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Tome館長

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    Works 3,356
  • ストリッパー

    いかがわしい音がホールに鳴り響き、
    あやしげな光が舞台を照らし出す。

    やがて美女の登場。

    「脱げ! 脱げ! 脱げ!」
    はやしたてる粗野でわがままな観客たち。

    踊りながら一枚一枚
    ゆっくりと衣装を脱いでゆく女。

    そのなまめかしい姿態、
    そのいやらしい表情。


    彼女はストリッパー。
    脱ぐのが彼女の仕事。


    今、最後の一枚になった布を
    客席へ投げ捨てたところ。

    踊り子の濡れた肌。
    けものを連想させる腰の動き。


    「もっと脱げ! もっと脱げ!」
    男どもの興奮はおさまらない。

    諦めたように微笑む女。

    両腕を交差させ、脇腹をつかむ。
    そのまま皮膚を上に持ち上げる。

    不気味な音響、
    むごたらしい場面。

    客席から悲鳴があがる。
    女性客もいるのだ。

    脱ぎたての皮膚を放り投げる。
    髪も眉毛も付いたまま。

    「いいぞ! いいぞ!」
    客席から狂気の歓声。

    血を垂らしながら
    ぬらぬらと踊り続ける踊り子。

    のけぞって両手を腰に当てる。

    そのまま前のめりになって
    両手を足もとまで下ろす。

    「最高!」
    拍手喝采。

    踊り子は表皮をすべて脱いでしまった。

    まさに赤裸。
    もう血まみれの肉塊でしかない。


    「もっと脱げ! もっと脱げ!」
    愚かな観衆の欲望は尽きない。

    踊り子の両手が胸もとへ向かい、
    むき出しの赤い胸部をつかむ。

    やはりむき出しの両腕の筋肉が膨らむ。
    音を立て引き千切られる乳房。

    「ブラボー!」
    鳴り響く口笛。

    とうとう彼女は肋骨まで見せてしまった。

    それでもまだ彼女は踊っている。
    踊り続けている。

    なぜなら、飢えた観客どもが
    彼女の内臓まで見たがっているから。


    見せるのは彼女の生き甲斐。
    そして、彼女の天職。


    もうストリッパーの表情はわからない。

    いつしか彼女は
    顔の筋肉さえも捨て去っていたから。
     

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    • Tome館長

      2014/03/27 09:02

      「広報まいさか」舞坂うさもさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2014/03/07 17:47

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 飼 育

    乳離れしたばかりの幼女を飼う。

    ペットである。
    ただもう可愛がりたいから飼うのだ。

    法律のことなんか知らない。
    気にしない。

    望み通りの美女に育てるだけだ。

    座敷牢の中に押し込み、
    家の外へは出さないつもり。

    世間の事など教えてやるもんか。

    いやいや、待てよ。
    恐ろしいところだと教えてやろう。

    それは彼女にとって嘘ではない。
    私なしでは生きられなくなるから。

    そういうふうに育てる計画なのだから。

    彼女、従順なペットになるだろう。
    主人のためならどんな事でもする。

    たとえ殺されても恨まない。

    ふふふ・・・・


    「これ、ポチや。
     こっちに来て、私の靴をお舐め」


    やれやれ、いいところだったのに。

    ご主人様が、私をお呼びだ。
     

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  • 熊の置物

    残業を終えて、退社するところ。
    他に社員が二人いて、一緒に外に出る。

    私はポケットから玄関の鍵を出し、
    ドアの鍵穴に差し込み、一回転させる。

    まるで手応えがない。
    見ると、錠の金属部分が抜き取られている。

    いったいどういうことなのだろう。
    部下の男性社員は知らないという。

    そうであろう。
    新人なのだから無理もない。

    女性社員は知ったかぶりをする。

    ドアに施錠できない理由をいくら説明しても
    彼女は理解せずに鍵を回し続ける。

    だんだん腹が立ってきたので
    施錠せずに退社することを宣言する。

    どうせ朝一番で出社するのは私であり、
    泥棒が入ったとしても盗む物などないはずだ。

    じつに男らしい決断だ、と自惚れる。
    気づいたら、男性社員の姿が消えていた。

    気の利かない男のくせに
    気を利かしたつもりなのだろう。

    女性社員と二人で夜の街を歩きながら
    なぜかサーカスの話題で盛り上がる。

    サーカスの技にはそれぞれ番号があり、
    その数字が六桁か七桁もあるのだそうだ。

    どんな技があるのか考えていたら
    途中で食事でもするつもりだったのに

    いつの間にかベッドに寝ており、
    今まさに女性社員を抱こうとしている。

    思い出したのだが、彼女は人妻だった。

    いや、すでに離婚していたかもしれない。
    とすれば、私のために離婚したのだ。

    満ち足りた気分に包まれた瞬間、
    彼女の手が伸び、私の股間に触れる。

    その行動は予期していたはずなのに
    思わず女っぼい悲鳴をあげてしまう。

    なんとも恥ずかしくてならない。

    「寒かったから、手が凍っていたんだよ」

    なんとか冗談で誤魔化そうとするが
    冗談にもなんにもなってない気がする。

    「はい。これ、あげるわ」

    そうして彼女が目の前に差し出したのは
    小さな熊の置物であった。

    さっぱり彼女の心がつかめない。

    よく見ると、金属製である。
    木製でない熊の置物の意味がわからない。

    オフィスの玄関ドアから抜き取られた
    あの錠の金属部分を連想してしまうのは

    私の気の迷いなのだろうか。
     

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  • 検 品

    いわゆる女子高生であった。
    つまり、セーラー服を着た少女である。

    (やれやれ、またか)

