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宝塚造形芸術大学

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兵庫県西宮市
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  • gossip

    ブルーのアイシャドウが鮮やかに煌めく

    白髪は透き通り 髪の向こうに

    明日を映し出す   
     
    真っ赤な口紅は 潤いを保てずに 悶え苦しみ

    新たな深紅を生み出そうとしていた

    大きな肩幅を隠すために後ろでそっと腕をつかむ

    目線は 斜め下が好ましく 美しい

    顔から首にかけて 無数の三角形がちらばる 

    おかっぱ頭と白い肌にその三角形はよく栄えることを

    私はよく知っている


    金属に映る歪んだ世界は 現実の世界となんら変わりはない


    そう想って

    帽子のかわりにランプの傘をかぶり

    外に飛び出した



    近所の家の中では 下着姿の女二人が罵倒し合い 

    殴り掛かろうとしていて

    道ばたに捨ててある椅子にはうっすらおばあさんの陰が

    見えた けれども それはモノクロの世界の話


    今はカラフルな世界の話の途中


    段ボール箱にいれられた女は丸裸で

    おなかを空かせていた

    家に連れて帰り

    その女にペパーミント色のワンピースを着せてあげた

    女は嬉しそうだった 朝にはどこかに出かけていき

    もう二度と帰ってはこなかった

    なにも言い残さなかった

    それでもいいと想った

    その想いは 檸檬イエローと少量のガドニウムレッド

    で出来ている

    家をゆっくりと見渡すと

    セルリアンブルーのカーペットには横たわる胎児がいて

    ローズマダーのソファーには真っ赤な口紅で

    「死」「女」と書かれてある

    ガドニウムイエローの電子レンジには弾けとんだ生卵

    シルバーホワイトのテーブルには鳥のいない鳥籠があった



    どれも目を覆いたくなるほど鮮やかなのに

    急に 目の前に白い世界が広がり

    気を失う 

  • 児戯のたわむれ

    言葉を交わさず 目で会話したいと
    グリーンの目を持つお爺さんは

    静かな少し冷たい風が吹いた後 ゆっくり私に言った

    恥ずかしくて目が見れない

    うつむく

    苦いエスプレッソがワンピースに
    こっそり住んでいるのを見て見ぬフリをする

    頭に止めたカラーピンは勝手に歩き出し
    バッテンを作って遊びだした


    持て余す手をポケットに入れかき混ぜる

    どうしよう が

    メレンゲみたいにどんどん膨らんで溢れ出てしまった

    メレンゲは形を変えず堂々と私を見てる

    また目を合わせられない

    口には赤い大きなアメ玉を頬張ってなかなか溶けない

    アメ玉はどんどん大きくなる 苦しい

    体が熱い 溶けそうだ

    居たたまれずに

    目をぎゅっと閉じる

    螺旋階段が現れ 上ると一段一段綺麗な音がした

    固いけど柔らかさと優しさを持ち合わせた階段だった

    心が音に共鳴して 心がわずかに震えた



    ふいに 階段から飛び降りたくなって 飛び降りた




    体はとても軽かった



    死にたいわけじゃないのに なんでだろう


    目を開けるとお爺さんは泣いていた

    そして私の目からも涙がこぼれ落ちた



    涙はアールグレイの匂いがした

    お爺さんのセーターからは焦げた焼きたてのパンの匂いがした

  • 非ファッショナブルを目指して 日々 現実逃走


    蝶の怪しげな光に吸い込まれて森に迷い込む

    音のない世界は炭酸のぬけたコーラの味がする

    錆びてはげた白いベンチもどこか懐かしい

    瞬きをする度にカメラのシャッター音が森中に響きわたる

    あなたがもし目を閉じたなら 舌をかんでやる

    そう思ってふと立ち止まると

    昔感じた苦い思い出の匂いがした

    それは苦いはずなのに

    どこか生暖かく優しげなレッドブラウンに包まれてた



    懐かしがる暇もなく底がぬけ落ちる



    目を開けると口を一文字にした小さな女の子が

    金魚鉢を眺めてる

    中にはプラスチックの金魚が浮いていて

    まるで死んでいるみたいだった

    水は青い絵の具をいれたかのように青々としている

     本物の金魚は心臓の中で泳いでいるの

    と女の子はポツリと言った途端

    女の子の体から水とビー玉と真っ赤な金魚がどっと溢れでた

    ほらね と言い 女の子はどこかにいってしまった

    金魚は苦しそうに口をパクパクしている 

    息が出来ないのならばいっそ止まればいいのに

    私までも息苦しくなった頃 夜がドアをノックする

    開けたくないのに 
    開けなければならない

    ドアを開けると誰かに黒い布をかぶせられ連れて行かれる

    どこかに向かう途中 体を揺らしながら思う

    なにが起きても怖くない

     

    ただ本当に怖いのは自分がだれなのか知ってしまうことだ

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