままならね。
拡大する宇宙は相対的でほうか?
それとも相補的なのれありませうか?
女がよろめくキノコれす
誰がんなことへ主張するのら?
ふけてしやまん 不完全燃焼定理の そこもとに
円筒ろぴーの増殖 しゃくなげ 数珠つなぎ
ほげそけた むかたびぴやも そのもこつ
どっと ぶくつく
2014/11/08
議事堂で会議が始まろうとしている。
ここで決議すべき議題は
ここで決議できないほどにある。
非常識な質問が大理石の壁を削る。
「多数決制度が多数決によって否定されたら
その決定に従うのでありますか?」
無責任な意見が床の絨毯の上に渦巻く。
「個人的な利害関係のある者が
公的な決定に関与してはなりません」
不愉快な批判が天井のシャンデリアを揺する。
「反対でなければ賛成とは
賛成でなければ反対なので、異議あり!」
この議事堂には出口がない。
と言うか
もともと入り口すらなかったはず・・・・
2014/03/10
家の中に
雨が降っている
部屋の窓から見える空は
あんなに青いのに
しかも今日は
せっかくの休日なのに
どうしてふざけてるみたいに
傘を差さなくちゃならないのか
そこのところが
私にはよくわからない
これじゃ昼寝もできやしない
畳も布団も
びしょ濡れだ
私の心の中は
こんなに乾いているのに
2013/08/14
溝員電車を降りてから満員バスに乗った。
途中、改札口やバス停があったはずだが
なぜか記憶に残っていない。
どちらの乗り物でも薄着の美女たちに挟まれて
得した気分になった事だけは憶えている。
気がつくとバスは満員でなくなっていた。
「次は『七曲がり入口』です」
その車内アナウンスがあった時はすでに
バスの乗客は私ひとりだけになっていた。
こんなはずはない、と思った。
こんな時間に、こんなに空くはずがない。
違う路線バスに乗ってしまったのではないか。
空席しかないのに立っていたのだが
揺れる床を歩いて、運転手の横へ移動した。
「あの、すみません」
「はい、なんですか?」
「このバスはどこ行きですか?」
「『辻』行きです」
やはり違う路線であった。
大変な失敗だ。降りなければならない。
「次のバス停までどのくらいですか?」
「早ければ日が暮れる前に着くかな」
とんでもない話だ。
「途中ですけど降ろしてもらえませんか?」
運転手の眉間にしわが寄った。
「降ろせるけど、戻りのバス停もないよ」
なるほど、それも困る。
次の『七曲がり入口』で降車して
戻りのバス停でバスを待つしかないらしい。
揺れる床に呆然と立ちつくす。
すると、不意にバスは停車してドアが開き、
録音再生の車内アナウンスが流れた。
「『辻』です。終点です」
開いた口を閉めようがなかった。
(終点だって?
『七曲がり入口』は?)
まるでわけがわからない。
もう運転手の姿は消えていた。
乗客よりも先に降りてしまったらしい。
昇降口から暗い地面に降り立つ。
もうすっかり日は暮れていた。
早く戻らなければ大変なことになる。
あの運転手ではない運転手を見つけた。
制服と帽子があの運転手と同じなのだ。
「戻りのバスは、いつ出ますか?」
「今日はもうないよ。おしまいだよ」
ほとんど街灯がないという理由だけでなく
目の前が真っ暗になった。
バス停前の暗くさびしい広場の中央で
私はコマのようにクルクルとまわる。
「よう、遅かったな」
それは意外な声、意外な顔だった。
今日、待ち合わせていたうちの一人。
「みんな、待ってだぞ」
同じく待ち合わせていた人たちの顔があった。
信じられなかった。
あのバスの運転手か私かどちらか
狂ってしまったとしか思えなかった。
私は尋ねずにいられなかった。
「ここはいったい、どこなんだ?」
すると、知人たちはみんな妙な顔をした。
親しかった一人が教えてくれた。
「ここは・・・・」
約束していた地名と同じであった。
ただし、その地名はなぜか
聞くとすぐに忘れてしまうのだった。
2013/08/08
寒い夜が明けると、湖はすっかり凍りつき、
その上をどこまでも渡れるようになった。
とても澄んだ水の湖なので
氷になっても底まで透けて見える。
魚は勿論、色々な生き物が標本のように固まっている。
カバやワニ。
ぶざまな姿の河童。
絶滅したはずの恐竜。
UFOらしきものまで見える。
ということは、これは夢かもしれない。
まるでその証拠であるかのように
軽やかに滑る私のスケート靴の刃の跡をなぞりながら
凍った湖面の氷上に
いやらしい亀裂が止めどなく幾本も走る。
(ああ、追いつかれる!)
