岡田千夏

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京都府京都市

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  • 猫トンネル

     お正月に実家へ帰ったら、父からうちの猫たちにお年玉があった。猫トンネルである。長さは1.2メートルくらい、真ん中にも丸い穴がひとつあって、片方の出入り口にはおもちゃがぶら下がっている。曲げて入り口どうし縁の一点をボタンで留めるとU字型になる。猫が飛び込むと、かさかさと音がする素材が入っている。
     帰ってさっそくみゆちゃんふくちゃんに見せると、ふたりとも大喜び。みゆちゃんがトンネル中にすごい勢いで飛び込んで行ったかと思うと、その同じ穴から今度はふくちゃんが飛び出してくる。トンネルの中のみゆちゃんにふくちゃんが上から乗りかかり、みゆちゃんは真ん中の穴から手を出して猫パンチする。すっかりお気に入りになった。
     ひとりでネズミとかビニタイとかおもちゃを持ち込んで遊んでいるときもあるし、姿が見えないと思ったら、トンネルの中で猫座りをして落ち着いているときもある。
     もう少し暖かくなったら、お昼寝のスペースとしても使うようになるかもしれない。
     いいお年玉をもらった。

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  • ダンゴムシを持って

     弟子の家へ遊びに行った。弟子というのは、彼女が中学生だったときに私が彼女の家庭教師をしていたのでそういうふうに呼んでいるけれど、実際のところ、今ではいったいどちらが弟子だかわからない。
     前の日に、何時頃伺えばいいかメールで尋ねたら、お昼ご飯のあと適当に、それでお土産にダンゴムシを持ってきて、という返事があった。
     ダンゴムシというのは冗談かと思うけれど、そうではなくて、弟子は「がまやつ」という名前のヒキガエルを飼っているから、そのエサにするのである。弟子の家の庭では最近あまり捕れないらしいので、ひとつ、がまやつのためにダンゴムシを探してみることにした。
     もっとも、うちの庭もいまの季節はあまりダンゴムシの姿を見ない。寒さのために、土の中にもぐっているのだろう。年末の暖かかった日に草を抜いたときには何匹か見たが、いざ庭に降りて地面を見渡しても、ただしんとしている。
     夏によくダンゴムシが這い回っていた場所や、枯れずに残っているヘビイチゴの根っこのまわりを掘り返して見てみたが、一匹もいない。
     あきらめかけた頃、猫の足が土で汚れないよう庭に敷きつめてある人工芝の隅をめくってみると、その裏に張りついてじっとしている数匹のダンゴムシを見つけた。
     嬉しくなって、つぎつぎ割り箸でつまんで空き瓶に入れた。小さいのもいて、これは大きく育ってからの方がいいかしら、などと思ったけれど、うちでダンゴムシを太らせてもしょうがないので、一緒に瓶に入れた。
     人工芝の裏にはどこにでもいるというわけではなくて、比較的日のよく当たる暖かい場所の下にいるらしかった。寒さが嫌で隠れているのだから、そう考えてみると当然のことかもしれない。
     大小18匹のダンゴムシを捕まえて、弟子の家へ持っていった。
     弟子がさっそくがまやつの飼育箱の中に瓶の中身を開けた。がまやつも半ば冬眠状態で、家代わりの植木鉢の中でじっとしていたが、やがて目の前で動き回るダンゴムシを認めた。
     ぽん、と何かがはじけるような可愛い音がして、一瞬がまやつの舌が見えたと思ったら、もうダンゴムシはいなかった。
    がまやつはつぎつぎにダンゴムシを食べた。ヒキガエルがエサを捕る瞬間を見るのははじめてだった。舌が出るときに、ぽんと可愛い音がするというのが意外だった。
     帰り際、弟子がまたダンゴムシ持って来てね、と言うから、庭にダンゴムシが越冬しやすいような筵でも敷いたほうがいいかしらと、半ば本気で思ってしまった。

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