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    2014/01/02

    愉快な話

    「もしもし。あなた」

    呼びかけられて振り向いたら
    宇宙人だった。

    本物の宇宙人ですよ
    と言わんばかりの宇宙人だった。

    「はい。なんでしょう?」
    「近くにトイレ、ありませんか?」

    おれは地球人代表ということになるのだろうか。

    「ええと、公衆便所なら、この先に公園があって・・・・」
    なんとか身振り手振りで説明を試みた。

    「助かりました。ありがとうございます」

    宇宙人は頭らしきものを信号灯のように回転させ、
    喜びらしき感情の表現をしてくれた。

    それから、そのまま空へ昇っていった。


    空を見上げながら、おれは首をかしげる。

    (おいおい、トイレはどうしたんだよ。
     使いたいのは、おまえじゃないのかよ)


    目を凝らすと

    はるか上空に雲霞のごとく
    無数の黒い点々が見えるのだった。

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  • 泥棒がサンタクロース

    2013/12/23

    愉快な話

    うんにゃ。
    おりゃサンタクロースじゃねえ。

    泥棒だ。
    サンタクロースの格好した泥棒。

    ただし、プレゼントはちゃんと用意してある。
    この袋ん中にな。

    つまり
    どういうことかって言うと

    この格好のまんま家宅不法侵入やらかして
    普通に泥棒するわけよ。

    んでもって
    もし途中で家のもんに見つかったら

    「メリークリスマス!」
    さっとプレゼント渡して、さよなら。

    へっ、どんなもんだい。
    なかなか頭よかんべ。

    うん?

    ああ、そりゃまあ
    あいにくなことに

    一年のうち一晩しかやれんけどな。

    まあ、それが
    神様のおぼしめしってもんじゃろ。

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    • Tome館長

      2013/12/23 16:34

      「ゆっくり生きる」はる(haru)さんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2013/12/23 16:33

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 切り札

    2013/10/16

    愉快な話

    「あたしの切り札はこれよ」
    女は服を脱ぎだした。

    やれやれ、またか。
    これだから女ってやつは、まったく。


    「残念ながら」
    おれは首を振る。

    「おれはロボットなんだ。
     人間の色気なんか通じない」

    「あら、奇遇ね」
    彼女は不敵に笑う。

    「じつは、あたしもロボットなの」


    なるほど。

    あらわになった金属部品の
    その悩ましいまでの

    光沢と形状。

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  • 水面をめくる方法

    2013/09/25

    愉快な話

    水面をめくるにはコツがいるんだ。

    まず、いかにもめくるような態度で
    水面に近づいてはいけない。

    察しのいい水面に
    用心されてしまうから。


    「ちょっと手を洗おうかな」

    そんな独り言をつぶやきながら
    しかし静かに水面に近寄る。

    両手を水に半分ほど入れて
    親指は濡らさず空中に残し、

    人差し指は水中に潜らせる。

    そして、波紋が立たぬよう注意しながら
    両手同時に親指と人差し指で水面をはさむ。

    そのまま間髪をいれず

    ただし破れぬよう手首をしならせながら
    優雅に水面をめくってしまう。


    どんな世界が垣間見れるか

    それは
    めくってからのお楽しみ。

    水面十色、
    同じ景色はふたつとない。


    なお、この方法は
    同じ水面に一度しか使えない。

    めくりに失敗してしまったら
    もう仕方ない。

    そこは諦めて
    別の水面に挑戦してみるんだね。
     

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    • Tome館長

      2014/05/24 16:09

      「こえ部」で朗読していただきました!

    • Tome館長

      2013/09/25 17:29

      「しゃべりたいむ・・」かおりさんが朗読してくださいました!

  • なげやり

    2013/09/22

    愉快な話

    ぼんやりしてたら
    投げ槍が頭に刺さっちまった。

    ふん、
    どうでもいいや。


    こんなの引き抜いて
    あっちに向かって投げてやれ。


    あっ!
    いけね。

    頭の方を投げちまった。
     

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  • メイドのくせに女王様

    2013/08/16

    愉快な話

    ご主人様の命令で
     あなたに汚い言葉を使います。


    ひざまずいて
     私の靴をお舐め !