そういえば、もう季節はすっかり春なのだ。
2013/07/29
らせん階段をのぼっている。
ぐるぐる目がまわって
げろげろ吐き気がしてくる。
それでも、いつしか階段は終わる。
そこにある扉を開く。
塔の最上階、光がまぷしい。
ベランダから眺める村の風景。
山と森と川、風車と牧場と教会。
おどおど見下ろせば
ぐらぐらめまいする。
高さより怖いものが見えてくる。
すぐ真下の地面に死体がある。
異様な形につぶれている。
それは私の死体に違いない。
なぜなら今、思い出したから。
ここから私は落ちたのだ。
閉めたぱかりの扉を開ける。
らせん階段は消えている。
そこは広く長い橋の上。
ぺたぺた欄干に近寄り、
ふらふら川面を見下ろす。
それが川面なら、これは川だ。
こんな大きな川は知らない。
なにかが川下へ流れてゆく。
死体だ。
しかも私の死体。
ぶくぶく膨らんだ腹を
ぷかぷか浮かべてる。
この橋から私は身を投げたのだ。
そうだ、そうだ、そうだった。
あわてて棚干から離れる私。
よろよろ足がよろけて
ころころ転びそうになる。
足もとに誰かが倒れていたから。
これも死体だ。
これも私。
私は馬車にひかれたのだ。
そうそう、あれは死ぬほど痛かった。
いけない、いけない。
こんな場所から逃げなければ。
けれど、すでに橋は
ぐにゃぐにゃ曲がりながら
ぐにょぐにょらせんを描き始める。
2013/07/19
山の上に古びた社があった。
長くて急な石段があるため
訪れる者は減多にいないのだった。
それは、ある朝のこと。
猫が石段を上っていった。
少女も石段を上っていった。
浮浪者も石段を上っていった。
坊主も石段を上っていった。
やがて、その日のタ方。
ヒゲを抜かれた猫が石段を下りてきた。
服を破られた少女も石段を下りてきた。
血まみれの浮浪者も石段を下りてきた。
それで終わり。
もう誰も石段を下りてこないのだった。
2013/07/07
じつに裁縫の上手な女だ。
衣類、寝具、バッグ、ぬいぐるみ・・・・
彼女はどんなものでも縫える。
いつも糸と針を持ち歩いている。
これがなかなか役に立つ。
服のボタンの修理だけではない。
裂けた革靴の修理さえできる。
ストッキングの伝線だって平気。
刺繍の模様でごまかしてしまう。
それくらい裁縫が上手なのだ。
ところで、彼女には悩みがある。
縫い目が気になってしまうのだ。
あらゆるものに縫い目が見える。
いわゆる縫製物だけではない。
人体にも縫い目が見える、と言う。
縫い目がほころびかけていたりする。
それは大変危険な状態なのだそうだ。
彼女は縫い直しを提案する。
だが、相手は彼女を拒絶する。
異常者を見るような目で彼女を見る。
やがて、相手は入院したり死んだする。
縫い目が破れてしまったために。
つい最近、僕は彼女に縫ってもらった。
僕の縫い目が危ない、と言うので。
かなりほころびかけていたらしい。
かかとから頭まで、長い縫い目だった。
しかも、麻酔をしないで。
「この痛みに耐えなければいけないのよ」
そう言いながら彼女は縫ってくれた。
痛くなかった、と言ったら嘘になる。
少し泣いちゃったくらいだ。
それで僕の何がどうなったのか
僕自身にはわからない。
じつは、彼女の悩みや能力なんか
僕は信じていない。
でも、彼女の気が済んだのなら
それでいいのだ。
あいかわらず僕は
彼女が好きなのだから。
2013/07/01
ある公園に絵描きがいる。
似顔絵を描くのが彼の商売。
あんまり絵はうまくない。
でも、なかなか人気がある。
他人が見ると似てないのに
描かれた本人は似てる、と言う。
実物以上に描くのではない。
むしろ、実物以下の場合が多い.
それでも客は感心してくれる。
子どもを大人に描いたり、
その逆に描いたりもする。
猫や犬にしか見えない時もある。
岩ではないかと思う時さえある。
それでも客は喜んでくれる。
鏡に映る顔より似てる、と言う。
本人が言うのだから
間違いなかろう。
とにかく、
そんな絵描きを知っている。
ただし
どこの公園にいるのか
知らないけどね。
2013/06/25
世間から隔絶された空間において
仁義なき賭場が始まろうとしている。
まず、バニーガールが膝をつき、
板の間に座る若い衆に札が配られる。
彼らの背後には兄貴風の男たちが立つ。
ただし、この兄貴風の男たちの顔は
灰色の暖簾に隠されて見えない。
いかにも高そうな背広を着ていながら
その下半身はなぜか裸だ。
また、片手に縫い針の凶器を持っている。
すぐ隣に立つ男の股問に突き刺せる姿勢で
博打をする若い衆を囲んでいる。
いかさま行為や勝負の行方によっては
血が流されるであろう事が推測され、
義兄弟の強い絆を感じさせる。
「よござんすか。よござんすね」
と、壺振り師。
「入ります」
そして、賽は振られた。
「丁」「半」「丁」「丁」「半」「丁」「丁」
はて、最初に配られた札、
あれはいったいなんだったのだろう?