    さすがに疲れが出る。
    まだ休憩時間には程遠い。

    だが、やらねばならんのだ。
    これが仕事なのだから。


    まず、ざっと全身を目視検査する。

    幼い表情。
    顔立ちは整っている。

    すらりと伸ぴた脚。
    いくらか産毛の多い腕。

    やや胸は小さいが、さほど間題はない。
    すぐに、脱衣作業に入る。

    「うっそー、信じられない」

    信じられなくても裸にしてしまう。
    さすがに抵抗するが、あまり力はない。

    手首と足首をベルトで台に固定する。
    この台は透明で、床は鏡になっている。


    表皮に傷は付いていないようだ。

    (分解するしかないな)
    電動ドライバーのスイッチを入れる。

    「な、なにをするつもり?」

    品物に返事をする気分ではなかった。

    どこかにネジが隠されているはずだ。
    ちょっと見ただけではわからない。

    指先で皮膚を押しながら探り出す。

    「いや、やめて!」

    ちょっと声が大き過ぎるようだ。
    だが、それが返品の理由にはならない。

    やはり内部に故障があるのだろう。


    (・・・・おかしいな)

    ネジが見つからないのだ。
    不思議な事に一本も。

    どこにもネジの感触がなかった。
    こんな事は初めてだった。

    どこか異常な気がした。
    あるいは最新タイプなのだろうか。

    台の上で裸の少女は泣き続けている。
    その瞳が作りものとは思えなかった。

    「キミ、本物の女子高生?」

    不安になって間いかけてみた。

    少女は必死にうなずくのだった。
    数値制御された表情とは思えなかった。

    (あるんだ、こんなことって!)

    仕事で感動するのは久しぶりだった。
    なんと、本物の女子高生なのであった。

    あたりを見まわす。
    監視ロボットの姿はない。


    疲れが消えてゆくのがわかった。
     

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  • 木の股

    愛の形には色々ある。
    異性への愛、同性への愛、自已への愛。

    また、人を愛せない場合もあろう。
    それでも愛は消えない。

    これは樹木しか愛せなかった男の子の話。


    「おまえはの、木の股から産まれたんじゃよ」
    ある日、老婆から男の子は教えられた。

    そうかもしれない、と男の子は思った。
    なぜなら男の子はみなし児だったから。

    森に捨てられていたのを拾われたのだ。


    毎日、男の子はひとり森で遊ぶのだった。

    姿形の良さそうな樹木を見つけると
    なぜか興奮するのだった。

    抱きつかずにいられない。

    樹皮がはがれるほど強く幹を愛撫した。
    指の爪が割れてしまうこともあった。

    そのうち裸になって
    悩ましく腰を幹に擦りつけたりもした。


    「だめよ、坊や。だめよ、だめ」
    その声は、血まみれの樹木から。

    「わたしの股から産まれたくせに」
     

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  • 缶 詰

    迷い込んだ青空市場で買い物をした。

    いったい何を買ったのか?
    夕方、帰宅してから疑問が浮かんだ。

    それをリュックサックの中から取り出す。


    缶詰であることは間違いなかった。
    ただし、印刷された外国の文字は読めない。

    なにやら神秘的な雰囲気を漂わせている。

    台所の缶切りをつかむ。
    思い切って開けてみた。

    すると、ムクムクと女体が出てきた。
    足の先が現れ、最後に手の先が抜けた。

    小さな缶詰にどうやって入っていたのか?
    等身大のリアルな女体。

    明らかな外国人だが、美女と言える。
    しかも裸だ。

    「缶の切り口でケガしませんでしたか?」
    心配して尋ねてみた。

    困ったような表情。
    この国の言葉を理解できないらしい。

    どうやら出血はしていないようである。
    缶から抜け出るのには慣れているのだろう。

    さて、困った。
    この女体をどうしよう?

    どう考えても食べ物とは思えない。
    ごく常識的に抱けばいいのだろうか?

