父と母
2013/06/08
父が台所で料理をしている。
フライパンの上で卵焼きを作り
その上に切り揃えたほうれん章を載せ
さらに全体を筒状に丸めようとしている。
なかなかおいしそうだ。
だが、父の料理姿など見た記憶がない。
そもそも父は亡くなったのではなかったか。
いつの間にか、父の姿は消えている。
台所にいるのは母てある。
フライパンの上で牛肉を焼き
その上に切り揃えたねぎを載せている。
それから全体を筒状に丸めるのだろう。
「おいしそうだね」
母に声をかけると、小言が返ってくる。
「私はもう年寄りなんだから
もうすぐ動けなくなるんだから
料理くらい手伝ってくれてもいいのに」
またか、と思う。
親が動けなくなれば世話するしかないが
まだ動けるうちから世話する気になれない。
甘えているのではないか。
そう思うのだが
しかし、とも思う。
子どもが小さいうちは世話するしかないが
子どもが大きくなっても世話するのは
甘やかしではないか。
「手伝おうか・・・・」
だが、もう台所に母の姿はない。
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