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2015/10/08
指を舐めていたら
指先が融けてしまった。
いけない、いけない。
指を舐めてはいけなかったんだ。
歩いていたら
脚が折れてしまった。
いけない、いけない。
歩いてはいけなかったんだ。
考えていたら
頭が痛くなってしまった。
いけない、いけない。
考えてはいけなかったんだ。
ぼおっとしていたら
わけがわからなくなってしまった。
いけない、いけない。
なにがいけなかったんだっけ。
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2015/10/07
いろんなこと考えすぎて
とうとう頭が壊れちゃった。
手の指さえ数えられない。
これでは使いものにならない。
両手を使わなくても
むずかしい計算だってできたのに。
もう考えようともしないだろう。
生と死はどう違うのか、
始まりと終わりはどう違うのか。
なんでも知ろうとして
とうとう頭が腐っちゃった。
親の顔さえ忘れてしまった。
これではなんの役にも立てない。
この世界のすべてを
理解したような気さえしたのに。
もう知ろうともしないだろう。
空虚なるものの内側とか
無限の果ての向こう側とか。
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2015/10/06
ここをこうして こうやって
それから おっと
こんなことまでやらかして
さらには
あれ それはいくらなんでもごむたいな
みたいなことまでやってしまって
いやいや まだまだ
このていどではすむまいぞ
とかいいながら
あんなところを あんなふうにして
あまつさえ あんなものまでもちだして
とんでもない
あきれはてたるしょぎょうのかずかず
なになに まだまだ これからよ
ほれ そのしょうこに
みよ これでもしらをきるか
どうじゃ どうじゃ かんねんせよ
なりませぬ なりませぬ
ごしょうでございます ひどすぎます
いくらがたらこでも あんまりで
もはや にんげんのすることではあるまじろ
やけのやんぱち ばんちゃもでばな
しじゅはっても えいけいびい
さきがしれる たかがしれる
おさともしれる しりわれる
これこれ なにをなさっておられまするか
あなた ごぞんじでござりまするか
なんと するめがいかでした
むくつけきこと せんもなし
これまでか
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2015/10/05
始まらない
まだ始まらない
まだまだ始まらない
いつになっても始まらない
物語が始まらない
物語?
そう 物語
なぜ始まらない?
始めないから 始まらない
なぜ始めない?
それは あなたへ問いたい
私へ?
そう あなたへ
意味 わかんない
この物語は あなたの物語
私の?
そう あなたの物語
知らなかった
だから この物語
うん
あなたが始めなければ 始まらない
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2015/10/04
ひとり雪原を歩いていた。
目印になるものは何もなかった。
山も人家も見えず、一本の木さえない。
陽の位置すらつかめぬ灰色の空。
まったく何もない世界。
色すらない。
「おーい、誰かいないかぁ」
返事はなかった。
木霊すら帰って来ない。
ひとりぼっち。
風すら撫でてくれない。
諦めかけた頃、足跡を見つけた。
鳥や獣ではない。
あきらかに人の足跡だ。
白と灰色とのあいまいな地平線へと続いている。
その先に誰かきっといるはずだ。
その足跡をたどるように歩く。
雪原にどこまでも続く足跡。
前にも、そして後ろにも続く。
どれくらい歩いただろう。
いつから歩いているのだろう。
距離と時間の感覚が麻痺している。
まだ足跡は消えていない。
いや、むしろ濃くなっている。
一人分の足跡だったのが二人分となり、
やがて三人分ほどになっている。
その上を踏むことになるで
前に比べたら随分と歩きやすくなった。
振り返れば四人分ほどの足跡の道ができている。
もうどれが自分の足跡なのか区別できない。
この歩きやすい道からはずれたくない気分。
もう自分は若くないのだ。