    女好きな友人の顔を思い浮かべる。
    あいつなら何も考えずに抱くだろうな。

    いつの間にか缶の中に幽閉されている
    とかの未知の危険性など無視して。


    空き缶を持ち、指先で女体に示した。
    「この缶の中に戻ってくれないかな」

    やはり困った表情の女体。
    魅カ的とさえ言える。

    ああ、こっちこそ困った。
    こんなの買うんじゃなかった。

    そんな潤んだ瞳で見つめないでくれ。

    まるで女体じゃなくて
    女みたいな気がしてくるじゃないか。
     

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  • 壁に耳

    部屋の四方は壁に囲まれていた。


    一番目の壁に耳を当ててみる。

     「餌はやるな」

     「水は?」
     「同じだ」

     「換気は?」
     「必要ない」

     「明かりは?」
     「いらん」

     「音は?」
     「立てるな」

     「においは?」
     「そのうち勝手に臭くなるさ」

    息苦しくなってきた。


    二番目の壁に耳を当ててみる。

     「もう逃げられないぞ」

     「ヘビが巻きついてるわ」
     「大きなクモが這ってる」

     「だめ。ミミズはきらい」
     「わあ、ゴキブリの大群だ」

     「いや。ヒルがお尻に」
     「背中にムカデが入った」

     「もう我慢できない」
     「やめるんだ。狂ったのか」

     「あら、意外とおいしいわ」

    気分が悪くなってきた。


    三番目の壁に耳を当ててみる。

     「ここに命題がある。
     『あらゆる事物は正当化できる』

      これは次のようにも表現できる。
     『正当化できない事物はない』

      仮に、正当化できない事物があるとする。

      その事物をとりあえず消してみる。
      すると、正当化できない事物がなくなる。

      これでは結論そのままである。
      だから、その事物を消してはいけない。

      つまり、その事物は正当化できる。
      よって、命題は証明された」

    頭が朦朧としてきた。


    最後の壁に耳を当ててみる。

     「足首が溺れてしまうから」
     「助けて。おねがい」

     「ワニの背中で研ぐと包丁が笑う」
     「ひどい、やめて」

     「引き出しの奥まで定規が這ってる」
     「いやよ、いやよ」

     「宝石を埋めた額縁ではない」
     「もうダメ。あたし」

     「空から滝になって天の川が落ちる」
     「ああ、死んじゃう」

    死ねばいいのに、と思った。


    見上げたら、天井の目と視線が合った。
     

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  • 混 浴

    ひなびた温泉である。

    見上げれば凍るような満天の星空。
    冬の夜の露天風呂というやつだ。

    うら若き女がひとり、湯船につかっている。
    おそらく都の高貴な娘であろう。

    その透けるような白い肌。
    細いうなじや丸い肩が湯気に揺れて悩ましい。

    いかにも気持ち良さそうだ。


    そこに突然、一匹の山猿が現れた。
    しかも雄だ。見ればわかる。

    山猿はそのまま湯船に飛び込んだ。

    「あら、今晩は」
    女は気楽に声をかけた。

    雄と言えども山猿だから平気なのだろう。

    山猿も平気で女を見つめている。
    うらやましいやつだ。


    そこに突然、ひとりの異星人が現れた。
    しかも男だ。見ればわかる。

    異星人はそのまま湯船に飛び込んだ。

    「あら、今晩は」
    女は気楽に声をかけた。

    男と言えども異星人だから平気なのだろう。

    異星人も平気で女を見つめている。
    うらやましいやつだ。


    そこで俺も、女の前に姿を現した。
    もちろん男だ。見せればわかる。

    俺はそのまま湯船に飛び込んだ。

    「あれえええええ」
    女はものすごい悲鳴をあげた。

    男と言えども幽霊だから平気なはずなのに。

    俺は必死で逃げる女を見つめている。
    うらめしいやつだ。
     

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  • 踊り場の犬

    巨大な百貨店を遵想させる建物。
    その内部。

    なぜこんな場所にいるのかわからない。

    そもそも商品が陳列されてない。
    エスカレーターもエレベーターもない。

    百貨店を連想した自分自身がわからなかった。

    しかしながら階段はあった。
    とりあえず下りてみよう。

    すぐに踊り場がある。
    女がふたり、舌をからめている。

    ひとりはオッパイがこぼれていた。
    もうひとりはお尻がこぼれていた。

    「あんた、どこ見てるのよ」
    足もとから声がする。

    見知らぬ老婦人が倒れていた。
    こちらを見上げている。

    荷物らしきものが床に散らばっていた。
    「いや、これは失礼しました」

    衝突したのに気づかなかったのだろう。
    あわてて老婦人を起こしてやる。

    手が冷たい。
    まるでマネキン人形だ。

    「中身がこぼれてしまったわ」
    彼女が示す破れた紙箱の中から犬が現れる。

    大きな犬だ。
    尻尾と舌が異様に長い。

    そのまま歩き出す。
    よだれを垂らしながら階段を下りてゆく。

    うーん、どうも犬は苦手だ。
     

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  • 中世の舞踏

    あのね
    魔女でないなら、水に浮いてはいけないの。

    でもね
    水に沈んだら、溺れて死ぬわ。


    ともかく
    そうして魔女にされてしまった、私。


    さらに今度は
    みんなの前で、裸で踊らなきゃいけないの。

    どういうことかと言うと
    魔女は踊り疲れると、尻尾を出すんですって。


    まったく
    いくら暗黒時代だからって、あんまりよ。


    でもね
    私が裸で踊ったら、魔法が使えるかもよ。

    だって
    醜い尻尾を出すの、みんなの方だもん。
     

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    • Tome館長

      2013/12/20 11:54

      「広報まいさか」舞坂うさもさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2013/12/19 12:43

      「こえ部」で朗読していただきました!

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