ストリッパー
2013/05/24
いかがわしい音がホールに鳴り響き、
あやしげな光が舞台を照らし出す。
やがて美女の登場。
「脱げ! 脱げ! 脱げ!」
はやしたてる粗野でわがままな観客たち。
踊りながら一枚一枚
ゆっくりと衣装を脱いでゆく女。
そのなまめかしい姿態、
そのいやらしい表情。
彼女はストリッパー。
脱ぐのが彼女の仕事。
今、最後の一枚になった布を
客席へ投げ捨てたところ。
踊り子の濡れた肌。
けものを連想させる腰の動き。
「もっと脱げ! もっと脱げ!」
男どもの興奮はおさまらない。
諦めたように微笑む女。
両腕を交差させ、脇腹をつかむ。
そのまま皮膚を上に持ち上げる。
不気味な音響、
むごたらしい場面。
客席から悲鳴があがる。
女性客もいるのだ。
脱ぎたての皮膚を放り投げる。
髪も眉毛も付いたまま。
「いいぞ! いいぞ!」
客席から狂気の歓声。
血を垂らしながら
ぬらぬらと踊り続ける踊り子。
のけぞって両手を腰に当てる。
そのまま前のめりになって
両手を足もとまで下ろす。
「最高!」
拍手喝采。
踊り子は表皮をすべて脱いでしまった。
まさに赤裸。
もう血まみれの肉塊でしかない。
「もっと脱げ! もっと脱げ!」
愚かな観衆の欲望は尽きない。
踊り子の両手が胸もとへ向かい、
むき出しの赤い胸部をつかむ。
やはりむき出しの両腕の筋肉が膨らむ。
音を立て引き千切られる乳房。
「ブラボー!」
鳴り響く口笛。
とうとう彼女は肋骨まで見せてしまった。
それでもまだ彼女は踊っている。
踊り続けている。
なぜなら、飢えた観客どもが
彼女の内臓まで見たがっているから。
見せるのは彼女の生き甲斐。
そして、彼女の天職。
もうストリッパーの表情はわからない。
いつしか彼女は
顔の筋肉さえも捨て去っていたから。
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