        このブタ野郎 !!
     

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  • 画家とモデル

    2013/07/14

    愉快な話

    画家の前にモデルが立っている。

    いわゆる美女である。
    そして、全裸だ。

    なにやら悩ましげなポーズをとっている

    うらやましい状況だが
    画家は裸婦を描きたいわけではない。

    着衣のモデルでは
    ふたりの関係を妻に疑われるからだ。

    じつは彼女、画家の恋人でもある。
    というか、恋人だからモデルなのだ。

    そういうわけなので
    妻が帰宅すると急いで脱がせたりする。


    さて、それはともかく
    画家というのは不思議な職業である。

    モデルからどんな魅力を引き出せるか。
    それをいかにキャンバスに定着するか。

    そんなどうでもいい問題で悩んでいる。

    これで喰っていけるのだから
    なかなか大したものだ。


    さて、そうこうするうちに
    とうとう絵が完成した。

    モデルに見せる。

    彼女、首をかしげる。
    なかなか魅力的なポーズ。

    「この絵の私、どうして服を着ているの?」
     

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  • 星のヘソ

    2013/07/09

    愉快な話

    君たち、頼むから
    無造作に歩かないでくれ。

    どんな星にも必ずはヘソあり、

    その星のヘソがどこにあるか
    誰にもわからないのだから。


    浅瀬や草むら、
    深海の底、山頂の近く、

    あるいは街路樹の根方とか
    どこにあるかまったくわからない。


    うっかり星のヘソを踏んでしまったら
    さあ大変。

    もうおしまい。
    手遅れだ。

    星は大崩壊。

    原形とどめず割れて崩れ、
    分裂して爆発して消滅する。

    ささいなことで、すべてが失われる。

    冗談じゃない。
    まったく愚かな行為だ。

    だから一歩一歩、慎重に進もう。


    おや? 
    そいつは、まさか星のヘソでは。

    待て、やめろ。
    軽率に動くんじゃない。

    あああああ、危ない!
     

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  • 日 記

    2013/07/02

    愉快な話

    今日の日記を書く。

    ほらね。
    また昨日に戻ってしまった。


    不思議。
    理解できない。

    今日は昨日と同じ。
    昨日は今日と同じ。

    夜が明けても明日にならない。
    そっくりな一日の繰り返し。

    もう限界。
    誰か助けて! 


    昨日の日記を読み返す。

    ほらね。
    また同じこと書いてある。
     

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  • 鏡の中のロンちゃん

    2013/06/11

    愉快な話

    マサト君という変な大人の知り合いがいて

    僕の言う事をちっとも聞いてくれないので
    僕は困っているんだけど

    その事を友だちの、ええと
    友だちなのに名前を忘れちゃって申し訳ない。

    その友だちに相談したら

    「ああ、それならロンちゃんに頼むといいよ」
    と言うんだ。

    「ロンちゃん?」
    「そう、ロンちゃん」

    「何、それ?」

    「ほら、そこに手鏡があるだろ」
    とコウが

    あっ、思い出した。
    コウという名前だった。

    その友だちのコウが言う通りに

    コウの家の座敷の部屋の隅にある
    ゴチャゴチャした棚の上みたいなところに

    小さな丸い手鏡があって

    「しばらく覗いていると出て来るよ」
    じっと手鏡の中を覗いていたら

    僕の後ろから変な顔の男の子が現れて
    僕の肩のところにアゴをのせるみたいにするんだ。

    でも肩にはそんな感触、全然なくて
    振り向いても誰もいなくて

    でも鏡の中にはいるんだ。

    「ああ、ロンちゃんだ」
    そうだ、そうだ。

    昔から知ってる子だった。

    久しぶり。
    鏡の中のロンちゃんが笑ってる。

    そう言えば、ロンちゃんは喋れない子だった。

    僕がマサト君の事を相談しようとしたら
    どこからか、その本人のマサト君がやって来て

    僕の手から手鏡を取り上げて
    ロンちゃんと話し始めた。

    それで僕は、もう大丈夫だ。
    と、すっかり安心してしまって

    白いイカのようなプヨプヨしたのに挟まれた
    ハンバーグみたいな食べ物を

    食べながら待つことにしたんだ。
     

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