飛 翔
2012/10/06
僕はなんだか
飛べそうな予感がする。
ほとんど走るような調子で歩き出すと
前方へ落ちるように傾いた地面から
徐々に足が離れてゆくのがわかる。
飛行機の翼みたいに両腕を横へ拡げ、
両脚をまっすぐ後方へ伸ばしてみる。
落ちもせず
転びもせず
膝を擦りむくこともなく
そのまま地面すれすれに浮いたまま
空中を滑るように
僕は飛ぶ。
地面の傾斜が緩やかになる地点で
まとまった大きな向かい風に乗り上げ
少しずつ少しずつ
確実に上昇を始める。
前進するスピードに衰える気配はなく
さらに昇ってゆくのが
しごく自然なことであるような気がする。
馬鹿みたいに口を開けたまま
地上から見上げるだけの友人たちに
僕は手を振る。
(やつら、きっと泣くほど羨ましがるぞ)
広がりつつある大地を見下ろしながら
このままなんにも考えず
鳥みたいに
どこまでもどこまでも
飛んでゆこう
と僕は思う。
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