空丸

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空丸

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  • 第2身体のこと・10

    パイプを通って集められた独身者のガスは、7つの漏斗に導かれて、ここで凝縮されて液体になります。
    そして……「眼科医の証人」と呼ばれる検眼表の図のようなところを垂直上昇して上の「花嫁」のゾーンへ。

    独身者は、自らの観念の中で、「花嫁」の衣装を脱がす。

    新婚の初夜
    花婿は、花嫁の待つ部屋に入る。
    そこは、まっくらです。

    くらやみの中で……
    花婿は花嫁の衣装を一つ一つ脱がせ
    そして 最高の瞬間に至ります。

    これは、必ず、暗闇の中で行われなければならない。
    さながら、みあれする神のように……

    独身者は、永久に「花婿」たりえないので
    strippingを、頭の中で行います。

    独身者の脳内には「欲望のガス」が充満し……
    それは、多くの場合、みじめな結末となります。

    でも、独身者は、めげない。
    「欲望のガス」は
    はきだされてもはきだされても
    なぜか、どこからかわいてきて
    独身者の脳内に、充満する。

    人間の文明は……
    このようにして、つくられてきたのかもしれません。

    「欲望のガス」は
    はたしてどこから、やってくるのか……

    ガラスに封印された乾いた時空の中で
    デュシャンの独身者たちは
    いまもなお、欲望のガスをためてははき、ためてははき……
    うむことなく、それをくりかえしています。

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  • 第2身体のこと・9

    デュシャンの独身者たちは、なぜ制服を着ているのだろう?


    9つの異なる制服とお仕着せの鋳型を包み込む9つのカヴァー
    だそうですが。

    独身者たちの内部は「欲望のガス」で満たされる。

    「制服の鋳型」は、この「欲望のガス」をかたちに保っておく耐圧容器。
    つまり、独身者たちは、いかめしい制服の中がからっぽ。
    ただ、「欲望のガス」が充満している。

    要するに、デュシャンの独身者たちは、第1身体を持っていない。
    というか、単なるガス。
    そのかわり、超強力な鋳型の耐圧容器の第2身体がある。

    なんともみじめで、かわいそうなお話です。

    独身者 bachelorの語源は、月桂樹の実 baccalaureatus(ラテン語)だそうで、フランス語の「バカロレア」もここから来ているとか。
    要するに、学問を修めた人に与えられる栄誉の照合でしたが……
    (バチェラー・オブ・アーツなんていいますよね)

    それはさておき
    独身者たちの体内で充満したガスは、それぞれの独身者の頭についている細いパイプをつたって送られます。

    このパイプのかたち……
    これ、無造作にぴゅぴゅっと描かれているようですが、実は定規でひいている。
    デュシャンが、自分で独自につくった定規です。

    ストッパジュ・エタロン
    停止原基

    デュシャンは、1mの長さのひもを1mの高さから3回落下させてそのかたちを写し取り、3種の定規をつくった。(これそのものも作品になっている)

    独身者の頭のパイプのかたちは、この停止原基の形状で、1種類が3セットで合計9本なのだそうです。(透視画法で描いてます)

    この間、DVDで「ヘルボーイ・ゴールデンアーミー」という映画を見ていたら、やっぱり「ガス男」が出てきました。
    全身を宇宙服みたいなのに包んでいるが、中に入っているのはガス。

    やっぱり、こういうイメージになるんでしょうか……

    デュシャンの独身者たちのガスのゆくえは……

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  • 第2身体のこと・8

    昔、「全身を、顔にしよう!」という運動をやっている人がいた。
    一種の健康運動でした。

    顔は、冬でも露出していて平気。
    全身の皮膚を顔のように強くすれば健康になる……
    ということで、真冬にパンツ一丁で、テレビに出ておられました。

    でも……
    やっぱり顔と、ほかのところの皮膚はちがうと思う。
    からだには、服が必要です。

    人の皮膚は、生得的に第2身体を求めている。
    人は、なぜ服を着るのか……

    たしかに、動物のうちで、服を着るのは人間だけです。

    寒いから。
    羞恥心。
    ファッション。
    いろんな説明は、つく。
    でも、みんな、ものたりない。
    心から納得できる説明は、きいたことがありません。

    「人はなぜ服を着るか」
    このワードで検索すると、一発目に次の答が。
    「人はなぜ服を着るか、それは裸になるためである。これが正しい。」
    うーん。おっしゃるとおりかもしれません。

