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風見鶏

2017/01/09

空しい詩

朝になって陽が昇り 

夕べになれば陽が沈む。

 

そういうふうに決まっているなら 

そりゃ仕方ないよ。

 

でも、はっきり決まってないこと 

少なくないはず。

 

西へ行くか、東へ行くか。

それとも南か、はたまた北か。

 

ぐるぐる ぐるぐる 

巡り巡って逆戻り。

 

つまり、そういうこと。

 

どうなるかわからないうちに 

先のことを決めつけないことさ。

 

明日は明日の風が吹く。

 

吹く前に決めつけてどうする 

てね。

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呪われた故郷

2017/01/08

怖い話

たどり着いたら故郷は廃墟。

土地は荒れ、建物は崩れ、人影はない。

 

懐かしの生家は熔けかけていた。

醜く変容したオブジェさながら。

 

壁は指で押すだけで苦もなくへこむ。

窓はすべて塞がれ、玄関は失われていた。

 

裏口へまわり、歪んだドアから侵入した。

屋内もひどいありさま。

 

天井まで続くねじれた廊下。

カーテンは糸を引き、椅子は腰砕け。

 

前屈みの鏡台、酔いつぶれた浴槽。

押入れには象牙らしきものまで生えている。

 

服と靴が粘土のように重く感じられた。

めまいがした。吐き気まで。

 

懐かしすぎる場所にいるからだろう。

ここから一刻も早く脱出しなければ。

 

裏口まで戻るがドアは閉ざされていた。

いくら力んでもノブはまわらない。

 

ねじれて曲がったのは腕の方だった。

 

「なにをしたって無駄よ。

 もうここから帰しはしないからね」

 

忘れようもない声がした。

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野良犬の尾行

2017/01/07

ひどい話

貧しい探偵、しがない家業。

怪盗なんぞ見たことない。

 

うだるような夏の暑い日に

こっそり野良犬をば尾行する。

 

細長い尻尾が左右に揺れる。

汚らしい肛門が見え隠れする。

 

依頼主は上流階級の貴婦人。

報酬は宝石、輝く猫目石。

 

なにを企んでおるのやら。

もう憂げな午後の暇つぶしかも。

 

野良犬のナワバリを踏んだ。

ふくらはぎに歯形がついた。

 

めまいがして倒れそう。

空腹と疲労と暑さ、虚しさ。

 

あまり多くは望まない。

せめて雌犬だったなら、と思う。

 

陽炎が揺れている。

路面が熔けている。

 

犬革の靴がすうっと糸を引いた。

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灰色の庭

2017/01/06

さびしい詩

色がない。色彩がない。

黒くもなければ白くもない。

 

灰色の空の下に灰色の庭。

灰色の土、灰色の草、灰色の塀。

 

灰色の庭に誰かが立っている。

見覚えのない灰色の笑顔を浮かべてる。

 

灰色の帽子を持ち上げて挨拶すると 

灰色の腕が手首から折れる。

 

折れたところから砂になる。

さらさらさらさら砂になる。

 

肩も胸も次々と砂になる。

砂になっては地面にこぼれる。

 

やがて灰色の笑顔も砂になる。

壊れた砂時計みたいに砂になる。

 

みんなみんな砂になる。

静か過ぎる午後。灰色の庭。

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それで E

2017/01/05

空しい詩

E E 

こうすりゃ E 

 

E E 

ああすりゃ E 

 

健康に E 

美容に E 

 

受験に 就職に E E E 

But 

 

そうすりゃ Eに 決まっているが 

無責任にも 程が R 

 

あっちに Eは 

こっちに Bad 

 

「善は急げ」

「急いては事を仕損じる」

 

意味 反対 

ことわざなんざ そんなもん 

 

故事成語 

「塞翁が馬」って 知ってるか 

 

O O 知ってる Z 

O O 知ってりゃ E 

 

E E それで E 

E E どうでも E

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興味ない

2017/01/04

ひどい話

あっ、ごめん。

それ、興味ないんだ。

 

うん。ちっともない。

これっぽっちも関心ないよ。

 

いや、無理だって。

そもそも好奇心の問題じゃないし。

 

興味ないことに興味あること関連づけたって 

好奇心とか不純になるばかりだよ。

 

ひねくれるだけさ。

偉そうに見せたくて知ったかぶりするみたいにね。

 

第一、それに興味を持てないのには 

ちゃんと理由があるんだよ。

 

わかるかい。

 

本当に興味あることに比べたら、それが 

いかにもつまらなそうに見えるからさ。

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憧憬

2017/01/03

愛しい詩

蝶よ 美しく舞え

 鳥よ 高く飛べ 

 

散るな 花よ

 消えるな 虹よ

 

   儚き夢 届かぬ夢

    見果てぬ夢よ 憧れよ

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月のウインク

2017/01/02

愛しい詩

片目の月が

ウインクしてる

 

 

はち切れんばかり 見開いて

ゆっくり ゆっくり 細めては

 

しっかり つむって

ふたたび 開く

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カマキレナイ

2016/12/30

愉快な話

オカマのカマキリがカマを研いでいました。

 

カマキリがカマを研ぐなんて 

まず滅多にあることではありません。

 

でも、オカマのカマキリはキレやすいので 

ついカマを乱暴に扱ってしまうのです。

 

「オカマのカマキリ、キレジかな」

そんなふうに子どもにからかわれたくらいで 

 

「キーッ! 許さないわよ」

カマをブンブン振りまわしてしまい 

 

「パキン!」

カマの先が石に当たって刃こぼれしたのです。

 

「あら、いやだ」

 

子どもたちは大喜び。

「オカマのカマキリ、カマキレナイ」

 

 

そういうわけなので 

 

今はキレないけど、あとでいっぱいキルつもりで 

こうしてオカマのカマキリがカマを研いでいるのです。

 

「オカマのカマキリ、カマキレナイ。

 ググッとこらえてカマを研ぐ」

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金魚姫

2016/12/29

愉快な話

彼女は美人でもなんでもない。

 

いや。むしろ、その逆。

目が大きいので「出目金」と呼ばれたりする。

 

しかも彼女、よせばいいのに 

派手なヒラヒラの赤い服を好んで着る。

 

なので、なおさら金魚らしく見えてしまう。

 

さらに彼女、茶色のプードルを飼っている。

呆れたことに、名前が「フン」。 

 

そう。彼女に引かれて散歩する姿は 

まさに「金魚のフン」そのものである。

 

本人は洒落た冗談のつもりらしいが 

はた目にゃ、まわりくどい自虐にしか見えない。

 

いわゆる変な女である。

ただし彼女、声はじつに美しい。

 

いっぱしのアナウンサーとして

そこそこ有名なラジオ局に勤めている。

 

太っているせいもあろうけれども 

癒される声として、なかなか評判である。

 

ガラス張りのスタジオの中で 

今日も一日、しなやかに彼女は泳ぐ。

 

「はーい。皆さん、こんばんわー。

 お元気ですか? 金魚鉢の中の金魚姫でーす」

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