まだ誰にも会えない。
ただ足跡が続くばかり。
そして、うすうす気づいている。
もう自分はこの足跡から逃れられないと。
この終わりなき雪原の道が
たとえウロボロスの蛇のごとく
閉ざされた大いなる円環であるとしても。
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2015/10/03
昼寝していたら
電話の呼び出し音に起こされた。
せっかく楽しい夢をみていたのに・・・・
ふらふら立ち上がり、よろよろ居間へたどり着き
いやいや受話器を持ち上げる。
「はい。もしもし」
なにやら挨拶らしき言葉のあとに
どこぞの会社のいかがわしい売込みが始まる。
やれやれ、またか。
限りなく迷惑なだけのセールス電話。
おれは呟いた。
「呪いあれ」
「はっ?」
「呪いあれ。呪いあれ。呪いあれ」
「あの・・・・」
「死の声、遠く深く届くべし」
「・・・・あのですね」
「セールス電話に地獄の呪いあれ!」
おれは心より呪う。
「身勝手なる売込みにより我が眠り妨げし者すべて
子々孫々の末代まで続く未来永劫の呪いあれ!」
おれは静かに受話器を置くと
そのまま寝室へ戻った。
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2015/10/02
通販で着せ替え人形を注文したつもりだったが
届いたのは着せ替えドレスセットだった。
表示が人形の写真だったから、素直に人形と思い込んだら
じつは、その人形が着ていた服だけだったのだ。
そこそこ安いな、とは思っていた。
よく読めば、ちゃんと「ドレスセット」と表示されている。
なんと言うことはない。
つまり、安さに目がくらんだわけだ。
くそっ、再挑戦だ。
同じ失敗は二度としないぞ。
今度は商品説明をしっかり読み、
少々高価な着せ替え人形を注文した。
この際、値段には目をつぶろう。
やはり安いには安いなりの理由があるのだ。
ところが、しばらくして届いたのは
着せ替え人形ならぬ、着せ替え人間だった。
生身の着せ替え女子高校生、
その名も「ハルちゃん」。
どうなっているのだ?
わけわからん。
しっかり通販サイトの説明を読んだつもりだったが
どこをどう間違えたんだろ?
確かに人形にしてはリアルな写真だったけど・・・・
・・・・ふふ。
まっ、いっか。
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2015/10/01
これから選挙へ行くところだ。
まったく政治に興味はない。
しかし、投票せねば殺されかねないので仕方ない。
銃殺派、絞殺派、撲殺派、毒殺派から一人ずつ
全部で四人の男女が立候補している。
くすぐり派とかあれば喜んで投票するものを
これでは悲しんで投票するしかない。
長引く世界的な人口爆発の影響で
死刑制度の廃止案は議題にすらならない。
それにしても、私は撲殺派がきらいなのだが
その他の党派を選ぶしかないというのも情けない話だ。
人には肯定の意志があるだけでなく、否定の意志だってある。
プラス票しか選択できないのは不自然であろう。
理屈からすれば、ゼロ票だってあってしかるべきだ。
いつになってもマイナス票が実現されないおもな原因は
道義的または便宜的な理由ではなく
じつは単なる与党多数派の保身のためではなかろうか。
それに、だいたいだよ、これまで
一票差で当落が決まるなんて、まずあったためしがない。
すでに投票前に結果はムードで決まっているのだ。
そもそも、高額納税者も滞納者も一票というのは不公平。
いっそ、票を買えるようにしたらどうだろう。
いくつでも一票いくらかで買える。
それがそのまま納税になるわけで
税金の使い方を決める人を選ぶようなものだから
筋が通っているのではなかろうか。
というか、投票率の過半数割れがあった昔、
多数決で多数決選挙制度を廃止できなかったのか。
・・・・などと考えているうちに、投票所が見えてきた。
ああ。ますます気が重くなる。
拳銃を所持した役所の職員たちが並んでいる。
どんどん足も重くなる。
死にたくないが帰りたい。
しかし、帰っても不安になるばかり。
ああ。
つくづく、いやな世の中になったものだ。
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