    NUDE(裸)とNAKED(裸にされた)はちがう。
    これは、たしかにそのとおりだと思います。
    NAKEDに近い意味で、STRIPPEDというのもある。

    The Bride Stripped Bare By Her Bachelors, Even
    (彼女をめぐる独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも)
    マルセル・デュシャンの代表作、通称「大ガラス」の正式名称です。

    デュシャンは一生「性」の問題にこだわり続けた作家。
    この代表作の「意味」は、いまだに解明されず……
    花嫁は、今もなお、瞬間瞬間に、独身者たちによって脱がされつづけている。

    ルネサンス絵画のイコノロジーでよく登場する「聖愛」と「俗愛」。
    裸の女性と服を着た女性が、同じ画面に描かれている。
    はたしてどちらが「聖愛」で、どちらが「俗愛」なのか。

    で、一般の予想を裏切ることの好きな解説者が、たいていこういいます。
    「一般の予想を裏切って、裸の方が聖愛、服を着ている方が俗愛なのです。」
    で、みんなびっくり(したふりを)して、でもなぜか妙に納得したりします。

    「服」という観点からこれを考えてみると(邪道ですが)
    裸の場合、これ以上脱ぐことはできない。「ヌード」です。
    でも、服を着ていれば、脱がせられる♪♪「ネイクド」だ。

    事象は静止しているのではなく、動く心、心のわずかな動きの中に……
    エロティシズムというものは、ある。
    ほとんど萌芽。「萌え」という美しい日本語が、ぴったりです。

    人は、なぜ服を着るのか……

    全身が顔になってしまったら
    とてもつまらない世界に、なります。

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  • 第2身体のこと・7

    私のファッションは、めちゃめちゃ……らしい。
    コーディネイトがなってない……みたいです。

    でも、世の中には、私以上にファッション感覚が狂っている人もいる。

    ある日、電車で……
    私の向かいに、中年男性が座っていた。
    この人の着ているものの色の組み合わせは、かなり変でした。

    ヴィヴィッドのオレンジ色というかヴァーミリオンが主体のシャツに、鮮やかなきみどり色の上着で、目がおかしくなる。
    やだなあ……と思っても、向かいだから、つい目に入ります。

    すると、この男!
    ポケットからたばこを出して、吸いはじめた。
    むろん、全車両禁煙の電車です。

    混んでいる……というほどではないが、この、あまりの非常識。
    要するに……ちょっとアタマのおかしな人だったみたいです。

    ファッションが狂っていると、アタマも変。
    ということになると、私もちょっと変。
    ということになるかも。
    ですが。

    やっぱり、第2身体としてのファッションは
    かなり、その人の心の中を、反映するもののようです。

    その時代にはふつうのファッションでも
    ちがう時代からみれば、大丈夫ですか?
    というのもある。

    たとえば、ルネサンス時代のヨーロッパの男性の下半身。
    第1身体の形状を、くっきりはっきり描出する
    あの、白い、ぴちぴちの
    タイツ……(といって、いいのかな?)

    あれって、かなり恥ずかしいと
    思いますが……

    当時は、イキで、
    カッコよかったんですかね。

    まあ、ダイエットせねば!
    という気分にはなる
    服装。だけど。

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  • 第1身体のこと・12

    第1身体の最大の娯楽は、やっぱり銭湯
    ではないかと。私は、思います。

    家の狭い風呂じゃなくて、広い湯船につかれる。
    これが温泉、露天風呂だと、なんにもいうことはありません。

    お風呂代って、ふしぎなことに、だいたいコーヒー一杯のお値段といつもおんなじなんですよね。
    今、銭湯でもスーパー銭湯でも、だいたい400円前後。
    コーヒー代は、もうちょっと高いかな?でも450円くらい?
    (地域によってちがうかもしれません)

    コーヒーは、口の娯楽だけれど、銭湯は全身娯楽。
    どっちか!といわれれば……やっぱり銭湯を選んじゃいますね。
    コーヒーは、家でも飲めるし。

    昔、街中に住んでいたころ、夕方近くになると、いつも風呂オケもって、近くの銭湯に出かけた。
    途中に「かしわや」さんがあったので、ムネ肉一枚買う。
    (帰りがけだと、閉まっちゃてるんで)

