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2008/07/16
ブルーのアイシャドウが鮮やかに煌めく
白髪は透き通り 髪の向こうに
明日を映し出す
真っ赤な口紅は 潤いを保てずに 悶え苦しみ
新たな深紅を生み出そうとしていた
大きな肩幅を隠すために後ろでそっと腕をつかむ
目線は 斜め下が好ましく 美しい
顔から首にかけて 無数の三角形がちらばる
おかっぱ頭と白い肌にその三角形はよく栄えることを
私はよく知っている
金属に映る歪んだ世界は 現実の世界となんら変わりはない
そう想って
帽子のかわりにランプの傘をかぶり
外に飛び出した
近所の家の中では 下着姿の女二人が罵倒し合い
殴り掛かろうとしていて
道ばたに捨ててある椅子にはうっすらおばあさんの陰が
見えた けれども それはモノクロの世界の話
今はカラフルな世界の話の途中
段ボール箱にいれられた女は丸裸で
おなかを空かせていた
家に連れて帰り
その女にペパーミント色のワンピースを着せてあげた
女は嬉しそうだった 朝にはどこかに出かけていき
もう二度と帰ってはこなかった
なにも言い残さなかった
それでもいいと想った
その想いは 檸檬イエローと少量のガドニウムレッド
で出来ている
家をゆっくりと見渡すと
セルリアンブルーのカーペットには横たわる胎児がいて
ローズマダーのソファーには真っ赤な口紅で
「死」「女」と書かれてある
ガドニウムイエローの電子レンジには弾けとんだ生卵
シルバーホワイトのテーブルには鳥のいない鳥籠があった
どれも目を覆いたくなるほど鮮やかなのに
急に 目の前に白い世界が広がり
気を失う