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2008/08/02
僕たちは戦場にいた。
敵も味方も関係なかった。
僕たちはみんな傷ついていた。
どこもかしこも傷だらけだった。
なのに医者ひとり、薬ひとつなかった。
とりあえず血を止める必要があった。
とりあえず手探りで止血点を見つけた。
血が止まれば傷口を舐められる。
そう、僕たちは傷口を舐めた。
舐められるところは自分で舐めた。
自分では舐められない傷も多かった。
だから僕たちは互いに傷を舐め合った。
手負いの獣がやるようにやった。
僕たちはいつまでも傷を舐め続けた。
唾液を出し続けるのも大変だった。
このやり方には唾液が必要なのだ。
唾液が乾いて傷の表面に膜を張る。
この薄くて透明な膜が傷口を保護する。
やがて膜の下に黒い血が溜まってくる。
おそらくこれは肉の再生の邪魔になる。
上から舐めると固まった血が溶ける。
傷口のむき出しの肉が見えてくる。
それがたまらなく愛おしい。
舐めてやらずにいられなくなる。
だから何度も何度も舐めてやる。
唾液が裸の傷口をやさしく包む。
未熟児を抱きしめる母親のように。
こんなこと誰も教えてくれなかった。
生きるために大切なことなのに。
どうでもいいことしか教わらなかった。
僕たちはそれに気づきもしなかった。
どうしようもないくらい愚かだった。
だから戦争なんか始めてしまったんだ。
2008/07/24
ある日、頭に花瓶が落ちてきた。
割れたのは、頭か花瓶かわからない。
それからなのだ。
今日の次の日も今日になったのは。
目覚めたら、頭も花瓶も割れてなかった。
そりゃそうだ。
なにしろ今日の朝なんだから。
明日はどこへ行ってしまったのか。
一日中さがしたけれど見つからない。
だから、やっぱり今日もまた
頭に花瓶が落ちてくる。
2008/07/11
砂浜で
おさな子が
砂の城を
こしらえている
どうせ
波にすくわれ
すぐに
崩れてしまうのに
それでも
夢中になって
砂の城を
こしらえている
いつまでも
いつまでも
おもしろそうに
2008/07/10
しずく姫の命は短い。
朝、葉の露がこぼれる。
しずく姫の生まれた瞬間。
陽の祝福をキラリと受ける。
きれいな瞳、愛くるしい笑み。
すぐに地面に落ちて消える。
しずく姫は、もういない。
まばたきする暇もない。
淡き夢の、しずく姫。
2008/07/02
わたし
飾るのきらい。
だって
飾らなければいけないような
悪いこと
わたし
なんにもしてない。
2008/07/01
どこかへ行こうと
あせりながら
おんなじところを
ぐるぐるぐるぐると
回転木馬のように
いつまでもいつまでも
まわっているだけで
繰り返し繰り返し
ぐるぐるぐるぐると
まわり続けるだけなので
おまえときたら
いつになっても
そこにいて
いつになっても
どこへも行かない。