    銭湯につくと、おじさんに頼んで、ムネ肉を飲物クーラーに預かってもらいます。
    ここで……たっぷり一時間半をすごす。

    風呂上りのいい気分で、ムネ肉をうけとって(ときどき忘れる)帰路。
    とちゅうに、けっこう大きな本屋さんがあって、そこでまた立ち読み一時間。
    ときどきは、買います(少女マンガの単行本が多かった。ときどき水木しげる)

    で、家につくと、ムネ肉を焼いて食う。
    買ってきたマンガを読みながら……ときにビールをやりながら……
    食べたら寝ます。

    至福の生活……でした。

    今はもう、その銭湯はありません。
    かなり高齢のおばあちゃんがやっていたかしわやも、とうにない。
    私の図書館だった本屋さんも……ありません。

    街は、どんどん変わっていきます。
    私の、第1身体の思い出をのせて……

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  • 第1身体のこと・11

    幼稚園のころ……
    キリスト教の幼稚園だったので、クリスマスにはイエス生誕の劇がありました。
    年長のこどもたちが、イエスやマリアに扮して、ベツレヘムの一夜を……

    私は、年少だったのでしょう、ただ見ているだけでしたが
    天使の役の子が、舞台に出てきました。
    天使には、羽があります。
    その子も、背中に、みごとな羽をつけていた。
    そのとき……

    「ああ、かわいそう。あの子は、もう一生あの羽をつけたまま……」
    そう、思った。

    こどもだったので、手術で本当に羽を植えつけられた!
    と、思ったのですね。

    でも、そのとき……
    なにか、えもいわれぬ快感が、全身を走った。
    うーん……
    こどものころからヘンタイだった……といわれても、もんくはいえません。

    人体改造は、オソロシイ。

    西洋バロック期には、カストラートという、去勢された男性歌手が……
    たしかにボーイソプラノは、女声にはないものがある……とはいえ
    よくやります。

    ボディピアスとか刺青とか……
    オソロシイ世界です。

    でも、昔の中国では纏足に宦官に……
    ユダヤでは、割礼。
    どこの民族かしらないけれど、首にいくつもの輪っかをはめて伸ばしたり、下唇に巨大な円盤をはめたり……
    よくやるなあ……と。

    第1身体の改造は、オソロシイ。

    ここまでして、第1身体を改造したい……というのは、いったいなんなんだろう?

    ふしぎです。

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  • 第1身体のこと・10

    私の第1身体は、DNAからできています。
    DNAは、チミン、グアニン、アデニン、シトシンの4つの塩基からなっている。
    これは、私の身体だけではなくて、この地球上のいきものはすべてそうです。
    これって……考えてみると、とても不思議なことじゃないでしょうか。

    昔、こどものころに読んだ本。
    「人がブタを食べても、なぜ人はブタにならないのか?」
    というのがありました。

    こどもにこんなことをきくなんて、ずいぶん変わった著者だなあ……と
    こどもごごろに、思った。

    消化・吸収……は、不思議です。

    地上の生命が、みな4つの塩基を基本にしている……ということがなかったら……
    いきものが、他のいきものの身体を食べるということは、なかったかもしれない。

    塩基が共通していなかったら……
    「消化」は、食べたものを、もっとばらばらにしないといけない
    ということには、ならないだろうか?

    生物学に詳しくないのでわかりませんが……
    そんな気がします。

    生命の基本は、秩序です。

    やっぱり昔読んだ本に、生命のはじまりは「粘土」だと、書いてあった。
    これって……土くれから生まれたアダムを思わせますが……
    著者によると、粘土の中には、いのちのはじまりの秩序があるそうです。

    でも……粘土の秩序は、4つの塩基の秩序とは別物です。
    だから……人は、粘土を食べては生きられない。
    鉱物は、消化できません。

    ミネラルなのか……
    でも、基本的には、他の生物の身体を食って、生き、生長する。
    ようするに、DNAをばらして、自分のDNAに組み替える作業と考えていいのかな……


    さて、わがやでは、もうすぐばんごはんです。
    他の生物の身体を……
    いただきまーす!

