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Tome館長

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  • 爪痕の残る

    2012/09/10

    愛しい詩

    暴風
      豪雨

          嵐の如く
            君過ぎて


                  首に
                背中に
              脇腹に

          深く
            鋭く

                爪痕の残る
     

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    • Tome館長

      2013/07/24 15:27

      「こえ部」で朗読していただきました!

    • Tome館長

      2012/09/10 23:10

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

  • 美しい女

    2012/09/10

    愉快な話

    美女が哀願するのである。

    その美しい瞳を潤ませて。
    その美しい唇を震わせて。

    「わたし、もっと美しくなりたいの」

    美しい声だ。
    聞き惚れてしまう。

    「わかりませんね。あなたはとても・・・・・・」
    「ええ、そうなんです。美しいのです」

    ますますわけがわからない。

    「でも、もっと美しくなりたいのです」

    美しい眉が曇る。
    なかなか悩ましい。

    耳の形も文句ない。
    顎のラインも素晴らしい。

    鼻なんか舐めたいくらいだ。

    スタイルも抜群。
    服のセンスも最高。

    完璧である。
    欠点が見つからない。

    「このままで十分だと思いますよ」

    女はうなだれ、ため息をつく。
    思わず抱きしめてやりたくなる。

    それを我慢して女の肩に手を置く。

    ついに女は泣き出してしまった。
    その美しい涙。

    しかし、そこで気がついた。

    「ひとつ、見つかりましたよ」
    「えっ?」

    「あなたはもっと美しくなれます」
    「私のどこが?」

    「泣き声が、いまひとつですね」

    女の涙が止まった。

    「もっと美しい声で泣けます?」
    「ええ、大丈夫ですよ」

    その笑顔の美しさといったら!
     

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  • パントマイム

    2012/09/09

    変な話

    「お客様のご要望なら、どのような演題でも
    パントマイムで完璧に演じてみせましょう」

    そのように豪語する美しき女芸人が
    あなたの目の前の舞台の上に立っている。


    その小劇場の観客の一人であるあなたは

    彼女にやってもらいたいパントマイムの演題を
    まるで彼女に挑戦するかのように必死で考え続ける。





    虚無

    異次元

    抽象美人

    手乗り幽霊

    蝉の幽体離脱

    ムカデのダンス

    火星人の愛情表現

    円周率を計算する犬

    酒の海で溺れる潜水艦

    光速移動中のカタツムリ

    三角関係の四角と円と直線

    外科医自身による脳摘出手術

    逆子の出産に悶えるハリネズミ

    悲しみの裏側に潜む通販カタログ

    月面でトランポリンをする透明人間

    オアシスを残して消える蜃気楼の砂漠

    心洗われる光に包まれた天使のほほえみ

    スクール水着の立体構造を批判するイルカ

    液体化するピアノから溢れる固体化する音符

    バナナを食べながら宇宙誕生の瞬間を眺める猿
     

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  • アイスクリーム

    2012/09/08

    楽しい詩

    僕の恋人
     アイスクリーム


    家に帰ったら
     カバン放り投げ

       冷凍庫から取り出し

         フタをむしって
          スプーン突き刺す


    ひんやり甘くて
     切ない喉越し

       そのうち額が痛くなる
     

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  • 別の世界

    2012/09/06

    愛しい詩

    こことは別の場所で
    今とは別の時間が流れる。

    僕とは別の僕がいて
    君とは別の君がいる。

    そして

    僕たちとは別のふたりの
    別の関係がある。


    別の世界が良いとは限らない。
    別の世界が悪いとも限らない。

    別の悲しみがあり、
    別の喜びがあるのだろう。

    あるいは
    別になにもないのかもしれない。


    そんな別の世界では
    別の僕が

    別の君を相手に
    なにか別の話をしているのだろうか。

    それとも
    同じような話をしているのだろうか。
     

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  • うたかた

    2012/09/05

    愛しい詩

    うたかたの 淡き恋なら
     言の葉の 針でつついて

       割れてしまえと
     

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  • 断頭台

    2012/09/04

    ひどい話

    執行人に綱を引かれ、俺は進み出た。
    刑場の観衆は待ちくたびれていた。

    眼前には二本の柱が直立している。
    見上げると刃先が斜めに垂れている。

    むんずと首穴に頭を押し込まれ、
    うつ伏せのまま架台に縛られた。

    鼻先には編み籠が置かれてある。

    処刑の準備は整ったわけだ。


    「この者、血も涙もない凶悪犯にして・・・・・・」
    俺に関する美辞麗句が語られる。

    牧師が十字を切り、執行人が紐を引く。

    真下に刃が落ち、俺の首は切り落とされた。
    瞬間、観衆が悲鳴と歓声をあげる。


    切断された首の断面から俺は覗いてみた。

    白髪の頭が編み籠の中に落ちている。
    使い捨てたような老人の頭部。


    俺は新しい頭を首の穴から突き出してみた。

    奇妙な表情の観衆の顔が見えるのだった。
     

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  • ギャンブラー

    2012/09/03

    切ない話

    一般に、男はギャンブル好きである。
    そして、ギャンブル好きの男は女好きである。

    なぜなら、女そのものがギャンブルだから。


    その男は天性のギャンブラーだった。

    ジャンケンでもなんでも負け知らず。
    苦もなく若くして巨万の富を築いた。


    この男、ある女に恋をした。
    しかし、あっさり失恋してしまった。

    「負けた・・・・・・」

    男は自殺してしまった。


    おそらく、その女に命を賭けたのだろう。
     

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  • あいつ

    2012/09/02

    変な話

    あいつは、とんでもない奴だ。

    ずっと昔からいたみたいな顔して
    不意に目の前に現れる。

    あんまりまともな人物とは思えない。


    あいつ、そもそも服装がなってない。

    今回は、まあ普通の格好みたいだが
    下着姿だったり、裸の場合も多い。

    まれに恥ずかしがったりもするが
    ほとんど無頓着な気がする。

    行動だって、どう見ても異常だ。

    とんでもないところで排便したり、
    傘にぶら下がって空を飛んだり。

    勝手に怒って、脈絡もなく
    われわれの首を絞めたりもする。

    マシンガンを乱射したこともあったな。

    まったく迷惑この上ない。


    ああ、ビルの屋上から落ちてしまった。
    本当に勝手な奴なんだ、あいつは。

    でも、あいつは地面に落ちたりしない。
    なぜか地面に着く前に消えてしまうのだ。

    そう、まるで幽霊みたいな奴なんだ。


    「こ、これは、夢だ!」

    あいつ、なんか叫んでいたな。
     

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