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きこり

2012/11/01

無邪気な話

森のはずれ、

切り株に腰をかけ、
きこりが休んでいました。


そこへ

木の実を抱えて
リスがやってきました。


「きこりさん、お食事はすみましたか?」
「いいえ、リスさん。まだですが」

「それでは、木の実を食べてくださいな」

いくつか木の実を地面に置くと
そのままリスは走り去りました。


「いやはや。妙なことがあるものだ」

首をかしげながら
きこりは木の実を食べます。


やがて

さっきのリスが
戻ってきました。

「きこりさん、お食事はすみましたか?」

返事はありません。

きこりは消えていました。


帰ってしまったのでしょうか。

不思議そうに
リスは首をかしげます。


きこりが座っていた切り株から
新しい芽が出ていました。

まるで首をかしげたような
その小さな木の芽。
 

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網の坂

2012/11/01

変な話

あとで考えてみると
それはあまり駅舎らしくなかった。


いかにもな階段はあるのだが
「網の坂」とでも呼ぶべきものであって

大きなクモの巣を連想させる銀色の網が
「登れ」とばかりに斜めに張られてあるばかり。

ラッシュアワーにおける通勤と通学の人々が
それにへばりついて登っている。


この網の坂の途中に
狭い門のような場所があるのだが

せいぜい二人しか通れそうもないのに
我も我もと大勢で通り抜けようとしている。

また、不意に左右に裂けていたり
意味もなく複雑に絡まっていたりもしている。

あまり人通りのなさそうな部分には
本当にクモの巣が張られていたりもする。


そんなまさにクモの巣のような坂を
まさにクモのように這う女たちは

スカートの乱れが気になるのか
その裾を片手でしっかり押さえている。


いつもながら不思議に思う。

どうせ毎回のことなんだから
スカートなんか穿いて来なければいいのに。

女のスカートの丈が短くなるほど
すぐ下に続く男の密度が明らかに高まるのも

なんともあさましい姿である。


とにかく、みんな急いでいる。

急がなければいけないような気もする。

だから登り続けることにためらいはない。


苦労して斜め上を見上げる。

靴と脚と尻が蠢いているのは見えるが
電車のホームはまだ見えない。
 

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