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  • 第1身体のこと・9

    私が、自分の第1身体を意識したのは、いつからだったろうか……

    いつのまにか、ここに、ありました。

    意識しなくなるのは、いつごろからでしょうか……。

    でも、今でも、一秒一秒、意識しているわけではない。
    というか……意識しているときの方が、少ないのかもしれません。

    寒い!と思うのは、私の身体が寒いのか、それともまわりの空気が寒いのか?
    りんこが赤い。
    これは、やっぱりりんごが赤いのであって、私の目(の一部)が赤い
    ということは、あまり、考えられません。

    視覚と暑い寒いでは、なぜこんな違いがあるんだろう……

    昔、父の友人で、不思議なことをいう人がいた。

    電車に乗っていて、自分の気分が暗く、ふさいでくると、お天気もどんより曇ってきて、景色も暗くなってくる。
    自分の気分が明るく、楽しくなってくると、空も晴れ、景色も明るくなる。
    この方は、結局精神病……ということで、入院されましたが。

    感覚、気分、そしてそれらを意識すること……
    これは、考えてみると不思議です。

    感覚には、必ず、価値観がともなっている。
    純粋にして客観的な感覚……というのは、あんまりないように思います。

    見るもの、聞くもの、そして感じるもの……
    すべてが、快不快の価値観に支配されている。

    人の感覚は、最初から、強力なバイアスがかかった状態で、やってきます。
    いいなあ……とか、やだなあ……とか。
    そして、すぐに反応してしまう。

    絵を見たり、音楽を聞いたりするときも、やっぱりそう。
    「それが、どんなものであるか」を知る前に、好悪、快不快の感覚が、きます。

    これって、幸せなことなのか、不幸せなことなのか……
    「客観的」って、ホントは、どういうことなんでしょう??

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  • 第1身体のこと・8

    人の第1身体は、川面に映る月のよう。

    月影の水は、たえまなく流れ入り、出ていくけれど
    月は、月のかたちをたもっている。

    今、私を構成している物資は、数年後にはほとんど残っていないでしょう。
    でも、私は私
    で、ありつづけます。

    水面の月影の、きわの部分……
    ここは、とても微妙だと思います。

    川面に波がたつと、月影のきれいなかたちはくずれていく。
    波がおさまると、また、きれいな月のかたちが現われる。

    水面の月影は、それを見ている人がいなかったら、果たしてそこにあるのだろうか……
    月影が、月影自身を見ているのか……
    はたまた、天空の月が、水面に映るおのれの影を、見ているのか……

    私は、私自身が「ある」と思っているけれど、それは、私が、私自身を「見ている」からなのか……
    他から分別された「私」というものは、いったいどこに、成立しているのだろうか?

    猫なんかだと、人間ほどには自分というものを、くっきりと見ていないのかもしれない。
    人が猫を見るとき、その境界ははっきりとしている。
    それは、しずかな水面にくっきり影を映す満月のように。

    でも、猫が、自分自身や他の猫をみるとき
    はたしてそのように、はっきりくっきりしているんだろうか……

    小さな虫や、魚や、さらにプランクトンみたいになちゃうと、どうなんでしょう。

    生命には、「免疫機構」があって、他から自身を守ります。

    身体によそものが入ってくると、区別して、白血球を動員してこれを殺します。

    でも……
    これは、白血球という「自己」にとっては、少なくとも自分のためにならない自殺行為だ。
    白血球自身が自分を守る免疫機構……こういうものは、ないのだろうか……

    満月が雲に隠れると、水面の月影も、消えてしまいます。

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  • 第1身体のこと・7

    私の第1身体は、私にとって、闇です。
    自分の背中さえ、見えません。

    顔も……鏡をつかわないとだめ。
    他の人のほうが、よっぽど私の第1身体を、よく見ていると思います。

    内側は……
    これはほんとうにブラックボックスです。
    腹が痛いとか、頭が痛いとか……
    ときどき不気味な信号を送ってくる。

    百億光年先の星の光も、見える。
    でも、自分の中は、見えない。

    私は、私の、どこにいるんだろう?

    統覚……の問題なのかな?とも、思います。

    コンピュータのHALは、自分をディスカバリ号のどこにいると感じていたのか。
    地球全体をおおうインターネットに「意識」というものがあるのなら、その「意識」は、自分がどこにいると感じているのだろう?

    人の感覚は、なぜ「外向き」主体に、成り立っているのでしょう?

    目が、くるんと内側を向いて、自分の中を見る、というふうになってないのは、なぜなのか?
    まあ、まっくらだから、発光装置も必要かもしれません。

    目が、くるんと裏返っている人をみかけたら……
    「ああ、あの方は、今ご自分の中を見ておられるんですよ」
    なんてね。

    一日に何回か、時間をきめて
    みんなが目を裏返して自分の内側を見る。
    そういう内省的な国……
    もうちょっと、みな、お利口に暮らせるのかも?
    オソロシイ気もするけど。

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